(1)地形・地質調査結果
図3−2−24に調査地付近の地表踏査結果図を示す。
室野地区は、入山断層とほぼ平行に南流する由比川と、その支流である桜ノ沢川が合流する箇所である。
由比川流域には数段の段丘面が発達していることから、これらの段丘堆積物と入山断層の関係を把握することを目的として調査地を選定した。
調査地では明瞭な断層崖と考えられるような崖地形は認められないが、調査地北方の山内地区では、調査地と同じ低位段丘面中ににやや開折をうけた高さ約8mの崖地形があり、さらにその南側の沢の崖錐堆積物(段丘堆積物?)の堆積面にも不明瞭ながら約2mの崖地形が認められる。
断層活動によるものかどうかは不明であるが、山内地区北の支流に、段丘堆積物と蒲原礫層が正断層で接する露頭が認められる(断層露頭番号
図3−2−25に調査地付近の平面図を示す。
(2)比抵抗映像法探査結果
図3−2−26に比抵抗映像法結果図を示す。測線位置を図3−2−25に示す。
段丘堆積物の砂礫と推定される100Ω−m以上の部分が、深度約30mまで認められる。その高比抵抗部の基底に測点38m付近で標高差が認められることから、ここを断層位置と推定した。
(3)ボーリング調査結果
入山断層推定位置東側の基盤岩の上面標高を確認する目的で、MN−1(測点46m、L=28m)を実施した後、追加調査としてMN−2(測点74、L=40m)を実施した。ボーリング位置を図3−2−25に示す。
なお、調査結果はボーリング柱状図とボーリングコア写真に整理し、別冊資料集に添付した。
図3−2−25 室野地区付近の地表踏査結果図(縮尺1/2,500)
図3−2−26 室野地区比抵抗映像法結果図(縮尺1/500)
図3−2−27−1、図3−2−27−2にボーリング柱状図を示す。
ボーリング調査の結果、段丘堆積物とその基盤岩を確認した。
段丘堆積物は、径2〜15cm程度の円礫と浜石岳層群起源の巨礫を多く含む暗褐色砂礫からなる。
また、基盤岩はMN−1で浜石岳層群の泥岩、MN−2で浜石岳層群の泥岩の破砕帯であった。
図3−2−27−3に調査地付近の推定地質断面図を示す。
MN−2で断層破砕帯が確認され、入山断層はこの位置付近にあると推定される。桜ノ沢川南岸に認められる露頭での蒲原礫層の上限標高は約85mであるため、ボーリングで確認された浜石岳層群の上限標高との標高差は、最大でも約8mであることが確認された。
(4)トレンチ調査結果
トレンチ調査は、断層直上の堆積物の性状を直接確認することを目的として実施した。
図3−2−28にトレンチのスケッチ図を示す。なお、スケッチ図と写真は別冊資料集にまとめて添付した。
トレンチ内の地質は、風化した浜石岳層群の巨礫を含む砂礫層からなり、断層面や断層活動に伴うような地層の変形等は認められなかった。また、段丘堆積物の上位にロ−ム層も分布せず、段丘面の時代についても特定できるような堆積物は認められなかった。
(5)試料分析
前述した山内地区北の断層露頭に認められる段丘堆積物中に、礫混り粘土の薄層が認められたため、それから採取した試料を用いて微化石分析を
行ったが、堆積年代を示すものは認められなかった。
(6)まとめ
比抵抗映像法探査とボーリング調査結果から、調査地での入山断層の位置が確認され、低位段丘堆積物の基底に最大8mの変位があることが把握された。また、ボーリング調査とトレンチ調査から、低位段丘堆積物の層相が把握されたが、この堆積物の堆積年代を特定するような地質は認められなかった。
図3−2−27−1 室野地区ボーリング柱状図(MN−1)
図3−2−27−2 室野地区ボーリング柱状図(MN−2)
図3−2−27−3 室野地区付近の推定地質断面図(縮尺1/500)
図3−2−28 室野地区トレンチスケッチ図