調査結果では、石動断層の南半部では比較的古い活動、北半部では比較的新しい活動を示唆する証拠が得られている。これらのことより、比較的新しい活動の証拠を得るためには子撫川付近を含めた子撫川以北での詳細調査が必要と考える。
1)課題
@石動断層の活動性を論ずるためには、松永砂泥互層の形成開始年代(現状では更新世前期)、石動砂泥互層、上田子礫・粘土層、高位砂礫層の形成年代を明らかにし、これらの層の相互関係を明らかにする必要がある。これをを実行するには、花粉を主とした詳細な微化石分析が有効であると考える。実行可能であれば、火山灰分析、古地磁気測定、熱ルミネッセンス法年代測定などを加えるのが望ましい。
A石油公団は基礎物理探査として反射法弾性波探査を実施しているが、小矢部川右岸までの探査であり、小矢部川と平野/丘陵境界の間のデータがないため、この付近の地質構造や主断層位置がわかっていない。今回の調査結果では、平野/丘陵境界より平野側に主断層が存在する可能性があることが分かっているが、トレンチ候補地を絞り込むまでに至っていない。トレンチ位置を確定するためには反射法弾性波探査や電気探査、重力探査などの物理探査が不可欠である。
B小矢部市周辺には桜町遺跡などの埋蔵文化財の包蔵地が多数分布しており、トレンチ位置を決める際の制限事項となりうる。また、宅地造成による地形改変や小矢部市街地に近いこともあり、トレンチ候補地を選定する際の障害となりうる。
2)今後の調査手法
断層の活動度について把握するためには、リニアメント周辺の地形面の試料を採取し、火山灰分析、放射性炭素年代測定、熱ルミネッセンス法年代測定などによって地形面の形成年代を把握する必要がある。
また、石油公団の探査結果では平野/丘陵境界へ向かって地層が浅くなる傾向が認められており、トレンチ候補地を絞り込むためには小矢部川と平野/丘陵境界の間で、約2km程度の測線の反射法弾性波探査が有効であると思われる。なお物理探査測線設定に際しては、その後のトレンチ掘削を考慮して埋蔵文化財包蔵地を避けるなどの対応が必要である。