@矢川緑地では、深度1.3m付近まで、有機質シルト層が分布しており、その放射性 炭素同位体年代は、2,830±40yBPであった。
A矢川地区では、立川断層の隆起側と沈降側では堆積物の違いがみられ、基底部の 青柳礫層は両地域で分布するが、隆起側には黒ボク土層は分布せず、青柳礫層の上 位には河川堆積物と青柳ローム層がのり、一方沈降側では青柳礫層の上位に黒ボク 土層が分布し、青柳ローム層は分布しない。
矢川地区の立川断層による変位地形が明瞭な箇所で行った、トレンチの観察で、青柳礫層とその上位に分布する河川堆積物層に断層活動にともなう変形が認められた。変形の時期は、青柳面上位の河川堆積物堆積後で、青柳ローム層の堆積前であり、年代は青柳面の形成年代等から約14,000年前〜12,000年前頃である。
立川断層の沈降側に分布する黒ボク土は、矢川の流路の変遷に伴い形成された堆積物で、その堆積のはじめは5,610±70yBP(ボーリングでは5,630±80yBP頃である)。黒ボク土層の堆積が立川断層の活動によりもたらされたとすると、この時の立川断層の活動時期は5,610±70yBPより少しさかのぼった時期と考えられる。
黒ボク土層は、立川断層の沈降側で、約5,630±80yBP〜1,220±60yBPの範囲の年代をとり、下位より黒ボク土層T〜Wに区分されるが、そのうち、黒ボク土層T、Uが欠如し、黒ボク土層V〜Wのみが分布するところは、年代の範囲が1,220±60yBP〜1,930±60yBPである。黒ボク土層V〜W以降の珪藻化石からは、それ以前の沼沢地性から河川性の珪藻が現れる結果もでており、この時期に新たな河川の流路や流量の変化があったことが、十分予想される。ただし、この河川の変遷と立川断層活動との関係はこの地域だけでは明確でないので、他の地域との関係を考慮する必要がある。
B旧矢川地区での主な地質は、上位から盛土、風化火山灰質シルト層、青柳ローム層、火山灰質中〜粗粒砂層および青柳礫層である。
風化火山灰質シルト層の放射性炭素同位体による年代測定結果では、もっとも古い年代は5,710±70yBPである。さらに上位の層準で4,540±60yBPの年代がでており、これよりも古い堆積物は、平成10年度のボーリングでは確認されない。この地域では、矢川の堆積物よりも古い堆積物は確認できなかった。このことは、立川面の境界付近から連続する沖積低地の新しい堆積物により古い旧矢川堆積物が削剥された可能性が考えられる。