(3)富士川町山田地区

本調査地では、安居山断層南方延長部の断層の有無、また、ある場合はその新期の活動の有無を把握する目的として、比抵抗映像法探査75mとボーリング調査1孔(YA−1、L=15m)を実施した。

(1)地形・地質調査結果

図3−2−13に調査地付近の地表踏査結果図を示す。

調査地付近は、富士川以北の明瞭な急崖の連続からなる安居山断層の南方延長にあたり、安居山断層同様、急崖が連続しているとこが判読されるリニアメントである。

調査地南西方には、傾斜10〜20゚の緩斜面であり、その末端に高さ約15〜20mの急崖が認められる。

仮に、安居山断層が、富士川南方へ連続する場合には、この急崖が断層崖である可能性があると判断して、調査地を選定した。

調査地付近の地質は、岩淵安山岩類と崖錐堆積物しか認められないため、比抵抗映像法探査とボ−リング調査を実施し、基盤岩上面の状況を把握することとした。

(2)比抵抗映像法探査結果

図3−2−14に比抵抗映像法結果図を示す。

測点30m付近が地形から断層位置と推定された地点である。

比抵抗値の分布が、測点30m付近と測点60m付近を境に比抵抗値のパタ−ンに違いが認められる。

したがって、断層の位置は測点30m付近と推定される。

また、地表付近の50Ω−m以下の低比抵抗部は崖錐堆積物と推定されるが、この境界の標高に測点30m付近で差が認められる。

(3)ボーリング調査結果

測点45mでボ−リング調査(YA−1、L=15m)を実施した。

図3−2−15−1にボーリング柱状図を示す。

ボ−リング調査結果では、崖錐堆積物は約3mと薄く、それ以深は風化が著しい岩淵安山岩類の凝灰角礫岩が分布する。

図3−2−15−2に調査地付近の推定地質断面図を示す。

図3−2−13 山田地区付近の地表踏査結果図(縮尺1/2,500)

図3−2−14 山田地区比抵抗映像法探査結果図(縮尺1/500)

図3−2−15−1 山田地区ボーリング柱状図(YA−1)

図3−2−15−2 山田地区推定地質断面図(縮尺1/500)

(4)まとめ

地形・地質調査結果および比抵抗映像法探査結果から、断層が推定された位置は、測点30mないし測点60m付近である。

ボ−リング調査結果から、測点30m付近に認められた約50Ω−m以下の低比抵抗部の標高差は、崖錐堆積物はなく岩盤の局所的な強風化部が原因であることが確認された。

したがって、推定された断層位置では、崖錐堆積物の基底面に数mオーダーの比高差は認められない。

このことから、この測線内に安居山断層がある場合は、この崖錐堆積物には変位を与えていないとものと推定される。