f19露頭の断層の走向は主断層の走向と不調和であるが,位置的には延興寺地区から大坂地区に延びるリニアメント(連続する鞍部の延長線)の直下にあたる.f15露頭も同様に,リニアメントと調和的な地点に位置している.
断層露頭f15とf19は尾根を隔てて約500m離れており,その間の区間では断層の位置を推定する手がかりは得られなかった.
断層露頭f15およびf15'など河床で確認できた断層は,破砕の程度や走向傾斜などの状況から,いずれも主断層とはいい難い.これらの断層の走向は,雨滝−釜戸断層の全体的な走向とはやや斜交していることから,雨滝−釜戸断層の活動により形成された副次的な断層であると考えられる.いずれの断層も,上位の現河床堆積物に覆われているが,これらの層に変位を与えていない(図3−1−2−1、図3−1−2−2、図3−1−2−3参照).
ボーリング調査の結果,沖積層と考えられる砂礫層が3m程度の厚さで分布し,その下位に直接基盤である泥岩が分布することが明らかになった.また,BE−1のコアはBE−2に比べて基盤岩中の亀裂の密度が高く,全般に破砕されており,角礫化,粘土化が進行していることが観察された(図3−1−5).明らかに雨滝−釜戸断層の主断層と認めれるような断層面や断層粘土などは確認できなかったが,BE−1の泥岩部分の破砕度,とくに凝灰岩より上部の黒色泥岩の破砕度の高さは,雨滝−釜戸断層の破砕帯の一部を確認している可能性がある.一方,現時点では雨滝−釜戸断層の主断層が,図3−1−6に示すようなBE−1とBE−2の間の未確認ゾーンAを,高角度(45゜以上)で通る可能性や,BE−1とBE−2に挟まれていない@やBの未確認ゾーンを通る可能性も否定しきれない.
ボーリング調査の結果では,沖積層である砂礫層下面には,BE−1とBE−2とで約0.5mの標高差が認められる.これは主断層あるいは分岐断層による変位を示している可能性もあるが,層相や河床の露頭の調査結果も考慮すると,堆積時における浸食によって形成された落差である可能性が高いと考えられる.
小田川の谷底平野である延興寺地区(延興寺橋下流約250m付近)では,雨滝−釜戸断層の主断層の位置,性状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)について確証を得ることはできなかった.また,断層破砕帯が通る可能性がある区間においても,被覆層である河床堆積物に明瞭な変形が推定できず,河床堆積物から年代測定やその他諸分析用の試料を得られる可能性が低いことが明らかになった.したがって,今年度の当初計画で予定していたトレンチ調査は延興寺地区では実施しないことにした.