3−3−2 断層の構造

地形地質調査の結果、関ヶ原断層として判読された断層変位により形成されたと考えられる地形の連続線上及び近傍で、第三紀鮮新世〜第四紀更新世の東海層群を変位させている断層露頭3箇所(Sk3,Sk5,Sk19)と確実に変位させていると考えられる近接露頭1箇所(Sk7)の合計4箇所の露頭が確認された。

Sk19については、断層のセンスから判断し、宮代断層と考えた。

露頭の記載を以下に示す。

A) 露頭名Sk3

伊吹町藤川地区でみられた断層露頭Sk3は、杉山ほか(1994)「柳ヶ瀬−養老断層系ストリップマップ」に示された断層露頭である。

地形調査により断層変位地形の連続として推定されたF−3断層線上に位置している。

ここでは、東海層群に衝上した中・古生層(美濃帯)が確認され、走向N78°W,北傾斜の低角(傾斜22°N)逆断層が確認された。この露頭では、衝上した中・古生層(美濃帯)が数十メートル以上にわたり破砕されており垂直成分に卓越した断層であることを示している。東海層群の極端な変形(断層近傍での地層の急傾斜・直立や小断層の形成)は認められない。ストリエーション(断層の活動方向を示す系統的な条線)は観察できなかった。

B) 露頭名Sk5

関ヶ原町玉地区でみられた断層露頭Sk5は、北側に東海層群の砂礫・シルトの互層が分布し、N20°W,63°Nの断層面を挟んで、南側には美濃帯の砂岩・泥岩が分布している。

地形調査により断層変位地形の連続として推定された断層線上に位置せず、F−3断層線の南側400m地点にあたる。

断層面には未固結の断層粘土が確認されている。断層は上位の砂礫層に覆われ、この基底を変位させていない。砂礫層は地形区分から低位段丘U堆積物、もしくはこれをわずかに削り込んだ堆積物であると考えられるためこの断層の完新世の活動はなかったと考えられる。この断層は東海層群と美濃帯の境界となっているが、これより南の地域にも東海層群が分布しており、この断層は北落ちの正断層として活動した可能性が高い。ストリエーション(断層の活動方向を示す系統的な条線)は観察できなかった。

C) 露頭名Sk7

関ヶ原町玉地区でみられた断層露頭Sk7は、中・古生層中の断層露頭である。

地形調査により断層変位地形の連続として推定されたF−3断層線付近に位置している。Sk7の下流側には東海層群と中・古生層の近接露頭(Sk8)が存在しており地質境界となる境界断層がSk8付近に推定される。Sk7は境界断層の活動により派生した断層及び破砕帯の一部をみているものと考えられる。

断層露頭では、3条の暗灰色の断層粘土が確認された。断層粘土の走向傾斜は、N50°W,70°Nである。

この付近では、破砕された中・古生層や中・古生層中の小断層を多くみることができる。

D) 露頭名Sk19

垂井町宮代地区の南宮神社の南西約500m地点の断層露頭Sk19では、東海層群中に小断層がみられる。

地形調査により断層変位地形の連続線上に位置している。

断層面の走向傾斜はN41°W,80°Sである。宮代断層のセンスと整合的である。ストリエーション(断層の活動方向を示す系統的な条線)は観察できなかった。

これらのうち、Sk3とSk7は、断層変位地形の連続として追跡可能な関ヶ原断層(F−3)であると考えられ、北傾斜の逆断層であり、断層線以北には東海層群が分布せず境界断層となる。

Sk5も北傾斜の断層であり、これより南側にも東海層群の分布が認められることから、関ヶ原断層の派生断層であると考えられる。

反射法では、山地前縁の低地部に、東海層群の基底と考えられる反射面にずれが認められ、ずれの位置に伏在断層が推定された。伏在断層のセンスは東海層群基底と考えられる反射面のずれ、及び東海層群中の反射面のずれにより、北傾斜の逆断層であると推定される。

ボーリング調査では、B−2(掘削深度32m)により、深度9m以深から孔底まで23m以上の破砕帯を確認しており、逆断層が推定される。

以上を総括すると、今回の調査により得られた関ヶ原断層のセンスは北傾斜の逆断層(北側の地層が隆起)である。