文献資料調査は,雨滝−釜戸断層系の実態把握に寄与する地形・地質・断層・地震などに関する文献や資料の収集・整理を行った.
その結果,25個の文献・資料を収集することができた.但し,雨滝−釜戸断層系に関する文献・資料は,「新編」日本の活断層(活断層研究会,1991)中の田中・岡田・柏木(1991)のみであった.
A 空中写真判読
空中写真判読は,調査地域において地形分類・地形面区分及び断層変位地形・リニアメントの判読を行い,活断層の可能性があるリニアメントを抽出した.
その結果,L−1〜L−9の9本の活断層の可能性のあるリニアメントを抽出した.各リニアメントの確実度は,L−1(雨滝−釜戸断層)・L−2でU〜V,L−3(栃本南方断層)・L−4でU,その他はVで活断層としての可能性は推定または疑いの域を出ないことがわかった.
B 地表地質踏査
空中写真判読により抽出された9本(L−1〜L−9)の活断層の可能性のあるリニアメントについて,地表地質踏査を行った.
その結果,空中写真判読では活断層である確実度が比較的低かった(確実度U〜V),L−1(雨滝−釜戸断層)及びL−3(栃本南方断層)は,地質の分布状況や断層露頭から,第四紀層である段丘礫層や火山灰層などに変位を与えている(確実度Tの可能性が高い)ことが確認された.
C 総合解析
空中写真判読及び地表地質踏査(概査)結果に基づき,活断層の可能性があるリニアメントについて,活断層としての評価及びその性状と活動性についての考察を行った.
その結果,L−1(雨滝−釜戸断層)及びL−3(栃本南方断層)はその性状と活動性において重要性の高いリニアメントであることがわかった.
D 詳細調査候補地の選定及び調査方針
総合解析により,重要性の高いリニアメントと判断されたL−1(雨滝−釜戸断層)及びL−3(栃本南方断層)に対して詳細調査を行う必要があると考える.
詳細調査の候補地として,この2本のリニアメント沿いまたはその延長線上において,断層の性状や諸元(活動性・単位変位量・最新活動時期・活動の再来間隔)を明らかにする目的に適していると判断される地区を5地区(地区@〜D),選定した.また,詳細調査の内容はそれぞれの地区の目的にあわせて,浅層反射法地震探査,地質精査,露頭精査,ボ−リング調査,トレンチ調査及び年代測定・諸分析を計画した.