大坂地区は,平成9年度の調査で,第四紀層(段丘堆積物もしくは降下火山灰層)を変位させている断層露頭(f16,f17,f18)が認められ,また,連続的な断層変位地形が認められる地域である.雨滝−釜戸断層の形状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)や活動履歴(活動性・平均変位速度・最新活動時期・単位変位量および地震再来間隔)の諸元に関する新情報を得る目的で実施した.
調査結果をルートマップ(1/5,000)に記載した.
A露頭精査
露頭精査の対象は,平成9年度の調査で発見された断層露頭f16,f17である.f16,f17露頭の断層が,第四紀層を変位させているのは明らかであるので,雨滝−釜戸断層の形状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)や活動履歴(活動性・平均変位速度・最新活動時期・単位変位量および地震再来間隔)の諸元を明らかにする目的で実施した.
f16露頭は露頭上部の杉の根が露頭上に張り出し,一部オーバーハングしている.そのため,露頭直上の杉を伐採し,断層露頭もきれいに剥いで,できるだけ平らになるように整形した.観察し易くするために 50cm間隔のグリッドを設け,断層およびその周辺の地層の性状について詳細な観察を行った.また,断層の変位が上位のどの堆積物まで及んでいるかを明確にするために,断層近傍の礫の長軸方向を測定し,ステレオネットで処理した.
f17露頭は小河川源頭部の崩壊地であるため,崩積土が厚く堆積していた.そのため,断層部分およびその周辺も合わせて,地表付近までやや広めにきれいに剥いで,できるだけ平らになるように整形した.観察し易くするために50cm間隔のグリッドを設け,断層およびその周辺の地層の性状について詳細な観察を行った.
f16,f17露頭からは,14C年代測定用試料および火山灰分析用試料を採取し,そのうち数点について分析を行った.
調査結果は,スケッチ(1/20),露頭写真,および14C年代測定結果としてまとめた.また,火山灰分析結果および詳細な14C年代測定結果については巻末試料として添付した.
Bトレンチ調査
トレンチ調査は,雨滝−釜戸断層の形状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)をさらに明確なものとし,活動履歴(活動性・平均変位速度・最新活動時期・単位変位量および地震再来間隔)の諸元を明らかにする目的で実施した.実施場所としては,f17露頭の断層が第四紀層を変位させているのは明らかであることや,この露頭から南東方向へ断層崖である可能性が高い地形や閉塞丘などの断層変位地形が連続していることから,f17露頭から南東100mの範囲で2箇所選択した.
南側のトレンチTO−1は,f17露頭の南東100mに位置し,断層が通ると推定された閉塞丘と山地の間の谷筋を横切るように掘削した.トレンチの諸元は,トレンチ上面で長さ約30m,同幅約6m,深さ約5mである.北側のトレンチは,f17露頭のすぐ南側5mに位置し,f17露頭より上位の地層が堆積,保存されている可能性が高い地点で,断層崖の可能性が高い段差を跨いで掘削,観察した.トレンチの諸元は,トレンチ上面で長さ約9m,同幅約4m,深さ約4mである.
トレンチは,いずれも重機を用いて荒掘削した後,手作業で壁面をできるだけ平らになるように整形した.観察し易くするために1m間隔のグリッドを設け,断層およびその周辺の地層の性状について詳細な観察を行った.その後14C年代測定用試料および火山灰分析試料を採取し,数点については分析を行った.
調査結果は,詳細なスケッチ(1/50および1/20),壁面写真,および14C年代測定結果としてまとめた.また,火山灰分析結果については巻末試料として添付した.最後に露頭精査の結果とトレンチ調査の結果を合わせて,雨滝−釜戸断層の活動履歴について検討した.