2−3−1 概要

〔調査目的〕

反射法探査は地表で人工的に地震波を発生させ、地下の地層境界で反射して地表に戻ってくる反射波をとらえることにより、地下の地質状況を探査する方法である。地表での探査により、地下の地質構造の視覚的なイメージを得ることができる。

深部反射法探査においては、呉羽山断層の構造形態を解明するために、深度1,000m程度までの地質構造を明らかにすることを目的とした。震源には、比較的深い深度を対象とした探査における、波動の透過能力に優れたバイブレータ震源(バイブロサイス)を用いて探査を行った。

〔調査地域〕

富山県婦負郡婦中町分田〜富山市栃谷

〔測線〕

婦中町分田地内の婦中大橋西岸から呉羽山を横断し、富山市栃谷地内に至る6.6kmの区間(図2−3−1

〔探査深度〕

1,000m

〔調査期間〕

測量作業期間 平成8年8月5日〜8月10日(6日間) 

探査実施期間 平成8年8月11日〜8月20日(10日間)

〔調査実施〕

株式会社 地球科学総合研究所

担当者 井川 猛〔技術士:応用理学部門〕  川中 卓〔技術士:応用理学部門〕

〔深部反射法探査測定作業〕

計画測線に沿って10m間隔で測定点を杭あるいはマーキングにより測設した後、測線東端から受振器を設置し、バイブレータ震源を用いて測線東端から西に向かって測定を開始した。測定は、東側120チャンネル、西側120チャンネルの計240チャンネルの受振器展開を基本とし、発震点の移動につれて受振点も移動させて(ロールアロング)記録を取得した。ただし、測線の両端部では受振器は固定とした。

呉羽山横断部分については、当初は呉羽山を横断する山道上で受・発震を計画したが、この山道下には日本海ガス(株)のガス管が埋設されており、バイブレータだけでなくインパクタについても発震が困難となった。これ以外には呉羽山を横断する適当な道が無いため、この部分の発震は地方道富山・小杉線の呉羽トンネル内で実施した。作業時の安全を考慮し震源としてはインパクタを使用し、測定は23:00〜02:30の夜間に実施した。

測線東側の北陸自動車道沿いの区間は一部民家に近接した部分があるが、発震点を出来るだけ人家から離すとともに(30m以上)、町会長への事前説明及び回覧による周知と個別訪問を実施し周辺住民の理解を得た結果、一切の苦情もなく予定通り全測定を完遂できた。

また、地方道富山・小杉線は測線にかかる部分は全て片側1車線であり、通行量が極めて多いため、道路上での発震は夜間に実施した呉羽トンネル内のみで、他は道路拡幅予定地や富山市ファミリーパーク駐車場内で発震し交通渋滞を回避した。さらに、この区間は通行ノイズが大きいため、受振測線は発震測線から離しノイズの低減を図った。

〔観測作業〕

・測線測量

実施計画図を基に起点を決定し、10m間隔で道路沿いに受振点位置をペイントまたは木杭でマーキングした。

・受振器及びRSUの設置

受振器は受振点毎に9個グループ/chのものを使用した。このような1測定点で多数の受振器を用いるグルーピングはノイズである表面波の低減、空間的エリアシングの防止、設置点のローカリティの平均化等を目的としている。各受振点を中心として測線方向に1.1m間隔で展開し、地面に直接埋設するか、受振器スタンドを用いる方法により設置した。

9個の受振器で得られた信号は、加算により1つのアナログ信号にされて、RSU(リモートステーションユニット)へ入力される。

RSUは受振器で得られたデータをデジタルデータに変換する装置であるが、4受振点毎の受振点位置に設置する(一つのRSUは4受振点のデータを取り込む)。

・ケーブルの設置

観測車に登載された測定制御を行なうCRU(セントラルレコーディングユニット)とRSU間のコマンド及びデータの伝送のため、ケーブルを全RSUにわたり接続した。

・測定作業

測定は標準20m間隔で発震を行い、1発震点に対して240受振点の記録を収録した。RSUは観測された信号を増幅した後フィルターを適用しA/D変換してメモリーに記録し、スウィープ毎に次々と加算する。1発震点の測定が終了するとこれらのデータは本線ケーブルを通してデジタル信号として順次観測車に伝送される。CRUでは震源波形とデータとの相互相関演算を行った後、磁気テープに収録するとともに、モニター記録で常に品質管理を行う。

1発震点の全測定が終了すると、バイブレータは標準20m移動し、使用する受振器もCRUから指令により20m移動させて、以後、前の発震点と同様に240受振点の記録を収録する。これらの操作を各発震点毎に繰り返しながら測定を実施する。なお測定中に使用しなくなった受振器、本線ケーブル、RSUは順次撤収し、これから使用する位置に設置していく。

表2−3−1に探査の仕様、表2−3−2に使用機器一覧、表2−3−3にバイブロサイス反射法性波探査使用機器一覧、表2−3−4に使用した国家三角点を示す。

〔フィールドパラメータテスト〕

以下の5項目についてのテストを実施しデータ取得パラメータを決定した。各フィールドテスト結果を図2−3−2−1(1)(2)、図2−3−2−2(3)(4)、図2−3−2−3(5)に示す。

1)バイブレータ稼働出力レベル

2)バイブレータスウィープ数

3)探鉱機ローカットフィルター

4)バイブレータスウィープ周波数

5)探鉱機ノイズ除去パラメータ(ウィンドウ長)

・出力レベルについては、テスト結果から極力high forceでの発震とした。

・8〜12回の間でのスウィープ数増大の効果は顕著ではないが、このスウィープ数で1秒付近までの反射は充分捉えられている。そこで、ノイズ状況および発震点環境により、8〜12回の範囲内でスウィープ数を適宜選択することとした。

・テストの結果探鉱機のローカットフィルターは12Hzとした。

・スウィープ周波数については、記録上ではほとんど有意な差は認められない。そこで、発震点周囲への振動及び騒音を軽減するため、10−80Hzの周波数を選択した。

・ノイズ環境を考慮し、探鉱機に装備されたノイズ除去機能の有効使用を図った。これは、各スウィープ毎のデータに対し、一定ゲート内の平均値の2乗でデータ振幅のスケーリングを行いながらゲートを移動させていく機能であり、異常振幅を抑制する効果を持っている。ゲート長のテストを行ない、5secとした。