4−2−1 <雨滝−釜戸断層>

断層露頭f16,断層露頭f17およびTO−2トレンチでの壁面の詳細な地層観察の結果や,14C年代測定結果,火山灰分析結果を加味して,雨滝−釜戸断層の活動時期について検討した(図4−2−1).

図4−2−1 活動年代の推定図

1)TO−2トレンチの壁面観察の結果,雨滝−釜戸断層は,7,490±60y.B.P.に形成された腐植土層を確実に変位させており,3,590±70y.B.P.に形成された腐植土層に覆われているのが明らかになった.したがって,TO−2トレンチにおける雨滝−釜戸断層の最新活動時期は,約7,500年前以降約3,600年前以前との結論を得た.一方,断層露頭f16では,断層によって切られている段丘堆積物1からは,6,460±40y.B.P.という値を得た.したがって,雨滝−釜戸断層の最新活動時期は,約6,500年前以降,約 3,600年前以前と推定される.

2)TO−2トレンチの壁面観察の結果,ATより上位の火山灰層(DHg)とシルト−砂礫互層の間で変位量に有意な差が認められた.したがって,AT堆積以降に活動があったと推定できる.このことから最新活動時期も含めて,約2.5万年前以降少なくとも2回の断層活動があったことになる.

3)断層露頭f17の露頭精査の結果,DKP層とその直上の粘土層との間で変位量に有意な差が認められた.また,TO−2トレンチの観察でも,地層の変形の程度や,断層を挟んでの分布状況からみて,DKP層とその上位の礫混じりシルト層との間にも活動時期があったと推定できる.

DKP層以下の変形は,その上位の礫混じりシルト層以降の変形程度とは明らかに異なり,有意に大きい.したがって,DKP層とその上位を覆う層の間にも活動時期があったと推定できる.このことから,最新活動,AT以降の活動を含めて,約5万年前以降少なくとも3回の断層活動があったことになる.

4)断層露頭f17の露頭精査の結果,DKPより下位の有機質シルト層と砂礫層との間で変位量に有意な差が認められた.これらの層が形成されたDKP堆積以前の時期にも少なくとも1回は断層活動が生じたものと推定される.したがって,断層露頭f17およびTO−2トレンチの観察結果から,DKP堆積以降に3回,DKP堆積以前にも少なくとも1回は断層活動があったことになる.

ただし,これらの値は,大坂地区のみで得られた情報をもとに推定している.大坂地区の調査地点は山間の平坦地であることから,常に堆積物が供給されるような堆積環境ではなく,複数の年代の地層が欠如している可能性がある.このため,いくつかのイベントが認識できていない可能性があることに注意が必要である.