図3−2−6−1、図3−2−6−2に発震点0,50,100,150,200,250のオリジナルデータ波形例を示す。なお、オリジナル記録は、磁気テープにSEG−Yフォーマットにて収録したものを付録として提出する。前半の発震点(0から120)の記録では、往復時間400msec程度まで顕著な反射波イベントが認められる。一方後半の発震点では反射波イベントは顕著ではなくなるが、周波数の高いイベントを認めることができる。
(2)フィルター処理
図3−2−7に屈折走時より求めた静補正量を示す。最終データムは150mとした。下位に示されているものが、CDP重合前に補正した表層(低速度層)部での伝播時間に相当する量であり、上位に示したものが、最終データムまで補正する際の補正量である。測線下の低速度層は薄かったものと考えられ、補正量は比較的小さい。
図3−2−8−1m、図3−2−8−2には発震点0,50,100,150,200,250の静補正およびバンドパスフィルター処理、ACG処理まで行った結果の記録例を示す。バンドパスフィルターの通過周波数帯域は20〜120Hzとした。またACG処理のオペレータ長は300msecとした。このバンドパスフィルターによって、表面波および通過車両等によるノイズが軽減され、前半の発震点の記録では750msec程度まで反射波イベントが認められるようになった。
図3−2−9−1、図3−2−9−2には、発震点0,200のスパイキングデコンボリューションのテストの結果を示す。デコンボリューションテストにおいてはオペレータ長を10msec,30msec,100msecと変えて、それぞれの結果を比較した。ノイズは0.1%とした。この結果オペレーター長は30msecが最適であると判断された。
図3−2−10−1、図3−2−10−2にはデコンボリューション処理まで行った結果の記録例を示す。デコンボリューションには、スパイキングデコンボリューションを用いた。このデコンボリューションのオペレータ長は、デコンボリューションテストで最適と判断した30ms、ノイズは0.1%とした。このデコンボリューション処理によって、各反射波が孤立したイベントとして認められるようになった。
(3)速度解析・CDPスタック
各種フィルター処理(前処理)を施した結果について速度解析を行った。
図3−2−11に速度解析により求めた速度テーブルを示す。CDPスタックはこの速度テーブルを用いて行った。速度解析によると、測線全般で、往復時間200msec程度まではおおむね1800〜2000m/secの速度を示す。これより下位の往復時間300msec付近では2300m/secを示しており、測線前半の往復時間700msecより深くでは300m/secとなるところもある。
(4)スタック後処理、深度変換
マイグレーションで用いる速度テーブルは、急な速度変化が無いことが望ましい。したがって、速度解析で求まった速度テーブルにスムージング処理したものをマイグレーション処理に用いた。図3−2−12にはマイグレーションに用いた速度テーブルを示す。
深度変換には、同図に示すスムージングした速度テーブルを用いて静補正量も考慮して作成した速度テーブルを用いた。この速度テーブルを図3−2−13に示す。
解析成果として以下の図を示す。
図3−2−14 時間断面(CDPスタック結果)
図3−2−15 マイグレーション後時間断面
図3−2−16 深度断面
図3−2−17 マイグレーション後深度断面
図3−2−18 カラー断面(マイグレーション後深度断面)
マイグレーション後の深度断面について所見は次のとおりである。
大きな特徴として、CDP300付近を境として測線起点側では比較的水平な反射面深い深度まで分布しており、終点側では主に20度くらいの傾斜で始点側へ傾斜している反射面が多数分布している。また、CDP330番から410番にかけて、測線終点側に約55度で傾斜する反射面が見られる。
測点起点側では地表付近から標高−50m(深度150m)まで、多数の水平な反射面が分布している。標高−50mより深いところには顕著な反射面は見られないが、標高−300mのところに、1枚の大変顕著な反射面が見られる。この反射面はCDP200番以降せりあがるように傾斜し、CDP300番付近では標高−250m付近となって途切れる。
CDP450番で標高50mにある反射面はそれより下位約200mにわたって分布する反射面とお互いに平行である。それより上位100mほどは反射面は見られない。CDP350から400番付近の深度150mから地表近くにかけて見られる反射面の傾斜角度は約30度となっており、さらに始点側に分布している反射面(CDP300〜350)はより広角の45度程度の傾斜角を有している。なお、ここで述べる傾斜角は測線方向へ投影した見かけの角度である。CDP250〜400にかけての浅い深度(100m以浅)では、ディフラクションなどによる反射波の乱れが見られる。