(1)和歌山平野に伏在する中央構造線

水野他(1994)は和歌山市北部の海域から河西公園付近を通り,同市大谷付近に至る沖積平野下に,東北東−西南西方向の推定活断層を図示している.図から判読する,長さは約7.5kmである.同推定活断層の西,長さ約5.5kmの区間,北側隆起としている.断層東端,大谷付近から根来断層まで直線距離にして約1.5km区間は,活断層の途切れる区間として図示されている.

地質調査所(1995)は和歌山平野で反射法地震探査を行い,中央構造線断層帯に相当する断層が約60度で北に傾くと報告している.

佃(1997),水野他(1998)は紀ノ川河口東側の河西公園で反射法地震探査と群列ボ−リング調査を行い,およそ1万年前の地層の上下方向の変位量は南落ち1.5m程度で,断層の最新活動時期はおよそ3,000〜5,200y.B.P.と推定した.さらに詳細は明確にできなかったがと断りながら,8,500〜10,000y.B.P.にも断層活動があった可能性を指摘している.

岡田他(1998)は,和歌山平野北部の大谷地区でS波反射法探査とボ−リング調査から平野に伏在する中央構造線断層帯を捉えた.ここでは平野深部では,中央構造線断層帯は更新世中期の菖蒲谷層と和泉層群との境界をなし,浅部では後期更新世の礫層に変位を,さらに上部の完新世の沖積層基底面等に1m変位程度のや変形を与えていると報告している.

この調査結果は,水野他(1998)の河西公園での調査結果とほぼ一致することから,両者は連続するもの判断され「和歌山北断層」と命名している.