比抵抗映像法は、比抵抗法電気探査のうち、二極法と呼ばれる電極配置で測定を行い、解析にコンピュ−タを用いることによって、測線下の比抵抗分布をカラ−の2次元断面として得ることができる方法である。
(1)測線設定
図上で計画した測線を現地に設定するため、探査に先立ち測量を行う。測線は、現地調査や空中写真判読によって断層が推定される箇所から代表箇所を選定し、原則として断層の推定位置と直交する方向に測線を設定した。
測線位置には、測量によって水平2m間隔に板杭(5cm×1cm×40cm)を設置した。測量には、トランシット、レベル、スタッフ、ポ−ル、測量テ−プ等を用いた。
表2−3−2に探査の数量を示す。
表2−3−2 比抵抗映像法探査数量 ※最大電極間隔は、最大探査深度に相当する
(2)測定方法
比抵抗映像法の現地における測定方法は、従来より水平探査に用いられている2極法と呼ばれる電極配置を用いている。
図2−3−4に二極法の電極配置および測定の概要図を示す。
通常、電気探査では、各々2本ずつの電流電極と電位電極を使用するが、二極法ではこのうち、電流電極と電位電極のそれぞれ一方の極を無限遠と考えられる遠方に固定設置する。そして、他の電流電極と電位電極の2極を移動しながら測定を行う。
図2−3−4 二極法電極配置および電気探査測定概要図
表2−3−3に測定に用いた機器の仕様を、図2−3−5に測定の手順をついて示す。
測定には、スタッキング(信号重合)によりS/N比の改善が可能な探査装置を用い、測定時には、デ−タのばらつきに応じて最大4回のスタッキングを行う。
測定の手順を以下に示す。
@測線外の十分離れた地点(一般に測線の端部から外側に探査深度の10倍 以上、今回は 300m程度離した)に、遠電極として電流電極(C2)と電位 電極(P2)を設置し、ケ−ブルで電気探査装置(電探器)に接続する。
A図2−3−4に示したように測線上の2m間隔の測点杭の位置に電極を設置し、テイクアウトケ−ブルを用いて、測定本部のコネクタ−ボックス〜電探 器に接続する。
B測定は、まず電流電極(C1)を固定し、C1・C2間に通電する。そして、そこから水平5m間隔の電位電極(P1〜Pn)と遠電極(P2)との間の電位差を順次測定し、最大電極間隔(目標探査深度200m)まで繰り返す(第一展開)。C電流電極(C1)および電位電極(P1〜Pn) をそれぞれ、2mずつ移動して同様の測定を行う(第二展開)。
D以上の@〜Cの作業を測線全体にわたり繰り返す。なお、測定の際の電極の切り替えは、電探器により自動的に行われる。
表2−3−3 比抵抗映像法の使用機器一覧表
図2−3−5 電気探査(比抵抗映像法)の測定手順と探査範囲の概要
(3)解析方法
電流電極間に電流I(A)を通電し電位電極間で電位差△V(V)を測定すると地下の比抵抗ρa は次の式で表される。
Ρa =K*ΔV/ I・・・・・・・・・(a)
ここにKは電極配置によって決まる係数で二極法では電極間隔をa(m)とすると、
K =2πa ・・・・・・・・・(b)
で表わされる。
(a) 式によって得られる比抵抗ρa は深さaまでの平均的な地下の比抵抗を反映しており、地下構造の大局的な様子を示している。この意味でρa を見掛け比抵抗と呼ぶ。
山地では測線を平坦部に設定できないことが多く、測定値には地形の影響が含まれ、そのままでは地下の比抵抗構造を判断できない場合が多い。そこで、解析にあたっては地形補正を施す必要がある。これには有限要素法によるシュミレ−ションを実施し、地形が平坦な場合を補正係数=1として、平坦でない場合には地形の起伏に応じて電流の流れる体積の増減に応じて補正係数を求め、2次元断面上におけるデ−タの補正を行う。
次にこの補正を行った見掛け比抵抗値により擬似断面図を作成する。この断面図は、地表面下の平均的比抵抗値の概略分布状況を反映した擬似断面図であり、この図から真の比抵抗分布を把握するには、一般に熟練を要する。
そこで、真の比抵抗分布図を得るため、二次元自動解析を適用する。この解析でははじめに、前述した見掛け比抵抗値により、地下構造の初期モデルを作成する。
次に、このモデル構造から理論的に計算される見掛比抵抗を求め、その理論値と測定値との差を用いてモデル構造を修正する。
そして、その差が最も小さくなる構造を得るまで繰返し計算を行い、最終的な比抵抗分布図を作成する。
以上の解析手順を図2−3−6に示す。
図2−3−6 電気探査(比抵抗映像法)解析手順