(1)深層ボーリング

(1)青梅市今井地区

1) ボーリング結果

各ボーリング孔で採取した地質について特徴的な事項について説明するとともに、地層対比を行い、地質対比図を作成し図2−1−4−1に示した。またコア写真を巻末に添付した。各地点のボーリング結果による地質状況は次の通りである。

@今井B−1孔

上位から地層の特徴を説明すると以下の通りである。

◎深度0.00〜10.28m(標高165.44m〜155.16m):地質;ローム層(50cm表土)

φ2〜3mmの発泡した安山岩片や火山礫を混入した暗褐色〜褐色の風化火山灰 層である。深度7.65m〜7.78m間は、黄色の軽石層で石英、長石、角閃石を含 む。風化変質が著しい。層相からみてPm−1に対比されると思われる。

◎深度10.28m〜51.24m(標高155.16m〜114.20m):地質;砂礫層

深度24.83m付近までは、褐色〜明黄褐色の砂礫層である。φ0.3mm〜4cmで最 大7cmの亜円〜亜角礫を主体とする。礫種は砂岩、礫岩、頁岩、チャート、 花崗岩類であり、礫含有率は30〜50%を占める。そのうち風化礫の20〜30%程 度である。基質はシルト質〜シルト混じり砂で、指圧で崩せる。上位ほど指 圧で容易に砕ける。深度32.6m付近までは、灰オリーブ色の砂礫層で、φ0. 5〜4cm程度であるが、最大径は20cm以上の礫も混入する。礫種は、上位の砂 礫層とほとんど同じであるが、礫率は50〜60%となり、上位に比較して礫質 になるとともに、風化礫の占める割合は5〜20%とやや減少する。基質はシル ト混じり砂で強指圧で砕ける。深度51.24mまでは、橙〜明黄褐色で、下位が 暗緑灰色の砂礫層で、φ1〜5cmの亜角〜亜円礫を呈し、最大径は17cm程度で ある。礫種は、花崗岩類が多くみられるようになり、ほかに砂岩、緑色岩、 頁岩である。風化礫の占める割合は、上位の砂礫層にくらべ、多くなる。礫 含有率も70〜80%で部分的に90%を越える。基質はシルト質〜シルト混じり砂 で指圧によって砕ける。

◎深度51.24m〜74.75m(標高114.20m〜90.69m):地質;シルト〜粘土層〜凝灰質シルト岩及び凝灰岩層

深度59.16mまでは、黒褐色の腐植質砂質シルトが挟在する、シルト〜粘土層 で砂・シルト互層の部分もある。色調は全体には明黄褐色〜暗緑灰を呈する。 全体に固結状態がよく、つめ跡がつく程度である。腐植質砂質シルトの箇所 以外にもところどころに材片や腐植物が混入する。また下位層準にはφ0.5 mm〜5mm程度の軽石が濃集する箇所がみられる。深度74.75mまでは凝灰質シ ルト岩中に凝灰岩が挟在する層相を呈し、色調は主に灰オリーブ色〜にぶい 黄褐色である。凝灰質シルト岩は、φ1〜2mmの本質礫および白色軽石岩片を 含有し、やや腐植質で材片が点在する。特徴的に、濃緑色〜黒色のガラス質 火山礫が混入する。非常に固結しているところと、ハンマーの軽い打撃で砕 ける箇所がある。凝灰岩は細粒な箇所とやや粗粒な箇所があり、細粒部は緻 密であるが、ハンマーの軽打で砕ける程度である。有色鉱物や白色軽石片、 濃緑色岩片が混入する。15〜20°の平行葉理が認められる。

◎深度74.75m〜90.00m(標高90.69m〜75.44m):地質;砂礫層

φ0.2〜3cmの粒径の亜角〜亜円礫を主体とする暗青灰〜暗緑灰の砂礫層で、最大では16cm程度のを混入する。礫種は主に砂岩、チャート、頁岩であり部分的に花崗岩類の風化礫が混入する。礫率は50%程度で風化礫の占める割合は、下位ほど減少し、約30〜50%である。基質はシルト質砂〜砂質シルトで指圧ではへこまず固結している。 

A 今井B−2孔

上位から地層の特徴を説明すると以下の通りである。

◎深度0.0m〜10.66m(標高168.0m〜157.34m):地質;ローム層(0.65m表土)

褐色のローム層で、上部にはややクサリ状のφ1〜3mm円〜亜角礫の赤褐色火山礫が混入する(混入率5%以下)。部分的にφ2mm程度の青灰色、緑灰色火山礫を混入する。深度8.24m〜8.35m間は、黄橙色の軽石および軽石質火山灰層で、角閃石の鉱物片を含む。層相からみてPm−1に対比されると思われる。

◎深度10.66m〜41.53m(標高157.34m〜126.47m):地質;砂礫層

深度14.78mまでは褐色でφ2〜3cmの亜円〜円礫を主体とし、一部は4〜5cmの礫である。最大径は11cm程度である。礫種は頁岩、砂岩を主とし珪質岩も少量含む。礫率は60%程度であり、新鮮〜弱風化の礫が多く、クサリ礫は認められない。基質は流出した部分も多いが、シルト混じり中〜粗砂で、一部に粘性土分に富んだところもある。深度14.78m〜15.00mまで粘土混じりの礫質砂であるが、それよりも下位からは掘削時の流出区間も多くなる。全体には41.53mまで砂礫層から粘土混じり砂礫層である。色調は褐色〜褐黄色である。φ0.5〜5cmの亜円〜亜角礫で、一部円礫となり、最大礫径は10〜11cmである。礫種は、砂岩、頁岩、チャート、花崗岩であり、花崗岩をのぞいては新鮮である。一部下部に安山岩の礫が混入する。礫含有率は基質部分が流出している状態もあり、約80%程度にみえる。基質は中砂〜シルト質砂である。砂礫層以外は深度30.49m〜30.80m間は固結した褐色の火山灰層で基質は粘土化している。深度33.05m〜33.38mは褐色の中粒砂で変質した黒雲母片が散在する。

◎深度41.53m〜43.16m(標高126.47m〜124.84m):地質;粘性土

褐色〜明褐色の礫混じり粘性土である。全体に固結し、カッターの刃で切れ る程度である。シャープな割れ目がみられ、鏡肌、条線が認められる。混入 する礫は花崗岩、安山岩等である。

◎深度43.16m〜80.00m(標高124.84m〜88.0m):地質;砂礫層

黄褐色〜褐色〜灰オリーブ色の砂礫層。部分的に粗粒砂や砂・シルト互層が挟在するが、全体はφ0.2〜5cmの亜円〜円礫で最大径20cm程度のものを含 むが、深度65m以深ではφ1〜2cmの亜角〜亜円礫主体である。礫種は安山岩、 砂岩、花崗岩類(閃緑岩も含む)、チャートからなり、花崗岩は上部ほどマ サ化しているが、ほかは新鮮〜弱風化である。2mm以上の礫は75%以上を占め る。基質は流出している箇所も多いが、シルト質砂〜シルト混じり砂である。

2) 物理検層

各ボーリング孔で実施した電気検層、密度検層の結果を図2−1−4−2−1図2−1−4−2−2にまとめた。

電気検層は、ボーリング孔内の孔壁周辺での地層の電気比抵抗と孔内で発生している電気化学的自然電位を測定する方法である。今回の検層は、ノルマル検層で行い、電極間隔は、0.25m、0.5m、1mとした。密度検層は、ボーリング孔を用いて、放射性物質(γ線源)と検出器を降下することにより、放射性物質から放出したγ線の密度の異なる地層を通過したあとの散乱γ線をとらえ、見かけ密度(単位体積重量)を得る。

2)−1 電気検層結果

@ 今井B−1孔

今井B−1孔の地質との対比を行うと次のようである。

◎比抵抗値の変化が認められるのは、深度約10.3m付近、深度25m付近及び深度33m付近である。それ以深は比抵抗値の変化は少なく、深度約59m付近で若干の変化はあるが、ほかは変化は少ない。

◎地質と比較するとほとんど粘土化しているローム層は深度約10.3mまで分布し、その間の比抵抗値は50〜100Ω・mであり、ほかに比べて低い。深度25m付近までは200Ω・m程度まで比抵抗値が上昇し、砂礫層の分布と一致する。 深度25m付近から深度33m付近まで同じ砂礫層であるが、比抵抗値が約50〜100Ω・m程度上昇するのは、その間がやや礫質になることと調和する。

◎深度33m以深からは、比抵抗値がほとんど変化なく、100Ω・m程度である。地質は粘土や砂礫層からなるがさほど比抵抗値に変化がないのは、砂礫層も基質がかなりシルト質であり、固結しているためであると思われる。深度33〜52m付近までは、上位と同じ砂礫層であるが、風化の程度が増しており、その影響で比抵抗値が低下している。

A 今井B−2孔

今井B−2孔の地質との対比を行うと次のようである。

◎比抵抗値の変化が認められるのは、深度約10.7m付近、深度15m付近、深度30m付近、深度33m付近、および深度40m〜43m付近である。それ以深は比抵抗値の変化は少なく、深度約50m付近で若干の変化はあるが、ほかは変化は少ない。

◎地質と比較するとほとんど粘土化しているローム層は深度約10.7mまで分布し、その間の比抵抗値は150〜200Ω・mであり、ほかに比べて今井B−1孔と異なりさほど低いわけではない。深度15m付近までは比抵抗値がかなり高く、450Ω・m程度まで比抵抗値が上昇しているが、それ以深の深度40mまでの砂礫層の分布深度では、約150〜250Ω・mである。深度30m付近では粘土化した火山灰層に対応した変化、深度33mでは砂層の分布と一致する。深度40m〜43m付近までの低比抵抗値(50Ω・m以下)は、粘土層に対応しているが、40m付近はコア流出しているため、地質との対比ができないが、比抵抗値でみれば、粘土層は約40m付近から出現している可能性は高い。

◎深度43m以深からは、比抵抗値がほとんど変化なく、100Ω・m程度である。地質は砂礫層からなり、今井B−1孔と同様な比抵抗値を示す。

2)−2 密度検層結果

今井B−1孔およびB−2孔の結果は次の通りである。

◎今井B−1孔の値は、かなりばらつきがみられる。ただし、全体としての密度変化は、今井B−1孔、B−2孔を問わず、地質状況と概ね対応している。

◎密度はローム層で1.5g/cm3で、一般的な関東ローム層が、1.45g/cm3程度の値をとっており概ね一致する。そのほか礫層は2.0g/cm3付近の値、粘土層は1.5/cm3〜2.0g/cm3の範囲の値をとる。

3) 採取試料の分析結果

各ボーリング孔から採取した花粉・珪藻(P−で表示)古地磁気(I1−、I2−で表示)および火山灰(T−で表示)の採取試料位置を図2−1−4−3に示した。

3)−1 花粉分析

花粉は、一般的には、珪藻と同じように静かな堆積環境の場で産出する場合が多く、採取対象層は、細粒堆積物である。花粉化石の抽出は、試料2〜3gを10%水酸化カリウム処理(湯煎約15分)による粒子分離、傾斜法による粗粒砂除去、フッ化水素酸処理(約30分)による珪酸塩鉱物などの溶解、アセトリシス処理(氷酢酸による脱水、濃硫酸1に対して無水酢酸9の混液で湯煎約5分)の順に物理・化学的処理を施すことにより行った。なお、フッ化水素酸処理後、すべての試料において重液分離(臭化亜鉛を比重2:1に調整)による有機物の濃集を行った。プレパラート作成は、残渣を蒸留水で適量に希釈し、十分に攪拌した後に、マイクロピペットで取り、グリセリンで封入した。検鏡は、プレパラート全面を走査し、その間に出現したすべての種類について同定・計数した。

分析結果は、図2−1−4−4に、また表2−1−4−1に花粉化石一覧表を示した。なお表での複数の分類群をハイフンで結んだものは分類群間の区別が困難なものである。

図2−1−4−4 今井B−1孔花粉化石分布図

表2−1−4−1 今井B−1孔花粉化石一覧表

今井地区での結果は次のようである。

@ 今井B−1孔

◎針葉樹のスギ属が高率で得られる。落葉広葉樹のハンノキ属、コナラ亜属、ニレ属−ケヤキ属、トネリコ属もやや目立ち、ハンノキ属は試料P−12で突出した出現をする。

◎スギ属を主体とした針葉樹からなる森林が雄積であり、やや寒冷で湿潤な気候であったことが予想される。A 今井B−2孔

◎試料数も少なかったこともあるが、花粉化石は全く産出しない。

3)−2 珪藻分析

珪藻は、10〜500μmほどの珪酸質殻を持つ単細胞藻類で、殻の形やこれに刻まれた模様などから多くの珪藻種が調べられている。また現生の生態から特定環境を指標する珪藻種群も設定されている(小杉,1988;安藤,1990)。一般的に、珪藻の生育域は海水域から淡水域まで広範囲に及び、中には河川や沼地などの水成環境以外の陸地においてもわずかな水分が供給される環境、たとえば、コケの表面や湿った岩石の表面などで生育する珪藻種(陸生珪藻)も知られている。こうした珪藻種あるいは珪藻群集の性質を利用して堆積物中の珪藻化石群集の解析から、これら堆積環境について知ることが可能である。

珪藻分析のための処理は以下の方法で行い、珪藻用プレパラートを作成した。

@試料から湿潤重量約1g程度を取り出し、秤量した後ビーカーに移し、30 %過酸化水素水を加え、加熱・反応させ、有機物の分解と粒子の分散を行う。

A反応終了後、水を加え1時間程してから上澄み液を除去し、細粒のコロイドを捨てる。この作業を7回ほど繰り返す。

B残渣を遠心管に回収し、マイクロピペットで適量取り、カバーガラスに滴下し、乾燥させる。乾燥後はマウントメディアで封入しプレパラートを作成する。

作成したプレパラートは顕微鏡下1000倍で観察し、珪藻化石200個体前後について同定・計数した。なお、珪藻化石が少ない試料については、プレパラート全面について精査した。 

珪藻化石の環境指標種群は、主に小杉(1988)および安藤(1990)が設定した環境指標種群に基づいた。なお、環境指標種群以外の珪藻種については、淡水種は広布種として、また海水〜汽水種は不明種としてそれぞれ扱った。また、破片のため属レベルで同定した分類群は、その種群を不明として扱った。

以下に、小杉(1988)が設定した汽水から海水域における環境指標種群と安藤(1990)が設定した淡水域における環境指標種群の概要を示す。

[外洋指標種群(A)]:塩分濃度が35パーミル以上の外洋水中を浮遊生活する種群である。

[内湾指標種群(B)]:塩分濃度が26〜35パーミルの内湾水中を浮遊生活する種群である。

[海水藻場指標種群(C1)]:塩分濃度が12〜35パーミルの水域の海藻や海草(アマモなど)に付着生活する種群である。

[海水砂質干潟指標種群(D1)]:塩分濃度が26〜35パーミルの水域の砂底(砂の表面や砂粒間)に付着生活する種群である。この生育場所には、ウミニナ類、キサゴ類、アサリ、ハマグリ類などの貝類が生活する。

[海水泥質干潟指標種群(E1)]:塩分濃度が12〜30パーミルの水域の泥底に付着生活する種群である。この生育場所には、イボウミニナ主体の貝類相やカニなどの甲殻類相が見られる。

[汽水藻場指標種群(C2)]塩分濃度が4〜12パーミルの水域の海藻や海草に付着生活する種群である。

[汽水砂質干潟指標種群(D2)]塩分濃度が5〜26パーミルの水域の砂底(砂の表面や砂粒間)に付着生活する種群である。

[汽水泥質干潟指標種群(E2)]:塩分濃度が2〜12パーミルの水域の泥底に付着生活する種群でsる。淡水の影響により、汽水化した塩性湿地に生活するものである。

[上流性河川指標種群(J)]:上流の渓谷部に集中して出現する種群である。これらにはAchnanthes属が多く含まれるが、殻面全体で岩にぴったりと張り付いて生育しているため、流れによってはぎ取られてしまうことがない。

[中〜下流性河川指標種群(K)]:中〜下流部、すなわち河川沿いに河成段丘、扇状地および自然堤防、後背湿地といった地形が見られる部分に集中して出現する種群である。これらの種は、柄またはさやで基物に付着し、体を水中に伸ばして生活する種が多い。

[最下流性河川指標種群(L)]:最下流部の三角州の部分に集中して出現する種群である。これらの種は、水中を浮遊しながら生育している種が多い。これは河川が三角州地帯にはいると流速が遅くなり、浮遊性の種でも生育できるようになる。

[湖沼浮遊生指標種群(M)]:水深が約1.5m以上で、水生植物は岸では見られるが、水底には生育していない湖沼に出現する種群である。

[湖沼沼沢湿地指標種群(N)]:湖沼における浮遊生種としても、沼沢湿地における付着生種としても優勢な出現が見られ、湖沼・沼沢湿地の環境を指標する可能性が大きい。なおFreagilaria brevistriata、F.construens、F.pinnata、Melosira solidaなどはこの種群に含めた。

[沼沢湿地付着指標種群(O)]:水深1m内外で、一面に植物が繁殖しているところおよび湿地で、付着状態で優勢な出現が見られる種群である。なおEunotia diodonは、これらの種群に伴って出現することが多いことから同種群に含めた。

[高層湿原指標種群(P)]:尾瀬ヶ原湿原や霧ヶ峰湿原などのように、ミズゴケを主とした植物群落および泥炭層の発達が見られる場所に出現する種群である

[陸域指標種群(Q)]:上述の水域に対して、陸域を生息地として生活している種群である(陸生珪藻と呼ばれている)。

分析結果を下記に示す。なお、珪藻化石産出表を表2−1−4−2に、また図2−1−4−5に珪藻化石分布図を示す。

@ 今井B−1孔

◎環境指標種群の出現傾向から、4珪藻帯に分帯される。

試料P−18、22は珪藻化石は、全く検出されない。

◎試料P−12は、堆積物1g中の珪藻殻数は約5.15x102個、完形殻の出現率は約8%である。珪藻化石は、少ないものの淡水種が検出された。なお、この堆積物はテフラである。

◎試料P−6は、堆積物1g中の珪藻殻数は約8.54x104個、完形殻の出現率は約 8%である。珪藻化石は、海水泥質干潟指標種群のNitzshia granulataやDiploneis smithiiなどが検出された。こうしたことから、内湾の影響を受ける干潟環境が推定される。

◎試料P−1は、珪藻化石は、全く検出されない。

A今井B−2孔

◎いずれの試料中からも、珪藻化石は全く検出されない。

珪藻分析の引用文献

安藤一男(1990)淡水産珪藻による環境指標種群の設定と古環境復元への応用.東北地理,42,p.73−88.

小杉正人(1988)珪藻の環境指標種群の設定と古環境復元への応用.第四紀研究,27,p.1−20.

表2−1−4−2 今井B−1、B−2孔 珪藻化石産出表

三ツ木B−1  三ツ木B−2

図2−1−4−5 今井B−1孔の堆積物中の珪藻化石分布図(すべての分類群を表示)

3)−3 火山灰分析

関東平野での第四系に含まれる示標となるテフラを念頭におき、今井地区のボーリング試料からテフラ粒子の認められた試料を対象にして、テフラ組成分析(火山ガラス比分析および重厚物組成分析)と屈折率測定をあわせて行った。分析試料は、ローム層中および礫層中の粘土層〜シルト層に挟在する凝灰岩や火山灰層である。分析の手順は、次のようである。

 @超音波洗浄により泥分を除去する。

 A80℃で恒温乾燥を行う。

 B分析ふるいで1/4〜1/8mmの粒子をふるい別する。

 C偏光顕微鏡下で火山ガラス250粒子を観察し、火山ガラスの形態別比率を求める(火山ガラス比分析)。

 D偏光顕微鏡下で重鉱物250粒子を観察し、重鉱物組成を求める(重鉱物組成分析)。

 E示標テフラとの同定精度を向上させるため、温度一定型位相査法(新井, 1972、1993)により、測定が可能と判断した試料について、そこに含まれるテフラ粒子の屈折率の測定を試みた。

各孔での分析結果は次の通りである。

@今井B−1孔

◎テフラ組成分析の結果は、図2−1−4−6のダイヤグラムに、また、火山ガラス比と重鉱物組成の内訳を表2−1−4−3および表2−1−4−4に示した。この地点では、とくに遠来の可能性のあるテフラは認められなかった。

◎この地点で認められたテフラの多くは、重鉱物組成上斜方輝石や単斜輝石に富むいわゆる両輝石型のテフラである。なお角閃石も、試料10を除いて比較的多く含まれる傾向にある。

◎試料0には、透明なバブル型ガラスが少量含まれている(0.8%)。

◎重鉱物としては、量の多い順に角閃石(18.8%)、斜方輝石(17.6%)、単斜輝石(0.4%)などが認められる。

表2−1−4−3 今井B−1孔における火山ガラス比分析結果

表2−1−4−4 今井B−1孔における重鉱物組成分析結果

A今井B−2孔

◎テフラ組成分析の結果をダイヤグラムにして図2−1−4−7に示した。また

火山ガラス比と重鉱物組成の内訳を表2−1−4−5および表2−1−4−6に示す。

◎ここでも、とくに遠方から飛来した可能性のあるテフラは認められなかった。試料03には、重鉱物として角閃石が多く認められた(58.4%)。また試料05には、重鉱物としては角閃石が少量認められた(7.6%)が含まれている。

◎試料01には、透明なバブル型ガラスが少量含まれている(0.8%)。重鉱物としては、量の多い順に角閃石(24%)、斜方輝石(3.6%)、単斜輝石(1.2%)などが認められる。

表2−1−4−5 今井B−2孔における火山ガラス比分析結果

表2−1−4−6 今井B−2孔における重鉱物組成分析結果

◎屈折率測定結果は、今井B−1孔では、後述する三ツ木B−1孔で認められたテフラと比較して、斜方輝石や角閃石の屈折率の値がテフラによってばらつく傾向が認められた。角閃石の屈折率については、三ツ木B−1孔の試料と比較すると若干高い傾向にあることも明らかになった。なお、今井B−1孔の試料T−00に含まれる角閃石(n2)の屈折率は、1.681−1.688(modalrange: 1.682−1.689)である。同じく下末吉ローム層中に層位があると考えられている今井B−2孔の試料T−01に含まれる角閃石(n2)の屈折率も、1.681−1.688(modal range: 1.682−1.686)である(表2−1−4−8参照)。

◎今井B−1孔と今井B−2孔でのテフラ解析の結果から以下のことが検討される。今井B−1孔の試料T−00と今井B−2孔の試料T−01が、重鉱物組成の組み合わせや角閃石の屈折率などから、同じテフラに由来すると考えられる。このテフラは、その特徴から約8〜9.5万年前に御岳火山から噴出したと推定されている、御岳第1軽石(On−Pm1,小林ほか,1967,町田・新井,1992)と考えられる。また、角閃石の屈折率のみをみると、今井B−1孔の試料T−24、T−13と今井B−2孔の試料T−5の間に若干ながら似た傾向がある。

今井B−1孔の試料T−19、9、7は、斜方輝石の屈折率において、後述する三ツ木B−1孔の試料T−23、20、19、16、10、07や三ツ木B−2孔の試料T−51、50、44、24、15と比較的似た傾向が伺える。とくに今井B−1孔の試料T−19、9、7、三ツ木B−1孔の試料T−23、三ツ木B−2孔の試料T−51、44、24、15は、重鉱物の組成上いずれも斜方輝石や単斜輝石を多く含むいわゆる両輝石型テフラ であることから、とくに互いに対比される可能性がより高い。ただし、角閃石の屈折率では地点ごとに若干の違いもあることから、対比については慎重にならざるを得ない状況にある。

表2−1−4−7 今井地区テフラ分析試料

表2−1−4−8 今井B−1・B−2孔 屈折率測定結果

火山灰分析での文献

新井房夫(1972)斜方輝石・角閃石の屈折率によるテフラの同定−テフロクロノロジーの基礎的研究.第四 紀研究,11,p.254−269.

新井房夫(1993)温度一定型屈折率測定法.日本第四紀学会編「第四紀試料分析法−研究対象別分析法」, p.138−148.

Harayama, S. (1992) Youngest exposed granitoid pluton on Earth: Cooling and rapid uplift of the Pliocene−Quaternary Takidani Granodiorite in the Japan Alps, central Japan. Geology,             20,p.657− 660.

Itihara, M., Yoshikawa, S., Inoue, K, Hayashi, T., Tateishi, T. and Nakajima, K. (1975) Strati−graphy of the Plio−Pleistocene Osaka Group in Sennan−Senpoku area, south of Osaka, Japan− A standard stratigraphy of Osaka Group−. Jour.Geosci., Osaka City Univ., 19, p.1−29.

風岡 修・立石雅昭・小林巌雄(1986)新潟県魚沼地域の魚沼層群の層序と層相.地質雑,92,p.829−853.

菊池かおる・黒川勝巳・丸山直子・落合浩代・小林巌雄(1984)新潟油田地域.灰爪層・西山層と魚沼層群 の火山灰層による対比.地質雑,90,p.101−115..

小林国夫・清水英樹・北沢和男・小林武彦(1967)御岳火山第一浮石層−御岳火山第一浮石層の研究その1 −.地質雑,73,p.291−308.

町田 洋・新井房夫(1992)火山灰アトラス.東京大学出版会,276p.

三梨 昴・安国 昇・品田芳二郎(1959)千葉県養老川・小櫃川の上総層群の層序. 地調月報,10,p.83−98.

鈴木毅彦・杉原重夫・町田 洋(1997)第6回日本第四紀学会テフラ研究委員会野外集会「八ヶ岳−房総野 外巡検」案内書,59p.

吉川周作・吉田史郎・服部俊之(1988)三重県員弁郡付近の東海層群火山灰層.地調月報,40,p.615−633.

吉川周作・里口保文・長橋良隆(1996)第三紀・第四紀協会層準の広域火山灰層− 福田・辻又川・Kd38火山灰層−.地質雑,102,p.258−270.

3)−4 古地磁気測定

分析試料の採取にあたっては、なるべく単磁区や疑似単磁区強磁性粒子が多い、粘土やシルト質の箇所を中心にサンプリングを実施した。試料はポリカーボネイト製のキューブ(容積7cc、夏原技研製)に封入し、測定試料とした。自然残留磁化の測定は、夏原技研製SMD−88型スピナー磁力計を用いた。また必要に応じて、多段階交流消磁実験も実施した。交流消磁測定は、2−G超伝導磁力計に付着した、定置交流消磁装置(最大交流地盤100mT)を使用した。   

全試料では、採取直後に自然残留磁化の測定を行った。また多段階交流消磁の結果を巻末にまとめた。無定方位のコアはほとんど鉛直に採取されており、その伏角は復元できるが、偏角は全くもとまらない。残留磁化方向は主成分分析法(kirschvink,1980)により求めた。

測定時の結果表は表2−1−4−9−1表2−1−4−9−2にまとめた。また残留磁化解析結果柱状図を今井B−1孔に関して図2−1−4−8に示した。さらに交流消磁における挙動を図2−1−4−9に提示した。

それぞれの測定結果表は巻末に示した。各孔をまとめると次の通りである。

@ 今井B−1孔

今井B−1孔では、典型的な交流消磁挙動を示す。高い保磁力の残留磁化成分はいずれも逆帯磁であり、深度30m以深の堆積物としては、松山地磁気逆極性期に堆積したもの考えられる。

A 今井B−2孔

今井B−2孔では、粘土質の箇所が41.5m〜42.5m付近に分布するのみであるのと(分析数量が少ない)、初生残留磁化である高い保磁力成分がほとんど認められないため、年代の判定が困難である。

4) 今井地区ボーリング調査結果からの解釈

ボーリングコア観察結果および分析結果から、今井地区での解釈は次の通りである。

@コア観察結果から、今井B−1孔の深度10.28m(標高155.16m)およびB−2孔の深度10.66m(標高157.34m)までは、新期ローム層および下末吉ローム層である。それぞれのローム層に挟在する黄色〜黄橙色軽石層は、層相や屈折 率の測定から同じ軽石層であり、全体の層準からみて、御岳第一浮石層(O n−Pm1)に対比した。その深度と標高は以下の通りである。

B−1孔:深度7.65m〜7.78m(標高157.79m〜157.66m)

B−2孔:深度8.24m〜8.35m)標高159.76m〜159.65m)

Aローム層より下位に分布する礫層は、今井B−1孔では、深度51.24m(標高 114.20m)、今井B−2孔で深度41.53m(標高126.47m)まで分布し、層厚は、前者で約40m、後者で約30mである。今井地区のボーリング地点は、下末吉面 に対比された金子台であり、この礫層は所沢礫層にあたると思われるが、礫層の層厚はかなり厚いので、その下位層準は所沢礫層と異なる、別の更新統 礫層にあたる可能性がある。とくに今井B−1孔では、コア観察により深度32. 6mで不整合的な不連続面がみられ、これより下位は風化礫の占める割合が70〜80%以上と上位の礫層よりも増加する傾向にある。また、電気検層結果からも今井B−1孔の深度約10〜50m間の礫層のうち、深度33m付近で比抵抗値が 200Ω・mから100Ω・mに減少し、風化が進行していることを示唆する結果が 得られている。また、今井B−2孔では、深度30.8m以深から風化礫が増加し、同じく電気検層の結果でも深度30m付近で比抵抗値が200Ω・mから100Ω・mに減少する。この結果、今井B−1孔では、深度32.6m以深から、また今井B−2孔では深度30.8m以深から、所沢礫層と異なる更新統の礫層が分布している可能性が高い。

B今井B−1孔の深度51.24m〜74.75m(標高114.20m〜90.69m)までは、凝灰岩が挟在する粘土〜シルトおよび凝灰質シルト岩からなり、ところどころに材片が混入する。古地磁気分析の結果からも逆帯磁期にあたっており、周辺の既存文献などからみてもこの地層は、仏子層に対比できる可能性が高い。今井B−2孔では、B−1孔に対比できそうな地層は、層相から見て深度41.53m〜43.16m(標高126.47m〜124.84m)である。今井B−1孔にくらべて、著しく層厚が薄い。この層を仏子層に対比したのは、上下の礫層の特徴から類推した。火山灰分析は、B−1孔、B−2孔ともに、粘土層中の凝灰岩や火山灰層の試料を分析しており、その結果から鉱物組成は、B−1孔とB−2孔で異なり、B−1孔は両輝石タイプ、B−2孔は角閃石タイプである。

C仏子層に対比される堆積物の下位には、礫層が厚く分布するが、花崗岩類の礫が増加することや層序的にみても飯能礫層に対比される可能性が高い。

D花粉と珪藻分析は仏子層に対比される細粒層を対象に実施したが(今井B−1孔:深度51.24m〜74.75m;標高114.20m〜90.69m、今井B−2孔:深度41.53m〜43.16m;標高126.47m〜124.84m)、花粉は両孔ともに全く産出せず、また珪藻試料からは、深度55m付近で内湾の影響を受けた干潟環境が推定され ている。

E以上の対比から、B−1孔とB−2孔では、火山灰組成の違いがあることやB−2孔の仏子層の層厚が薄いことなどから、B−1孔にくらべB−2孔側で浸食される状況にあった可能性が考えられる。またB−2孔で対比した仏子層の粘土層には剪断性の亀裂がかなり発達することなどから、B−2孔側が立川断層の活動による隆起で、一部は浸食されやすい条件もあったことも推定される。ただし、浸食は主に河川性の堆積物を堆積させる過程で行われたことの方が浸食条件としては大きい。ちなみに山崎(1978)のFig5の仏子層基底等高線から、今井地区のボーリング地点よりも約3〜4km東側では、その構造は約3°程度東傾斜である。この傾斜を利用すれば、今回のボーリングでの飯能礫層に対比した地層の上面で約56m以上の鉛直変位量が予想できる。

新期ローム・下末吉ローム層

所沢礫層 豊岡礫層 仏子層 飯能礫層

(2)武蔵村山市三ツ木地区

1)ボーリング結果

各ボーリング孔で採取した地質について特徴的な事項について説明するとともに、地層対比を行い、地質対比図を作成し図2−1−4−10に示した。またコア写真を添付した。各地点のボーリング結果による地質状況は次の通りである。

@ 三ツ木B−1孔

上位から地層の特徴を説明すると以下の通りである。

◎深度0.00〜2.41m(標高124.01m〜121.60m):地質;ローム層(40cm表土)

途中に火山灰質シルト混じり砂が挟在するが、全体は褐色〜淡褐色のローム層〜礫混じりローム層。深度1.63m〜2.41m間がφ1cm程度の亜円礫が混入する。

層相からみて立川ローム層の二次的な堆積物。

◎深度2.41m〜29.65mm(標高121.60m〜94.36m):地質;砂礫層

灰黄褐色〜褐色の砂礫層である。φ0.2〜5cmで最大10cmの亜円〜亜角礫を主体とする。礫種は砂岩、頁岩、チャート、花崗岩類であり、礫含有率は約60%を占める。そのうち風化礫の15〜20%程度である。基質はシルト質砂〜砂質シルトで、ツメ後がわずかにつく程度に固結している。

◎深度29.65m〜40.54m(標高94.36m〜83.47m):地質;砂・シルト互層/砂礫層

深度36.65m(標高87.36m)までは、灰色〜灰黄〜橙色の砂・シルト互層。最上位には固結下粘土層と砂層が分布する。砂層で部分的にレンズもしくはシーム状にシルトが挟在するところと、シルト層で部分的に砂をレンズ状に挟むところがみられる。いずれにしても固結よく、指圧でほとんどつぶれない。下位層準で砂の箇所に斜交葉理が認められ、また部分的に黒色の腐植物が挟在する。深度40.54mまでは橙〜黄褐色〜暗褐色の砂礫層で、上位の砂・シルト層とあわせてひとつの堆積サイクルである。砂礫層は、φ0.2〜3cmの亜円〜亜角礫を主体とし、最大5cmの礫を混入する。礫種は砂岩、頁岩、チャート、緑色岩を主体で、礫率は50〜60%程度、風化礫は45%〜80%程度占めるが上位ほど風化している。基質はシルト混じり砂〜シルト質砂で、指圧で砕ける。

◎深度40.54m〜53.20m(標高83.47m〜70.81m):地質;粘土・シルト層/砂礫層

深度42.65mまでは、黄色〜黄褐色の粘土・シルト層。上位50cm程度は塊状で堆積構造は把握できない。固結度は高い。下位になるにつれ、わずかに細〜中粒砂を含み、色調が褐色化していく。深度53.2mまでは明褐色〜にぶい黄褐色の砂礫層で、上位のシルト層とあわせて、ひとつに堆積サイクルを形成する。φ0.5〜3cmの粒径の亜円礫を主体とし、下位になるほど亜角〜角礫が主体となる。最大粒径は6cm程度である。礫種は砂岩、頁岩、チャートを主体とし、礫率は60〜80%であるが、一部粗粒砂の箇所が挟在する。基質は砂質シルトの箇所と下位になると凝灰質〜粗粒砂混じり火山灰質シルトの箇所もみられる。

◎深度53.20m〜64.68m(標高70.81m〜59.33m):地質;軽石層、シルト層/砂礫層

深度57.56mまでは、シルト層中に軽石層が挟在する。シルト層は、黄褐色の砂質シルト層〜礫混じりシルト層であり、部分的に中粒砂が挟在したり、φ0.5cm〜1cmの亜角礫が混入する。軽石層は、灰白〜暗灰黄〜にぶい黄褐色で、有色鉱物とのやや不明瞭な平行葉理が発達する。コアは固結しており、部分的に粘土化している。深度64.68mまでは明褐〜黄褐色の砂礫層で、上位の軽石層とシルト層とあわせて、ひとつの堆積サイクルとみなせる。砂礫層は、φ0.5cm〜3cm(下位ほど1cm程度)で最大6cm程度の礫がはいる、亜角〜角礫を主体とし、礫種は、チャート、砂岩、頁岩である。礫率は40〜70%で風化礫の占める割合は少ない。基質は砂混じりシルトである。

◎深度64.68m〜92.86m(標高59.33m〜31.15m):地質;火山灰層、粘土〜シルト層、砂層/砂礫層

深度82.75mまでは、ところどころに砂層が挟在するが、粘土、シルト層を主体とする。上位層との境界付近には、比較的厚い火山灰層が挟在する。また一部に軽石層が挟在する。粘土層、シルト層は、暗灰〜暗緑灰で、材片をところどころにはさみ、腐植質の箇所もみられる。全体に固結しており、爪痕がつかない箇所もある。深度82.75m〜88.13mまでは暗灰〜オリーブから暗オリーブの細粒砂で、極細粒砂の箇所も含み、やや腐植質で無構造のところと、平行葉理の発達する凝灰岩片が点在し、固結は指圧で砕け る程度のものである。92.86mまでは、オリーブ灰の砂礫層で、ここまでをひとつの堆積サイクルとする。砂礫層は、φ0.3〜3cmで最大12cmの礫が混入する亜円〜亜角礫を主体とした砂礫層で、礫種はチャート、砂岩、頁岩であり、礫質は50〜60%程度で、風化礫は含まない。基質は砂混じりシルト〜細粒砂を呈し、強指圧で砕ける。

◎深度92.86m〜112.02m(標高31.15m〜11.99m):地質;砂、シルト層/砂礫層

深度109.15mまで、暗黄褐色〜黒褐色〜褐灰色を主体とした粘土、シルト層および砂層。2カ所ほど火山灰層が挟在する。全体に固結度は高い。火山灰層付近のシルト層はやや凝灰質になっている。深度112.02mまでは、灰〜オリーブ灰の砂礫層で、ここまでひとつの堆積サイクルとした。砂礫層はφ0.2〜5cmで、最大7cmの亜円〜亜角礫からなり、礫種は砂岩、頁岩、チャートを主体とする。礫率は50%程度であり、風化礫は約20%程度を占める。基質は、砂混じりシルト層である。

◎深度112.02m以深

灰黄色〜灰オリーブ色の砂とシルト層。

A 三ツ木B−2孔

上位から地層の特徴を説明すると以下の通りである。

◎深度0.0m〜1.77m(標高128.66m〜126.89m):地質;ローム層(0.8m表土)

下位20cmは礫混じりであるが、全体は褐色のローム層。礫はφ1〜2cmの亜円礫を含む。上部は含水高く粘性に富む。

◎深度1.77m〜19.06m(標高126.89m〜109.60m):地質;砂礫層

オリーブ灰〜黄褐色の砂礫層で、一部に風化火山灰層と凝灰質砂層が挟在する。φ0.2〜4cmの亜角〜亜円礫で最大8cmの礫を混入する。礫種は砂岩、頁岩、チャートからなり、一部花崗岩類の礫を含む。礫率は、70%程度であり、風化礫の占める割合は、火山灰層より上位は10%以下、それ以深は15%程度である。基質は、シルト混じり砂である。深度13.42m〜14.31mまでの火山灰層は粘土状(石鹸状の)で固結したものと、有色鉱物を含むゴマシオ状のものがみられる。その下位は14.76mまで凝灰質細粒砂で、ややシルト分が含まれる。

◎深度19.06m〜37.80m(標高109.60m〜90.86m):地質;シルト層、火山灰層、軽石層/砂礫層

深度28.86mまでは、火山灰層、砂層、軽石層が挟在するシルト層である。火山灰層は上位の砂礫層との境界部に挟在し、ゴマシオ状を呈する。シルト層は、緑灰〜黒褐色を呈し、ところどころに細粒砂が挟在し、また、凝灰質、腐植質を呈する。かなり固結しており、また平行葉理が観察できる。軽石層は、暗オリーブ色、灰白色で、下位の砂礫層との境界部に挟在し、粘土化しており、固結し、火山灰層が挟在する。砂礫層は暗緑灰〜褐色〜黄褐色であり、途中にゴマシオ状で粘土化した軽石層が挟在する。砂礫層はφ0.2〜4cmの亜円〜亜角礫からなり、最大礫径は、約8cmである。礫率は、多いところで70〜80%を呈する。風化礫は、深度によってバラツキがあるが、多いところで70〜80%、すくないとこりで、まったくないところもある。基質は、シルト質細粒砂である。

◎深度37.80m〜50.00m(標高90.86m〜78.66m):地質;シルト層/砂礫層

深度45mまでは、比較的厚い(層厚約3m)火山灰層が挟在する、シルト層である。シルト層中には腐植土層が挟在し、ところどころに材片が点在する。シルト層はやや腐植質で構造も明瞭でない。火山灰層は風化しており、粘土化する。下位の砂礫層とのあいだに細粒砂層が挟在する。淘汰とく、柔 らかい。砂礫層は、φ0.2m〜4cmの亜角〜亜円礫が多く、礫の占める割合は、60〜70%、最大7cmの礫層である。基質は、シルト混じり砂である。

◎深度50.00m〜70.00m(78.66m〜58.66m):地質;シルト、粘土・砂互層/砂礫層

深度67.00mまでは、シルト、凝灰質砂、粘土・シルト互層、粘土・砂互層、砂・シルト互層などから構成される。全体に固結しており、炭化物を混入する。深度70mまでは砂礫層。φ0.5cm〜4cmの亜円〜亜角礫からなり、最大は5cm程度の礫である。礫種は砂岩、頁岩、チャートを主体とし、礫率は多いところで70%、少ないところで30%以下である。風化礫は含まれない。基質は粗粒砂〜シルト混じり砂である。

◎深度70.00m〜81.82m

深度79.60mまで、粘土層、シルト混じり砂、中粒砂、砂混じりシルト、貝殻混じり粗粒砂。上位層との境界部付近にゴマシオ状の火山灰層が挟在する。

深度81.82mまでは砂礫層で、φ0.5〜2cmで最大4cmの亜円礫を主体とする。

礫種は、砂岩、頁岩、チャートなどである。礫率は50〜60%程度、風化礫は約20%程度含む。基質はシルト質砂である。

◎深度81.82m以深

主にシルト混じり砂、砂混じりシルト、貝殻混じり中〜粗粒砂、シルト混じり砂、凝灰質砂、砂・シルト互層、凝灰質シルトである。色調が深度95m付近から褐色が強くなり、それより上位の青灰色と異なる。また粒度もやや砂分が多くなる。

2) 物理検層

各ボーリング孔で実施した電気検層、密度検層の結果を図2−1−4−11−1図2−1−4−11−2にまとめた。

2)−1 電気検層結果

@ 三ツ木B−1孔

三ツ木B−1孔の地質との対比を行うと次のようである。

◎比抵抗値の変化が認められるのは、深度約30.0m付近、深度70m付近までの礫層と粘土等の境界付近、及び深度90m付近から以深の同様の変化である。

◎深度30m付近までは、砂礫層が主体であり、基質の粘土化の状況や礫率の違いなどから比抵抗値にややバラツキがあるが、概ね250Ω・mの比抵抗値を示す。深度30m以深は、地質と比抵抗値の変化がよい相関を示す。礫層部で約100〜150Ω・m、粘土・シルトや固結した火山灰層は50Ω・m付近からそれ以下の比抵抗値である。

◎自然電位は、大きくみて、泥質主体の箇所は、マイナスの値をとり、礫質の堆積物は逆にプラスになる傾向が顕著である。

A 三ツ木B−2孔

三ツ木B−2孔の地質との対比を行うと次のようである。

◎比抵抗値の変化が認められるのは、全体に礫層と粘土・シルト層の境界付近であり、特に深度50mまでと、深度80m〜90mにかけてである。

◎深度50mまでは、粘土・シルト層は、約50Ω・m前後の比抵抗値、礫層で約100Ω・m程度の値を示す。50m以深では、礫層の分布も少なく、比抵抗値は大きな変化はないが、深度85m付近では極端に比抵抗値が大きい値をとる。この理由は周辺に比べてやや粗粒の砂になるためであろうが、著しく比抵抗値が変化する理由は不明である。

2)−2 密度検層結果

三ツ木B−1孔およびB−2孔の結果は次の通りである。

◎三ツ木B−1孔の値は、かなりばらつきがみられる。ただし、全体としての密度変化は、三ツ木B−1孔、B−2孔を問わず、地質状況と概ね対応している。

◎密度と地質との関係は、礫層は2.0g/cm3前後の値をとり、粘土層は1.5/cm3〜2.0g/cm3の範囲の値をとる。この結果は今井のボーリング結果と類似した結果である。

3) 採取試料の分析結果

各ボーリング孔から採取した花粉・珪藻(P−で表示)、古地磁気(M−で表示)および火山灰(T−で表示)の採取試料位置を図2−1−4−12に示した。

3)−1 花粉分析

分析結果は、表2−1−4−10−1表2−1−4−10−2に花粉化石一覧表を、また図2−1−4−13−1図2−1−4−13−2に、花粉化石分布図を示した。なお、表2−1−4−10−1表2−1−4−10−2に示したように複数の分類群をハイフンで結んだものは分類群間の区別が困難なものである。

以下に分析結果を示す。

@ 三ツ木B−1孔

◎十分な花粉化石を産出したのは、P−26、P−54の2試料のみである。針葉樹のスギ属が圧倒的な高率であり、ツガ属、トウヒ属もやや目立つ。他に、サワグルミ属−クルミ属、ハンノキ属、コナラ亜属、ニレ属−ケヤキ属など がやや目立つ。草本では、P−54でイネ科が非常に高率であり、抽水植物のサジオモダカ属が随伴する。

◎この試料では、スギ属を主体とした針葉樹からなる森林が優勢であり、落葉広葉樹も混じっていたものと思われる。しかし、照葉樹林と呼べるようなものは成立しておらず、やや寒冷で湿潤な気候であったことが予想される。

A 三ツ木B−2孔

◎針葉樹のスギ属の高率で特徴づけられる。また、ツガ属、トウヒ属も特徴 的に随伴する。サワグルミ属−クルミ属、ハンノキ属、コナラ亜属、ニレ属−ケヤキ属などの落葉広葉樹がやや目立つ。草本では、ガマ属、サジオモダカ属、イボクサ属、ミズアオイ属などの水湿地性草本が低率であるが出現する。

◎B−1孔と同様なやや寒冷で湿潤な気候であったことが予想される。

表2−1−4−10−1 三ツ木B−1孔花粉化石一覧表

表2−1−4−10−2 三ツ木B−2孔花粉化石一覧表

図2−1−4−13−1 三ツ木B−1孔花粉化石分布図

図2−1−4−13−2 三ツ木B−2孔花粉化石分布図

3)−2 珪藻分析

分析結果は下記に示す。なお、珪藻化石産出表を表2−1−4−11に、また図2−1−4−14−1図2−1−4−14−2に珪藻化石分布図を示す。

@ 三ツ木B−1孔

環境指標種群の出現傾向から、4珪藻帯に分帯される。

◎試料P−26〜54は、堆積物1g中の珪藻殻数は0〜約3.84x103個、完形殻の出現率は0〜約15%である。珪藻化石は、全く検出されないかあるいは僅かに検出される。なお、P−43では淡水種が主体であり、P−7では汽水泥質干潟指標種群や内湾種などが検出された。

◎試料P−22は、堆積物1g中の珪藻殻数は約4.13x105個、完形殻の出現率は約27%である。珪藻化石は、海水藻場指標種群のCocconeis scutellumや海水泥質干潟指標種群のDiploneis smithiiなど、あるいは内湾指標種群のGrammatophora macilentaが検出された。こうしたことから、内湾から海水干潟環境が推定される。

◎試料P−14は、珪藻化石は、全く検出されない。

◎試料P−4、10は、堆積物1g中の珪藻殻数は約2.79x105および8.29x105個、完形殻の出現率は約55%および48%である。珪藻化石は、内湾指標種群のMelosira sulcataや海水藻場指標種群のCocconeis scutellumなどが検出された。

こうしたことから、内湾から海水干潟環境が推定される。

A 三ツ木B−2孔

環境指標種群の出現傾向から、4珪藻帯に分帯される.

◎試料P−34は、珪藻化石は、全く検出されない。

◎試料P−31は、堆積物1g中の珪藻殻数は約6.47x104個、完形殻の出現率は約63%である。珪藻化石は、汽水藻場指標種群のMelosira nummuloidesなどが検出された。こうしたことから、汽水環境が推定される。

◎試料P−23は、堆積物1g中の珪藻殻数は約1.84x104個、完形殻の出現率は約43%である。珪藻化石は、少ないものの淡水種が検出され、中〜下流性河川指標種群のCymbella turgidulaなどが検出された。

◎試料P−2〜22は、珪藻化石は、ほとんど検出されない。

珪藻分析の引用文献は今井地区を参照する。

表2−1−4−11 三ツ木地区珪藻化石産出表

図2−1−4−14−1 三ツ木B−1孔 珪藻化石分布図

図2−1−4−14−2 三ツ木B−2孔 珪藻化石分布図

三ツ木B−1 三ツ木B−2

今井B−1 今井B−2

3)−3 火山灰分析

各孔での分析結果は次の通りである。

@ 三ツ木B−1孔

◎テフラ組成分析の結果はダイヤグラムにして図2−1−4−15に、火山ガラス比と重鉱物組成の内訳を表2−1−4−12および表2−1−4−13に示した。ここでは、試料30および試料26にとくに特徴的なテフラ粒子が認められた。

◎試料30には、透明なバブル型(平板状)ガラス(49.6%)や繊維束に発泡した軽石型ガラス(14%)が多く含まれている。重鉱物としては、非常に量が少ないものの、磁鉄鉱、斜方輝石、角閃石、黒雲母などが含まれている。

◎試料26には、透明で繊維束状やスポンジ状に発泡した軽石型ガラス(66.4%)やバブル型ガラス(4.8%)が多く含まれている。重鉱物としては、斜方輝石(54.4%)や単斜輝石(32.0%)のほか、黒雲母(5.6%)や角閃石(2.0%)が少量含まれている。このテフラについては、その産状から広域に分布するテフラの可能性が高いと考えられる。

◎これらの下位にある試料31の重鉱物としては、量の多い順に斜方輝石(77.6%)、単斜輝石(20.4%)、角閃石(0.8%)などが認められる。一方、上位にある試料19から6にかけては、重鉱物組成上比較的似たような傾向が伺える。含まれる重鉱物としては、いずれも量の多い順に角閃石、斜方輝石、単斜輝石である。全体として、上位のテフラほど角閃石の占める割が大きいように見える。なお試料6には、普通角閃石のほかに、カミングトン閃石が認められる。 

表2−1−4−12 三ツ木B−1孔における火山ガラス比分析結果

表2−1−4−13 三ツ木B−1孔における重鉱物組成分析結果

A 三ツ木B−2孔

◎テフラ組成分析の結果をダイヤグラムにして図2−1−4−16に、火山ガラス比と重鉱物組成の内訳を表2−1−4−14および表2−1−4−15に示した。ここでは、試料51にバブル型ガラス(19.2%)や軽石型ガラス(15.2%)が多く認められる。また試料50には、軽石型ガラスが多く含まれている(31.6%)。

試料24や08には、ごくわずかに軽石型ガラスの混入が認められる。

◎重鉱物組成では、試料57に角閃石や斜方輝石さらに黒雲母が認められる。試料51には、量の多い順に斜方輝石、単斜輝石、角閃石が含まれている。試料50には、斜方輝石、角閃石、単斜輝石がほぼ等量含まれており、ほかに磁鉄鉱が認められる。試料44、24、15、08には、量の多い順に、斜方輝石、単斜輝石、角閃石が含まれている。

表2−1−4−14 三ツ木B−2孔における火山ガラス比分析結果

表2−1−4−15 三ツ木B−2における重鉱物組成分析結果

◎屈折率測定は、示標テフラとの同定精度を向上させるために、温度一定型位相差法(新井,1972,1993)により、測定が可能と判断された試料に含まれるテフラ粒子の屈折率の測定を試みた。

◎測定結果は表2−1−4−17に示す。三ツ木B−1孔の試料30に含まれる火山ガラス(n)と斜方輝石(γ)の屈折率は、それぞれ1.500−1.501と1.717−1.755(modal range: 1.750−1.755)である。このテフラは、火山ガラスの形態や屈折率、重鉱物の組み合わせ、さらに斜方輝石の屈折率から、現在のところ更新統初頭に北アルプス穂高岳付近から噴出したと考えられている恵比寿峠火砕流堆積物(Harayama,1992など)に由来するテフラの可能性があるが、今後の検討が必要である。この火砕流に由来する降下テフラは、大阪層群中の福田火山灰(Itihara et al,1975)、魚沼層群中の辻又川火山灰(Tz,風岡ほか,1986)、東海層群中の嘉例川火山灰(吉川ほか,1988)、上総層群中の黄和田38テフラ(Kd−38,三梨ほか,1958)に同定されている(吉川ほか,1996)。このテフラの年代については、約175万年前と推定されている(鈴木ほか,1997)。しかし、この試料が上記の地質年代に対応するかはまだ、検討段階であるが、層序対比からみて、全く可能性に乏しいわけではない。なお、この試料30のテフラについては、Tzの上位にある出雲崎火山灰(Iz,菊池ほか,1983)に同定される可能性も若干ながら考えられる。

◎広域テフラの可能性が指摘されたB−1孔の試料26に含まれる火山ガラスn)の屈折率は、1.509−1.511である。この特徴的なテフラの詳細が明らかになれば、試料30のテフラの同定精度がより向上すると考えられる。

◎下位にあるB−1孔の試料31に含まれる角閃石(n2)の屈折率は、 1.698−1.708(modal range: 1.698−1.702)である。

◎重鉱物組成上似た傾向が認められた上位の試料のうち、B−1孔の試料16から07にかけてのテフラは、いずれも斜方輝石(γ)と角閃石(n2)の値が各々1.704−1.708と1.670−1.675の間に入り、非常に類似した傾向が伺える。

◎B−1孔の試料19に含まれる火山ガラス(n)、斜方輝石(γ)、角閃石(n2)の屈折率は、順に1.501−1.503、1.704−4.706、1.669−1.675で、他の試料に含まれるテフラの屈折率と若干異なった傾向が認められた。

◎B−1孔の試料06に含まれるカミングトン閃石(n2)の屈折率は、1.660−1.663である。

◎三ツ木B−2において屈折率測定を行った試料のうち、試料57に含まれる角閃石(n2)の屈折率は、1.683−1.688である。また試料51に含まれる火山ガラス(n)と斜方輝石(γ)の屈折率は、各々1.500−1.503と1.703−1.709である。

◎B−2孔の試料50に含まれる火山ガラス(n)、斜方輝石(γ)、角閃石(n2)の屈折率は、順に1.502−1.505、1.704−1.709、1.682−1.687である。試料44、24、14に含まれる斜方輝石(γ)の屈折率は、いずれの1.703−1.709の間にあり、よく似ている。

◎試料08に含まれる斜方輝石(γ)の屈折率は1.713−1.718で、ほかのテフラと比較すると高い傾向にある。

◎三ツ木B−1孔と三ツ木B−2孔のテフラのうち、三ツ木B−1孔の試料23、20、19、16、10、07と三ツ木B−2孔の試料51、50、44、24については、斜方輝石の屈折率のみをみると比較的似た傾向が伺え、対比される可能性が指摘される。

◎重鉱物組成からみると、三ツ木B−1孔のT−23とB−2孔のT−15およびB−1孔のT−31とB−2孔のT−44が類似する。

◎角閃石の屈折率では、三ツ木B−1孔の若干前者の方が後者(とくに試料50)のテフラより低いようにみえる。また火山ガラスの含有量や形態さらに重鉱物組成には違いがあるものの、火山ガラスや斜方輝石の屈折率では、三ツ木B−1の試料19と三ツ木B−2の試料51との間に類似した傾向がある。ただし、層位からすれば、やや問題がある。

◎屈折率では、B−1孔のT−19とB−2孔のT−15が類似した傾向がある。

表2−1−4−16 三ツ木地区テフラ分析試料

表2−1−4−17 三ツ木地区屈折率測定結果

火山灰分析での文献は、今井の深層ボーリングに同じである。

3)−4 古地磁気測定

測定時の結果表は表2−1−4−18にまとめた。今回はまた残留磁化解析結果柱状図を三ツ木B−1孔について図2−1−4−17に示した。さらに交流消磁における挙動を図2−1−4−18に提示した。

それぞれの測定結果表は巻末に示した。結果をまとめると次の通りである。

@三ツ木B−1孔

三ツ木B−1孔では、典型的な交流消磁挙動を示す。20mTよりも高い保磁力の残留磁化成分はいずれも逆帯磁である。低保磁力成分(20mT以下)は、いわゆる粘性残留磁化起源であり、試料周囲の磁場が反映したものと考えられる。磁性がもっとも強く、安定しているのは火山灰質粘土であり、ついで硬質粘土、シルト層の順に安定している。いずれにしても深度30m以深の堆積物としては、松山地磁気逆極性期に堆積したもの考えられる。    

4) 三ツ木地区ボーリング調査結果からの解釈

ボーリングコア観察結果および各分析結果から、三ツ木地区での解釈は次の通りである。

@コア観察結果から、三ツ木B−1孔の深度2.41m(標高121.6m)およびB−2孔の深度1.77m(標高126.89m)までは、全体にやや二次的な層相を呈しているが、新期ローム層に属すると思われる。

A三ツ木地区のボーリング地点は、立川面に対比されており、ローム層より下位は、この地域ではいわゆる立川礫層相当層の礫層が分布するが、三 ツ木B−1孔の深度30mまでと、三ツ木B−2孔深度20mまでの礫層は層厚からみて、すべて立川礫層にあたることはなく、下位層準は相模層群にあたると思われる。ただし、その境界は、層相ならびに電気検層の結果でも不明瞭である。

Bその下位層準は、何回かの堆積サイクル(礫相→砂相→粘土相)に区分されるが、挟在する粘土層の特徴や材片の混入状況および火山灰層や軽石層の挟在、逆帯磁期を示す古地磁気測定結果から、概ね上総層群(仏子層相当層を含む)に対比されると思われる。

C2点のボーリング間の地質対比図を示したが、層相の特徴や上方細粒化のサイクル等から、礫層を含めた堆積ユニットでの対比が推定できる。それは、礫層の深度で述べると、三ツ木B−1孔の深度88.13m〜92.86m(標高35.88m〜31.15m)と三ツ木B−2孔での深度45m〜50m(標高83.66m〜78.66m)の礫層、および三ツ木B−1孔の深度109.15m〜112.02m(標高14.86m〜11.99m)と三ツ木B−2孔での深度67.00m〜70m(標高61.66m〜58.66m)の礫層である。また、火山灰の組成分析の比較から、三ツ木B−1孔の試料T−23(深度8 4m)より深い位置に挟在する火山灰層の重鉱物組成は両輝石タイプであり、三ツ木B−2孔の深度65m付近での試料T−44から上位のT−8〜T−24の試料の両輝石タイプと対比が可能である。一方B−1孔での深度70m以浅の火山灰は、角閃石タイプに変わる。さらに個々の火山ガラスの屈折率では、三ツ木B−1孔のT−19(深度約70m)と三ツ木B−2孔のT−15(深度約30m)の火山ガラスが一致する。

D電気検層の結果では、B−1孔の深度90〜110m付近の比抵抗値および曲線の傾向がB−2孔の深度30〜50m付近と概ね類似している。

E花粉・珪藻分析は、三ツ木B−1孔の深度55m付近と、66.5m以深、また三ツ木B−2孔では、各深度まんべんなく分散させて試料を採取した。

花粉分析の結果は、両孔ともにやや寒冷で湿潤な気候を示す花粉化石が産出した。珪藻分析結果では、B−1孔では内湾から海水干潟環境、B−2孔では、深度70m以浅では珪藻化石はほとんど産出せず、70m以深では中〜下流性河川指標種群の淡水種が検出されている。

F火山灰分析の結果からは、B−1孔にみられる角閃石タイプの層相が、B−2孔では確認されず、その地層はおそらく削剥された可能性がある。地質対比図では、B−2孔側で地層の削剥が顕著であり、とくに三ツ木B−1孔の深度57.56m(標高66.45m)の礫層堆積以後をみると、それに対比されると思われる、三ツ木B−2孔では堆積物の層厚が極端に薄くなる傾向が読みとれる。

G平成9年度の大深度反射法探査側線に沿うように、平成10年度のボーリング地点を決定した。平成10年度のボーリング結果と反射断面図を比較すると(図2−1−4−19参照)、B−1孔付近では、深度100m付近まで、いくつかの反射面がみられるが、ほぼ水平構造である。それが、B−2孔付近になると、反射面は南側に傾斜する構造を示し、反射面が表層に上昇する傾向である。この結果は、平成10年度の2孔のボーリングを対比した結果と類似した傾向を表している。