2−2−2 既存重力データ解析

.〔目的〕

 既往重力データの解析は、呉羽山断層付近の地下構造を検討する基礎データを得ることを目的として実施した。

〔実施区域〕

 解析実施区域は、呉羽山断層の周辺115km×96kmの範囲である(図2−2−1既往重力データ解析範囲図を参照)。なお、既往データの解析には地質調査所保有のブーゲー異常データを使用した。

〔解析結果〕

 図2−2−2に、フィルター処理前のブーゲー異常図を示す。このオリジナルブーゲー異常分布には、本調査で対象とする地下構造(密度構造異常)による重力異常であるシグナル成分以外に、調査対象よりも深い地下構造に起因する波長の長いトレンド成分や、逆に地表付近の不均質構造などに起因する波長の短いノイズ成分が含まれているのが一般的である。

 そこで、オリジナルブーゲー異常分布に図2−2−3に示したフィルター特性により、フィルター処理を施し、トレンド成分やノイズ成分を除去するとともに、色々な対象深度までの異常分布を抽出した(図2−2−4)。

 図2−2−5は、フィルター処理の結果主に数km程度より以浅の地下構造異常を反映すると考えられる、短波長成分である。この短波長成分中には、重力異常値が急変する(コンター間隔が密になる)区間がほぼ直線的に幾つか見られる。よく知られている断層構造、例えば糸魚川−静岡構造線や跡津川断層、牛首断層、高清水断層、法林寺断層、石動断層、邑知地溝帯などは、この重力異常の急変区間に非常によく一致している。

 呉羽丘陵周辺では、コンターは北東−南西向きに延びており、これは既存資料による呉羽山断層の走向に一致する。コンター間隔は上述した断層の区間ほど密ではないが、全体として北西から南東に向かって重力異常値が低くなっていくのが分かる。