3−2−1 断層位置・延長

反射法探査およびボーリング調査によって、断層位置が判明した。反射法探査測線上における重力異常の構造を、モデルの検討をすることによってパターン化し、重力異常との関係で断層の位置・延長を検討する。

 婦中町安田地内で反射法弾性波探査、ボーリング調査で断層が分布することが確認され、呉羽山断層は従来いわれていた呉羽山丘陵東縁崖には存在せず、丘陵東縁崖から約1km平野側へオフセットして存在することが判明した。婦中町安田付近での断層は、各種調査結果および、地質図学よりN42゚E/58゚NW(北東−南西方向、北西傾斜)の逆断層であると推定される。したがって、以後、平野下で確認された活断層を「呉羽山断層」と呼称する。

 断層近傍の重力異常は、断層の東側(下盤側)に、周囲に比べ重力異常の高い尾根が認められ、前述したように圧密の影響があるものと思われる。この尾根状の重力異常は富山市鵯島付近から婦中町長沢付近まで連続して認められ、この重力異常の尾根の呉羽山寄りに沿って断層が分布しているものと考えられる。

 富山市下野新付近で1950年に地質調査所が反射法探査を実施しており、この結果を見ると不明瞭ながら反射面が記載されている(図3−2−1)。西傾斜の50度程度の反射面が見えるものの、当時の報告では背斜構造の西翼にあたる反射面として考えている。この反射面が何を意味しているのかは記録も悪く詳細は不明であるが、地質調査所の解釈通りの背斜構造として考えても、重力探査結果や既存ボーリング調査結果などにより断層がこの付近を通るものと考えられる。仮にこの西傾斜の反射面が今回の反射法探査結果のように断層面を捉えているものだとしても、地表での分布位置はやはり重力異常の尾根の平野側に断層が分布しなければならず、今回の反射法探査と重力探査で見られたパターンがこの部分では一致しない。したがって、下野新と安田の間に見られる重力異常の鞍部で断層はシフトし、下野新付近では重力異常の尾根の平野側を通らざるを得ない。

 この付近の呉羽山丘陵東崖に見られる西富山砂岩層の構造が周囲にくらべねじ曲げられて東側へ向いていることと考えあわせると、変位による歪みがこの周辺にでており、半ドームのような構造を形成しているものと考えられ、下野新付近で断層と褶曲軸の向きがねじ曲げられていることに関係している可能性もある。

 平成7年に日本鉄道建設公団が、富山市牛島付近(富山駅北側)において東西方向に測線長約1kmの反射法探査を実施している〔7北二建役第24号 北陸幹・富山駅付近地質調査4 報告書:平成7年12月〕。この報告書では、反射面に乱れが見られるものの断層は認められない、という結論に達している。この探査は探査深度が100m以浅であること、今回の調査で想定されている断層の位置より若干東へシフトしていることなどから断層を捉え切れていない可能性もある。しかし、この測線の解析結果の西端部は洪積層らしき堆積物の反射面が東傾斜しており、またこの部分の反射がかなり乱れていることから、断層の影響による構造が見えている可能性がある。しかし、測線の端であること、交通量の多い道路を横切っている箇所であること等から、この乱れについてのデータの信頼性については定かではない。

 南方延長は婦中町長沢付近まで追跡できる。婦中町富崎にある丘の夢牧場付近で確認された断層は、推定された呉羽山断層とやや斜交することと、重力異常のパターンも呉羽山断層で推定されるものとは異なり、富山市平岡方面へ延びる重力異常のコンターに沿って断層が延びる可能性があるため、呉羽山断層の南方延長と考えるより、別のセグメントであるとが考えたほうがよいと思われる。

 北方延長については、高重力異常の尾根筋の形状が明瞭な富山市鵯島付近までは断層の存在が推定できるが、日本鉄道建設公団の反射法探査結果では断層の存在は認められておらず、これより北方については明らかではない。

 呉羽山丘陵の北方延長の富山湾内には、呉羽山丘陵東縁崖と同方向の海底尾根地形があることが知られている。この付近の富山湾で行ったスパーカのデータで、沖積層が切れているようにも思われる構造が見られる(図3−2−2)。常願寺川の海底谷に近いところで東傾斜のものが1面、西傾斜のものが2面認められる。東傾斜のものは今回の調査結果とは傾斜の向きが反対であり、呉羽山断層本体の延長とは考えにくいが、この付近で基盤構造にギャップがあるようにも思われる。西傾斜のものは連続性が悪く、深部まで切れているような構造は認められず、詳細は不明である。

 最近になって神通川河口沖10km程度の付近で微小地震が多発している。前述の海底で見つかっている断層との関係は明らかではないが、逆断層として考えると、位置的にはこの海底断層付近と考えてもおかしくはないと思われる。

 呉羽山断層は褶曲(背斜)構造を伴う逆断層であり、呉羽山断層が呉羽山丘陵の形成に関与した断層という性格を考えれば、今回の調査で考えられる断層の延長は、重力異常の尾根形状の明瞭な富山市鵯島から婦中町長沢付近までの約9km程度が妥当だと考えられ、北方延長については別のセグメントを想定した方がいいようにも思われる。