5−1−1 平野部伏在断層

調査の課題で述べたように、鳴門断層南側の平野部に地質境界断層としての中央構造線が推定される。鳴門海峡の音波探査(水野ほか,1996)や板東地区での反射法弾性波探査の結果(佃・佐藤,1996)によると、この断層は活断層である可能性が高い。平野部伏在断層は鳴門市や徳島市の人口密集地近隣に分布しており、地震防災上重要な断層である。断層の位置や活動性を把握するため、後述する反射法弾性波探査等の調査を実施した。

地形地質調査では次のことが明らかになった。

空中写真判読によると、大麻町姫田から大津町段関、備前島を経て、木津野に至る沖積面上に、微高地の列がみられる。段関や姫田の詳細地形図(図5−1−2図5−1−3)に示すように、この微高地は沖積面からの比は50cmから1m程度であり、東西方向に連なっている。沖積面上にみられる旧河道と微高地の並びは斜交または直交しており、これらの微高地が蛇行河川に伴う自然堤防とは考えにくく、断層変位地形である可能性が強い。

微高地の形成時期を検討するため考古・歴史資料を収集した。大麻町姫田の微高地には縄文早期〜中期の森崎貝塚があることから、姫田では縄文早期〜中期には微高地は形成されていたと考えられる。段関や備前島には考古資料はないが、微高地周辺の水田は天正年間(1571〜1591年)に新田開発されたといわれており、おそくとも16世紀以降には微高地が形成されていたと考えられる(板野郡史、鳴門市史)。

既存ボーリング資料によると、沖積低地では微高地から南側では和泉層群基盤は確認されていない。姫田東側の高架橋ボーリング資料(図5−1−4)ではNo.57−P4から南東側で基盤の深度が急激に深くなっている。No.58−P2では深度80.6mでも和泉層群基盤を確認していない。国道11号バイパスボーリングでも微高地から南側では基盤は確認されていない。したがって、微高地南側の低崖は断層変位地形である可能性が強い。

これらの結果から、鳴門断層南側の沖積低地に伏在断層が分布することはほぼ確実と考えられる。また、沖積低地上の断層変位地形であり、ごく最近活動した可能性が高い。今後、沖積低地でのトレンチ掘削調査やボーリング調査により、最新活動時期や活動間隔を把握する必要がある。