(3)海上音波探査

(1)探査方法

海上音波探査は、富士川河口断層帯の海域部の延長位置を把握することを目的として、由比町沖〜富士市沖の駿河湾内で実施した。

探査方法としては、海底下100m程度までの浅層部構造の把握を目的としたシングルチャンネル音波探査と、海底下200〜300mまでの深部構造の把握を目的としたマルチチャンネル音波探査の2種類を実施した。

探査の実施に当たっては、表2−3−4に示すように、それぞれ数種類の機器を用いてテスト走行を行って最適な機器を選定した。

表2−3−4 海上音波探査使用機器

テスト走行の結果、震源としては、シングルチャンネル音波探査ではスパーカーが、マルチチャンネル音波探査ではGIガンが最適であったため、それぞれを用いて本測定を実施した。

なお、スパーカーによるシングルチャンネル探査においては発振エネルギー1,000、3,500、8,000ジュールでテスト測定を行い、最も記録状況の良好な3,500ジュールで本測定を実施した。

図2−3−7に、それぞれシングルチャンネル探査とマルチチャンネル探査の概要図を示す。調査船の誘導は、ディファレンシャルGPSを用いて行った。なお、探査位置の測量記録を別冊に添付した。

図2−3−7 海上音波探査概要図

表2−3−5に、探査仕様をまとめて示す。

表2−3−5 海上音波探査仕様

(2)解析方法

1)シングルチャンネル音波探査

シングルチャンネル音波探査によって得られた記録は時間断面図である。解析にあたっては地盤の音波速度を 1,500m/secと仮定して深度断面に変換し、反射面の連続性に着目して地層構造の解釈を行った。

2)マルチチャンネル音波探査

図2−3−8にマルチチャンネル音波探査の解析処理フローを示す。

図2−3−8 マルチチャンネル音波探査解析処理フロー

○前処理

データ処理の前段階として、以下の波形処理を行った。

・TAR,AGC:反射波の減衰の補正、および深部からの微弱な反射波を自動的に増幅させる処理。

・バンドパスフィルター:周波数フィルターにより不要な信号を除去。

今回は10〜250Hzのフィルターを用いた。

・デコンボリューション :反射波の分解能を上げ多重反射波等を除去。

○CDP(共通反射点)編集

CDPごとに波形データを編集した。

○速度解析

定速度重合法により、反射波の速度を一定とし波形重合を行って最も反射位相の並びの良い重合速度を決定した。

○NMO補正

波形データを重合するために、各データの発振点と受振点の走時の差を補正した。

○CDP重合

NMO補正後のすべてのCDPごとのデータを足し合わせた。

○マイグレーション

真の地下構造を表すために反射面の位置を移動させて実際の傾斜および位置を復元する処理。

○深度変換

時間断面から重合速度をもとに深度軸に変換した。

得られた断面図から地層構造の解釈を行った。解釈にあたっては、陸上における既存地質資料および調査結果、さらに海域における既存の海上保安庁水路部による音波探査結果を参考とした。