ただし、仮説の当否については、今回の調査結果からは判断できない。従って、今後は霞川低地で得られたデータを裏付けるような調査、もくしは仮説の当否を検討するための調査が必要になるものとみられるが、仮説を検討する調査はかなり大規模になると考えられるため、結局霞川低地以外で霞川低地のデータを裏付けるような調査を行うことが効果的である。
具体的には、箱根ヶ崎の狭山ヶ池付近で断層に直交する方向の断面上に多数のボーリングを配置し、年代の異なる粘土層の変化をとらえることにより、断層の活動性を把握する方法に可能性があると考える。この付近は立川断層の最も変位量の大きい部分に当たり、活動の代表であるとみなすことができる。年代測定についても、最上部は多少の改変の影響があるかもしれないが、閉塞した湿地であるため、再堆積の混入度合いは少ないものと考えられる。また、炭素同位体年代測定の結果を補足するため、帯磁率の測定を行ったうえで、火山灰の分析を実施することで年代の信頼性を向上することができる。
このような調査を行い、今回霞川低地での調査で明らかになった、埋谷堆積物の発生するサイクルと比較し、その結果を断層活動との関連を議論することが望まれる。
文献
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