(3)用地交渉の状況

選定した作業範囲(トレンチ実施個所および重機、残土仮置きのための範囲内)で用地交渉の対象となるのは、用地の所有者2名,使用者1名である。

今までに、当地区では2カ所のトレンチ調査が行われている。しかし、そのうちの1カ所では、掘削から10年以上経過した現在でも沈下問題が発生しており、その問題が地域の地権者にも伝わっていた。

そのせいもあり、本調査の重要性に理解を示してはいるものの、用地の提供には依然難色を示していた。地権者,使用者との話し合いの中で得られた問題となる要因を以下に示す。

・用地は排水性が悪く(沼地のような状態)、地表部を油や重機で乱すことで排水性がさらに悪化し、その後の土地の使用に影響が出る。

・トレンチの掘削により、近隣の既存トレンチと同様の沈下問題が発生するおそれがある。

・残土に混ざる腐植質土が、埋め戻し後の耕作に悪影響を与えるおそれがある。

・埋め戻し後、耕作土が落ち着くまでにはしばらく時間がかかり、その間、休耕しなければならない。

以上の点を考慮し、最大限善処した作業案を作成した。作成した作業案を関係者に提示し、再度、用地交渉に望んだ。

作業案の概要は以下の通りである。

・作業範囲内にはビニールシートを敷き、さらに敷き鉄板をすることにより保護する

・残土は全て処分し、埋め戻しには決して使用しない。

・埋め戻しには排水性を向上させるため、砂ドレンを埋設する。

・地表部には客土を厚さ1.5m程度行い、腐植質土は客土と混入しないようにする。

以上の点を考慮した作業案と、作業中の変更は事前に連絡することを借地契約書に明記した上で、地権者および使用者は用地の借用を了承し、契約を締結した(契約書は巻末に写しを示す)。