(1)<雨滝−釜戸断層>

断層露頭16,f17およびTO−2トレンチの調査結果では,見かけの鉛直変位量しか測定することができなかったので,この数値のみについて平均変位速度を検討する(表4−5−1).

表4−5−1 変位の認められた層とその鉛直変位量およびイベントの確実性

O−2トレンチの壁面において,約7,500年前〜3,600年前に発生した断層変位のみの影響を受けているC砂礫混じりシルト層に着目すると,断層を挟んでの見かけの鉛直変位量は40cm程度である.砂礫混じりシルト層の年代は不明であるが,その上位層であるB−3腐植土層の年代は約7,500年前という値が得られていることから,これらの数字から平均変位速度を求めると,0.05m/1,000年以下となる.しかし,断層は上部で2本に分岐して低角化(約 20゜)しており,2本の断層に挟まれた部分は断層にそって長く引き延ばされたようになっていることから,実際の平均変位量はこれよりは大きな値となると推定される.

f16露頭における段丘堆積物1の鉛直変位量は75cm以上であり,その形成年代として約6,500年前という値が得られているので,これから算出される平均変位速度は0.12m/1,000年以上である.

断層露頭f17において,2.5万年前に降下したとされるH姶良Tn火山灰層(AT)の鉛直変位量は約110cmであるので,これから求められる平均変位速度は 0.05m/1,000年である.

また,断層露頭f17において5万年前に降下したとされるL大山倉吉軽石層(DKP)の鉛直変位量は約250cm程度であることから,DKP堆積以降の平均変位速度は0.05m/1,000年程度と見積もられる.

これらの結果,雨滝−釜戸断層の平均変位速度は,0.05m〜0.12m/1,000年程度となり,B級の最小〜C級の活動度と結論づけられる.

ただし,この数字は鉛直変位量のみから求められたものであり,地形的にみて横ずれ成分(左横ずれ)を有していると考えられる雨滝−釜戸断層の真の平均変位速度は,上述の値より大きくなる可能性が高い.