(2)平成11年度調査

平成11年度調査では、谷保地区に調査を集中させ、とくに平成10年度での最終トレンチで確認した変形を受けた地層の分布を確認するためのトレンチ調査、各種分析を行った。またボーリング調査による基盤層の変位、地下レーダー探査による青柳礫層の上面分布の把握とトレンチ箇所の選定のための基礎資料を得た。

その結果次のようなことが整理された。

@ 谷保地区での地下レーダー探査から、断層の走向方向(北西−南東)に直交する方向にいくつかの凹地状の反射面の傾斜がみられる。また断層走向と平行に不連続な谷部の存在も観察できる。トレンチ掘削の結果、これらはチャネル構造や礫層上面の急激な低下などを表しており、レーダー探査結果とかなり整合性がよいことが判明した。さらに矢川方向に向かって、青柳礫層の上面標高がほぼ平坦で、そのなかでも一部は南北につながる旧河道のような凹状の構造も認められる。

谷保地区以外での立川断層のとう曲帯でのレーダー探査結果は、特に箱根ヶ崎地区や、三ツ木地区で礫層の上面の変形を反映した映像が得られた。これらは今後のトレンチ候補地である。

A 平成10年度で確認されたトレンチ3’での地層の変形は、平成11年度のトレンチでのほぼ水平に堆積した青柳礫層を削り込んだチャネル構造とは異なり、青柳礫層が変形していることから、断層活動に伴う地層の変形であると判定した。活動の時期は、青柳礫層の堆積した14,000年以後で、青柳礫層上位に載る河川堆積物は変位を受けず、チャネル構造を埋積していると思われる。つまり地層の変形、チャネルの形成、河川堆積物の堆積の順である。

B ボーリングの結果からは、青柳礫層上面の標高の差は、上盤側と下盤側では、1.84m〜2.1mである。青柳礫層の下面の標高差は、上面と比べ、やや小さく、また青柳礫層の層厚も薄いことから下盤側の礫層が河川による浸食を受けている可能性がある。谷保地区でのトレンチ周辺の断層に平行する南北方向の断面では、B−3孔付近で青柳礫層が高まりになっており、レーダー探査、ボーリング調査からも確認できる。B−2孔およびB−3孔の上総層群中の砂層上面標高はさほど差がないが、ボーリング孔間の上面標高は凹凸に富む可能性もある。河川堆積物は今のところのデータでは、この高まりよりも南側では、分布しておらず、トレンチでの青柳礫層の変形のあとに河川堆積物が堆積した可能性からみると、この高まりが、断層運動に伴う影響で形成された可能性もある。 

C トレンチによる黒ボク土の変形などによる最新活動時期の確定は、平成11年度もできなかった。トレンチのうち、トレンチ5、6では、1,530±60〜1,930±60yBP年前後の黒ボク土層が堆積しているが、それよりも古い黒ボク土層が削られており、断層活動による直接の変形等は確認できない。このように古い黒ボク土(5,000年前前後)が削られたのは、新しい河道の形成や流量の増加などが推定され、これが断層活動との間接的な関係を示している可能性も考えられる。