(4)調査結果

鳴門市から池田町にかけて収集したボーリング資料より、断層の位置や変位量を検討する資料として有益な資料を整理し、@−@’からO−O’までの地質断面図を作成した。

@−@’地質断面図(鳴門市大津町備前島)(図3−2−2

国道11号バイパス沿いのボーリング資料である。大津町備前島にみられる微高地の延長線から北側のボーリングでは和泉層群基盤を確認している。和泉層群基盤は北側から南側に緩く傾斜しており、その深さは7〜39mである。ボーリングS53−3付近には基盤の谷地形がみられる。一方、微高地から南側ではボーリングの深度が浅く、和泉層群基盤を確認していない。

地質構成は上部から最上部粘土層、沖積上部層、中部層、下部層、上部洪積層からなる。その厚さは最上部粘土層が2〜3m、沖積上部層が15〜18m、中部層が2〜6mである。中部層ではアカホヤ火山灰層は確認されていない。

A−A’地質断面図(鳴門市大麻町姫田)(図3−2−5

JR鳴門線から北西側のボーリングでは和泉層群の基盤は深度9.85〜23.88mで確認しているが、南東側のボーリングでは深度80.6mでも和泉層群基盤に達していない。したがって、JR鳴門線付近(ボーリングNo.57−P4とNo.58−P2間)に断層が推定される。沖積層は断層を境として、北西側に対して南東側が落下している。アカホヤ火山灰層は分布しておらず、断層の変位量は明らかでないが、沖積上部層下底面の変位量は約10mである。

B−B’地質断面図(鳴門市大麻町姫田〜松村)(図3−2−6

JR鳴門線から南西側のボーリングNo.43号鉄塔〜No.49号鉄塔では、深度14〜17m付近にアカホヤ火山灰層が分布している。アカホヤ火山灰層は沖積上部層と下部層の境界に分布し、その厚さは0.5〜2.5mと変化するが、ほぼ水平に堆積している。沖積中部層の粘土層は分布していない。

一方、JR鳴門線北東側のボーリングNo.50号鉄塔ではアカホヤ火山灰層は分布していないが、アカホヤ火山灰層が沖積上部層と下部層の境界に分布すると考えれば、ボーリングNo.49号鉄塔とNo.50号鉄塔の間に断層が推定される。沖積上部層下底面の変位量は約3.7〜4.3m、上部洪積層上面の変位量は約9.3mである。

また、既存ボーリングから推定される断層位置と、空中写真判読による、微高地の位置はほぼ一致する。

C−C’地質断面図(板野町川端)(図3−2−10

板野町川端では、S波反射法探査とボーリング調査が実施されている。S波反射法探査によると、山地と沖積低地の境界付近に断層が推定され、水野・岡田ほか(1993)による鳴門断層の位置とほぼ一致している。和泉層群基盤の落差は40〜50mで、断層南側のボーリングでは、深度11〜12mにアカホヤ火山灰層が認められる。

D−D’地質断面図(板野町犬伏)(図3−2−11

西北西の山側のボーリングでは深度14〜16mで和泉層群の基盤を確認しているが、その東南東では深さ44mのボーリングで基盤を確認していない。基盤の落差から断層が推定される。また、断層付近で沖積最上部層の落ち込みが認められる。

E−E’地質断面図(脇町東田上)(図3−2−14

美馬郡脇町の山麓丘陵地をとおる田上断層は和泉層群と三波川帯結晶片岩の境をなす狭義の中央構造線であり、また、地形的に尾根や河谷に明瞭な右ずれ屈曲がみられ、活断層とされている(岡田,1970,1978・槙本,1968)。

この断層を境として、土柱礫層に三波川帯結晶片岩が衝上しており、道路公団ボーリング資料でも、B2−1−3では深度4.6mで、B2−1−4では深度19.4mで三波川帯結晶片岩の下位に土柱礫層が確認されている。

F−F’地質断面図(脇町岩倉)(図3−2−16

道路公団ボーリング資料によると、井口断層南側のボーリングB1−8−1で和泉層群基盤を確認しているが、B1−8−2には土柱層が分布しており、和泉層群が土柱礫層に衝上する断層が推定される。

G−G’地質断面図(脇町井口東)(図3−2−17

ボーリングB2−8−5では、深度4.0mで和泉層群に達するが、10.8m以深では土柱層が分布している。したがって、井口断層南側に和泉層群が土柱層に衝上する低角度断層または地すべりが存在することが推定される。

H−H’地質断面図(三野町太刀野東)(図3−2−20

太刀野東地区の大規模な土砂採取地では、三野断層の断層露頭が確認されている(岡田・堤,1990)。断層の走向傾斜はN80°E,90°で、和泉層群破砕帯に三波川帯結晶片岩の破片が細長く取り込まれている。また、三野断層南側に土柱礫層に和泉層群が衝上する“芝生衝上”がとおるとされている(中川・中野,1964a)。徳島自動車道の工事により、土砂採取地の断層露頭は消滅しているが、切土法面に新たな断層露頭が出現している。結晶片岩破片を取り込んだ和泉層群破砕帯と、さらにこれを切る断層がみられる。前者の断層の走向傾斜はN84°E,80°Nであり、後者はN48°E,84°NWである。

河内谷川を横断する道路公団ボーリング資料によると、和泉層群の下に礫層が分布しており断層が推定される。ボーリングの並びの南側を三野断層がとおると考えられる。

I−I’地質断面図(三野町太刀野東)(図3−2−21

河内谷川右岸側の低位段丘1には太刀野山の低断層崖がある。その延長線上のボーリング資料では最上部の礫層が変位している。ボーリング箇所は沖積扇状地より5〜6m高く、段丘面をなしている。周辺の地形から低位段丘2礫層が小規模に分布している箇所に相当すると考えられる。低位段丘2礫層の変位量は約7.2mである。ボーリング資料から推定される断層位置は、太刀野東地区の断層露頭と太刀野山低断層崖を結ぶ延長線上にある。

J−J’・K−K’地質断面図(三野町太刀野)(図3−2−24図3−2−25

道路公団ボーリング資料によると、池田断層南側で土柱礫層に和泉層群が衝上している。切土法面の観察では、地表面付近は和泉層群破砕帯と礫層が混在した地すべり性の堆積物であるが、地山深部では礫層と和泉層群は断層で接しているものと考えられる。断層の傾斜は約20°である。三野断層はこの低角度断層の北側をとおるものと考えられる。

L−L’・M−M’地質断面図(三野町西久保)(図3−2−26図3−2−27

太刀野地区西側では池田断層は山麓部をとおるが、沖積扇状地で基盤の深さが急激に落ち込んでいる。三野断層は山地と沖積扇状地の境界をとおっていると考えられる。

N−N’地質断面図(池田町シンヤマ)(図3−2−30

池田町市街地西側では徳島自動車道のトンネルが掘削されている。道路公団ボーリング資料によると、和泉層群地すべり移動岩体下位に厚さ10〜20mの礫層が分布している。水平ボーリングによるとその下位は三波川帯結晶片岩からなる。

O−O’地質断面図(池田町白地〜イタノ)(図3−2−31

北西側のボーリング池基B−4,池基B−1では深度2.6〜9.2mで、現河床堆積物の下位に基盤を確認しているが、南東側のボーリングB1−3では現河床堆積物の下位に湖沼堆積物が分布しており、その下位は結晶片岩破砕帯である。湖沼堆積物は下位から上位に、粘土層、砂層、砂礫層からなり、層厚は25〜30mである。池田市街地西方のボーリングでも低位段丘礫層下位に湖沼堆積物が確認されており、この地層にはメタセコイアの花粉が含まれている(岡田,1991)。したがって、湖沼堆積物は土柱層相当層と考えられている。これらの資料からボーリング池基B−1とB1−3の間を池田断層がとおると推定される。ボーリング資料から推定される断層の位置は、ストリップマップ(水野・岡田ほか,1993)の断層位置よりもやや北側となる。