(3)松山町茗ヶ沢−立川町三ヶ沢地域

地形的には、松山町上北目から山寺にかけては扇状地性堆積物の斜面中に低断層崖が認められる。沖積段丘面内にも緩い傾斜の変換点が見られるが、断層位置を特定するのは非常に困難である。立川町狩川から三ヶ沢にかけては断層崖は不明瞭であるが、沖積段丘面中に緩い傾斜変換点が見られる場所がある。

地質的には、松山町上北目から成興野の範囲では、草薙層は松山町松嶺の東方の背斜軸部で表れているほかは丸山層と北俣層が分布する。両者の区別は非常に困難であり、関係についても今回の調査では明らかにできなかったが、既存調査に基づき断層関係とした。松山町石名坂−山寺地域では澤ほか(1997)等の報告から松山断層を低角の逆断層とし、周辺の地質状況から想定される地質断面を図5−3−4に示した。

松山町山寺の南に位置する露頭SLT269の低位段丘堆積物より48,900±4,200y.B.P.の年代測定結果を得ている。試料採取露頭の柱状図を図5−3−5に示す。

地見興野の採石場露頭(SIKO1)の低位段丘堆積物中からは47,960±2,700y.B.P.と48,520±2,100y.B.P.のAMS年代測定結果を、28,440±1,600y.B.P.のβ線年代測定結果を得ている。

立川町清川−三ヶ沢の範囲では、最上川南部地域に松山断層の延長されるか否かの確認を目的としたが、断層の想定される位置では新たな事実の確認には至らなかった。しかし、立川町市街地の南では段丘礫層を切る断層面が確認された(SLT174)。露頭スケッチおよび写真を図5−3−6に示す。地層の傾斜および地層対比から右横ずれをしていると考えられる。しかし、この地域において想定される断層は東上がりの低角逆断層であるため、確認された断層面は主断層ではなく、派生した局所的なものと考えられる。地質は西側から草薙層・北俣層・楯山層・丸山層と分布し、局所的な乱れはあるものの、南北走向の東傾斜の単斜構造を示す。

写真5−3−1 SLT174に見られる断層面

図5−3−7 SLT174に見られる断層露頭スケッチ

地層は緩やかに北に傾斜しており、この露頭の上部に分布する

砂層・礫層の対比から右横ずれが考えられる。