(3)リニアメント

丘陵T南西部に位置する城山の北西は、丘陵TとUとを境する傾斜変換線の南端に相当する。ここにはT面に相当する小規模な地形面があり、その東縁を画するように三角末端面様崖地形が認められる。傾斜変換線は直線性を有してその北東に位置するT面の東縁に伸びている。この三角末端面様崖地形の約600m南方に断層鞍部様地形が認められる。この2つの地形を変動地形と考えると、両地点を結ぶ延長約1kmの区間がリニアメントとなる。

しかし、前述したようにこのリニアメントの北東延長は丘陵TとUとの接合部に当たり、また、丘陵Tに認められるT面が接合部をまたいで分布し、その分布高度に差は認められない。よって、リニアメントは三角末端面様崖地形より北方に延長することはできない。また、リニアメントの南方延長を検討すると、城山から南方へ伸びる尾根がリニアメントを横断しており、尾根上に変動地形又はこれに類似する地形が認められないことより、リニアメントはこの尾根に達していないと判断される。

富山県(1978)をはじめとする各文献では、海老坂峠を通る国道160号沿いに海老坂断層を推定している。しかし空中写真判読の結果からは、国道160号はほぼ一直線をなして分布する北へ開く谷と南へ開く谷に沿って走っており、国道160号線に沿うリニアメントは認められない。空中写真判読の結果は上記の通りであり、リニアメントは国道160号線の東の丘陵斜面上に、丘陵TとUとの接合部をなす傾斜変換線の南端部の三角末端面様崖地形と、その南方の断層鞍部様地形を結んだ線として認められる。しかし、認められたリニアメントの総延長は約1kmであり、文献とは大きく食い違う。また、リニアメント付近及びその延長部でリニアメントを横断する海成面の分布高度や旧汀線高度は、T面で約90〜100m、U面で約80m、W面で約40mであり、リニアメントを境にして両側の高度分布に差異(変位量の累積)は認められない。三角末端面様崖地形と平坦面の境は丘陵Tと丘陵Uが接する線でもあり、この地形が変動地形であるかどうかは疑問である。よって上記のリニアメントが海老坂断層の存在や活動を示唆する可能性は低いと考えられる。

国道160号に沿うリニアメントは判読できず、文献に出ている海老坂断層が国道160号に沿うものであるとするなら、活断層であるとしても累積性に乏しく活動性の低い断層であると判断する。