(1)大石田町横山−村山市白鳥地域

この地域では、最上川左岸側に段丘面の発達が良い。特に村山市白鳥から富並にかけての地域では低位段丘U面の分布・連続が良い。但し、富並付近と白鳥付近の低位段丘U面はいずれも支流によって形成された段丘面と考えられる。大石田町横山から田沢付近および大堤付近には中位段丘U、低位段丘T,Uと沖積段丘が広がっている。大堤付近の低位段丘Tおよび中位段丘Uは緩やかな背斜状の地形となっている。

村山市長島付近で最上川は大きく蛇行する。この地点では蛇行の進行を表す段丘面の分布が見られる。蛇行地点の左岸側では、中位段丘V面、低位段丘T面が孤立丘となって分布し、その周りに支流性を含めた低位段丘U面およびV面が取り巻いている。

この地域では、活断層に由来する可能性が高いリニアメントが複数観察される。大石田町横山付近では2条の並列したリニアメントが観察される。このうち山地と低地の境界には明瞭な急崖が連続し鞍部や尾根の傾斜変換部として南に連続するリニアメント(YL−2)が観察される。このリニアメントは南部の富並地区で低位段丘U面に比高10mの崖地形を連続させておりAランクとした。

横山地区ではYL−2の東側に2kmにわたって沖積段丘を変位させるリニアメントが観察される(YL−1)。このリニアメントは、沖積段丘を変位されることが確認され、段丘との関係から完新世の活動があった可能性は高いこと、また、南側の延長で低位段丘U面に撓曲が見られ累積変位の可能性も考えられることからAランクとした。

横山地区の西側山地には、富並地区西側の山地と低地境界付近に連続するリニアメントが観察される(YL−3)。このリニアメントはほとんどが山地を通過し段丘面など更新世後期の地形との関係が明らかにできないためBランクとした。また、富並地区ではYl−3とYL−2の間に低位段丘U面上の低崖や溝状地形などから認識されるリニアメントが観察されるが、連続性に乏しいことからBランクとした。ただし、このリニアメントはYL−2からの分岐する可能性もある。

大石田町田沢の大堤周辺では2〜3kmの延長をもつ背斜状地形が観察される(YL−4,YL−5)。この背斜を形成するものは、低位段丘T面もしくは中位段丘U面と考えられることから、更新世後期における継続した地形変位であり、断層が地表に到達している可能性は高くはないものの、背斜状の地形そのものをAランクのリニアメントとした。

富並地区と村山市山の内間の山地には、河川の屈曲、直線状の谷・谷壁、鞍部、傾斜変換点からなるリニアメントが観察される(YL−6)。このリニアメントでは横断する段丘面などがないため更新世後期の活動は直接明らかにはできない。しかし、流路延長の大きいものほど河川屈曲の量が大きいことから、間接的に累積変位が予想される(Bランク)。

村山市大林から白鳥、長善寺にかけての地区には山地と低地の境界に低位段丘T,Uに低崖が観察されるリニアメントが連続する(YL−7)。このリニアメントを横断する位置にある低位段丘T,Uに累積変位がよみ取ることが可能である。また、長善寺地区の南で低位段丘V面を変位させている可能性が高いことからAランクとした。このリニアメントは北側のYL−3に連続する可能性がある。

YL−7の東側1〜2kmには、低位段丘V面に低崖が観察できるリニアメントが見られる(YL−8)。このリニアメントの西側には、中位段丘V面や低位段丘T面のつくる孤立丘が分布しており、リニアメント東側にはこれらの段丘が分布しないため、間接的ではあるが更新世後期の累積変位を認識できることから、リニアメントそのものの明瞭さや連続性には乏しいがBランクとした。