(2)新期の堆積物と断層との関係

新期の堆積物と、断層との関係が認められる箇所を表3−3−2に示す。

以下に、各箇所の状況について記す。

@芝川溶岩流出後の段丘堆積物に、約5mの上下変位が認められる。

崩積土の分布状況から1回の断層活動が確認される。この崩積土が富士黒土層(約7,500年前)を覆い、さらに黒ボク土(約4,800年前)に覆われていること から、その活動は約7,500〜4,800年前と考えられる(図18参照)。

A山崎他(1981)によれば、断層両側の芝川溶岩上面は標高差が約20m、また古富士泥流堆積物上面は標高差が約50m認められる。

B羽鮒トレンチ壁面および、ボーリング試料による地質状況から、芝川断層の活動は確実なもの(確実度T)が2回確認でき、その他に、ほぼ確実なもの(確実度U)が1回、推測できるもの(確実度V)が1回の、計4回の活動を判読することができる(図19図20参照)。

図17 芝川断層ストリップマップ(縮尺1/25,000)

図18 大久保地区トレンチスケッチ図

図19 羽鮒地区トレンチ展開図

図20  羽鮒地区トレンチスケッチ図(北壁)

図20−2 羽鮒地区トレンチスケッチ図(西壁)

図20−3 羽鮒地区トレンチスケッチ図(南壁)

羽鮒地区で認められた芝川断層の活動は以下のとおりである。

1回目:約13,500〜18,500年前 [確実度V]

層相が腐植土からシルトに変化し、堆積条件の変化が推定されるとともに、約13,500〜18,500年前の地層が欠除している。

2回目:約8,200〜10,000年前 [確実度U]

トレンチ西壁に認められる約10,000年前の地層がトレンチ南壁で欠如しており、ボーリング試料での地質年代測定でも、約8,200〜12,000年前の地層が欠除している。

3回目:約5,300〜7,600年前 [確実度T]

トレンチ壁面において、約8,200〜7,600年前の腐植土を約5,300〜4,500年前の地層が傾斜不整合で覆っている。

4回目:約2,900〜4,500年前(約3,000年前?)[確実度T] 

副断層が約4,500年前の地層を不整合に覆う砂礫に変位を与えており、 約1,500年前の黒ボク土には変位を与えていない。また、崩積土は断層活動に伴うものと考えると、その直上に大沢スコリア(約2,900〜3,000年前)が密集することから活動時期は、約3,000年前と推測される。

前述した大久保地区での調査結果では、3回目の活動のみ確認され、4回目の活動は認められていない。これは、大久保地区のトレンチでは、この時代の堆積物は耕作土(茶畑)中にあたり、トレンチ掘削時の表土掘削の際に失われてしまった可能性が高いと考えられる。

変位量は副断層のみで確認され、垂直変位量は約3.0mである。また、平均変位速度は、ボーリングHA−1とHA−4で確認された姶良丹沢火山灰(AT:約2.2〜2.5万年)の標高差が約50mであることから、50m÷(2.2〜2.5万年)=2.0〜2.3m/103年となる(図21参照)。