もう1箇所(東側)は、低位段丘と沖積地との段丘崖に当たっているが、段丘面上に断層変位によると認められる小地溝が認められることから、段丘崖は、本来低断層崖であったと判断している。ただし、小矢部川によって、断層崖が多少なりとも削りこまれている可能性がある。この2箇所の断層の活動性を評価するため、東側(低崖)ではピット、ボーリングを実施し、西側(低位段丘上)では、ピットまたは道路法面のブロック積み擁壁をはずし、整形・観察を行う。
[場所]東側:低断層崖と小矢部川沖積低地との境界。民家脇の断層崖(畑地)。
西側:低位段丘X面上。道路脇法面。
@東側(低崖)
1)地形測量1箇所(L=200m/箇所、断層推定位置をまたぐように設定)
2)ピット:土蔵の横1箇所。下盤側を2m程度堀り上盤側を一部掘り込む。
3)後追いボーリング(上盤側に30m 1本、下盤側に30m1本)
4)年代測定用試料等採取、測定(試料数未定)
[成果の見通し]
・小矢部川による低崖の侵食が進んでいない場合、低崖直下の断層地表部付近に旧土壌崩壊土砂などのイベント堆積物が残されていて、ピット調査により最新活動時期が決定できる可能性がある。また、崖の高さから見て複数の活動がここで生じたと見られ、幸運であれば、2回以上の活動時期が把握できる。
・小矢部川により低崖の侵食がかなり進んでいる場合、ピットで断層活動時期の履歴を把握することは困難である。
ただし、ボーリングによって断層の落下側の堆積物の深度、年代等が求まれば、平均変位速度の推定が可能となる。
A西側(低位段丘面上)
1)ピット掘削の代用として、道路法面のブロック積み擁壁をはずし観察(表土はぎ)を行う。
(段丘面上が水田となっているため、ピットを掘削する場合は、稲刈り後まで着手できない。また、遺跡指定地になっているため何らかの遺跡が出土した場合には、遺跡調査が終了するまで調査が中断する。したがって、最悪の場合は、今年度中に作業が終了しない可能性もあり、ピットを掘削することはリスクがある。したがってピット調査に替えて道路法面の掘削を計画した。ただし、これには道路管理者の同意が必要である。できない場合にはピット掘削を地点をずらして行う)
2)後追いボーリング(上盤側に10m1本)
3)年代測定用試料採取・測定(試料数未定)
[成果の見通し]
・残されている写真では、断層は4条あり、いずれもほぼ地表に達している。しかし、地表は、平坦で断層変位地形は残されていない。従って、断層活動の時期については、切断されている地層の堆積時期以降であること以上のデータは得られない可能性がある。
・断層(道路のり面)直上は、平坦面(撓曲の西側)が広がっており、人工改変されたか、断層活動の影響を受けていない低位段丘X面を形成している小矢部川の堆積物が残っている可能性がある。
・後者の場合、低位段丘面Xの形成時期が決まり、これより段丘東縁を作った断層の平均変位速度が推定できる。