3−2−1 地表地質踏査(精査)

L−1(雨滝−釜戸断層)に沿った地域で地表地質踏査(精査)を実施した.踏査ルートマップを図3−2−1に示す.本年度の調査では,雨滝−釜戸断層に関して,地質的には新たな情報は得られなかった.しかし,この地区について地形を詳細に観察した結果,水系に河川争奪と推定される異常が認められた.河川争奪は,断層露頭f17付近で生じており,大坂川の右岸側支流の一部が北東に流れる郷路川支流に争奪されている.成因としては郷路川支流の谷頭浸食が考えられるが,地形的には雨滝−釜戸断層が左横ずれ成分を有していると推定されることから,この変位の影響を受けている可能性も大きい.

大坂地区における雨滝−釜戸断層に関する情報は,平成9年度の調査において確認されていた断層露頭f1,f16,f17,f18のみである.

このうち,郷路川上流部右岸のf1露頭では,基盤岩である凝灰岩内に幅約9mの破砕帯が認められ,破砕帯の中心部の北端を区切る面の走向傾斜は,N32゜W,75゜Eである.破砕帯の南端は,見かけ上北側上がりの逆断層となっている.破砕帯を覆う表土および崖錐堆積物には,断層による変位は認められない.

郷路川上流部左岸のf16露頭は,基盤岩である凝灰岩内に幅約1.7mの破砕帯が認められ,破砕帯の中心部の北端を区切る面の走向傾斜は,N20゜W,62゜Sである.破砕帯の南端は,下位の段丘堆積物にのし上げる見かけ上北東側上がりの逆断層となっている.破砕帯および下位の段丘堆積物は,上位の段丘堆積物および崖錐堆積物によって不整合に覆われる.

郷路川支流源頭部の崩壊地のf17露頭では,約5万年前に降下したとされる大山倉吉軽石層(DKP)を含む上部更新統の砂礫層,シルト層,粘土層などを切る断層が認められる.断層は見かけ上東上がりの逆断層で,露頭の西側から左下東側に傾き下がっている.断層面の走向傾斜はN18゜W,48゜Nであった.

f18露頭は,コンクリート擁壁で覆われてしまったため現在は観察できないが,平成9年度の調査では,基盤岩である石英安山岩内に幅60〜80cmの破砕帯が認められ,破砕帯には泥岩が薄く挟み込まれ,著しく破砕され,一部粘土化していたと報告されている.破砕帯は,上部へいくほど狭くなり不明瞭になっていたが,露頭西側の砂礫層中にのり上げており,見かけ上東側上がりの逆断層である.

断層露頭f16,f17,f18は,鞍部や直線状の谷が連続するリニアメントと調和的な地点に位置している.したがって,大坂地区では,第四紀層(段丘堆積物およびテフラ)を変位させている可能性があるf16,f17の断層露頭から,雨滝−釜戸断層の性状および活動履歴に関する情報が得られる可能性が高いと判断された.

図3−2−1 地表踏査ルートマップ