空中写真判読および現地踏査による確認の結果、断層変位地形の概要は以下のようにまとめられる。
・断層変位地形の分布は、大局的には高月町高野〜伊吹町吉槻にかけての鍛冶屋断層、浅井町醍醐〜伊吹町伊吹にかけての醍醐断層、伊吹町弥高〜関ヶ原町秋葉にかけての関ヶ原断層、関ヶ原町野上〜養老町橋爪にかけての宮代断層の4系統に大別される。
・鍛冶屋断層は直線状の谷、尾根・谷の屈曲、断層鞍部などの変位地形として地表面に現れている。空中写真判読で確認できる断層の長さは約10kmである。尾根・谷の屈曲は全て50〜100m程度の左横ずれを示すが、垂直方向の変位はほとんどみられない。なお、断層変位との直接的な関係は不明であるが、浅井町鍛冶屋ではL1面上 で直線状の谷の延長線上にあたる箇所に直線的な浅い谷が形成されている。
・醍醐断層は、伊吹山地西麓の山脚末端部が開析された三角末端面となっていることからその存在が推定される。三角末端面は、浅井町小野寺付近では北−南方向に配列しているが、浅井町今荘付近から徐々に方向をかえ、伊吹町伊吹付近ではほぼ東−西方向となっている。空中写真判読で確認できる断層の長さは約7kmである。山側が相対的に隆起しており、現在の地形のみから判断すると横ずれの変位量は小さい。山麓部には小さな河川によって形成された扇状地がみられるが、これらは隣接する扇状地と互いに重なり合いながら山麓部の広い範囲を埋め立てている。このため、醍醐断層の古い時代の活動の痕跡を地形から求めることは困難であるが、扇状地にも断層変位地形が認められないことから、少なくとも最近数千年間程度は活動していないと考えられる。
・関ヶ原断層は、尾根・谷の屈曲、断層鞍部、閉塞丘、三角末端面などの断層変位地形によって存在が推定できる。空中写真判読で確認できる断層の長さは約8kmである。断層に沿う尾根・谷の屈曲は全て50〜200m程度の左横ずれを示し、垂直的には北部山地が相対的に隆起しているようである。推定断層線は数ヶ所で沖積面、段丘面を 横断すると考えられるが、これらの地形面に断層変位地形は認められない。関ヶ原町笹尾山付近から秋葉付近にかけては閉塞丘が連続し、断層鞍部や尾根・谷の屈曲など断層変位地形が特に明瞭である。
・宮代断層は、低断層崖・撓曲崖によって存在が推定される。垂井町宮代付近では北西−南東方向に伸びているが、南部では北−南の方向性を持っている。空中写真判読で確認できる断層の長さは約6kmである。宮代付近の撓曲崖では、L2面の上下変位量が4mであるのに対し、L1面の変位量が8mであることから(杉山ほか(1994))、 変位の累積性が認められる。L1面とL2面の形成年代は0.5〜1.5万年の時間差があることから、単純に考えると宮代断層の平均変位速度は0.8〜0.27m/1,000年程度であると推定される。
2)変位地形の分布と性状
各地域に分布する変位地形について、写真判読結果および地表踏査結果を加味し、図2−2−2−2−1、図2−2−2−2−2に記される番号に対応してまとめたものを変位地形一覧表として表2−2−2−4−1、表2−2−2−4−2、表2−2−2−4−3にまとめた。表2−2−2−4−1〜3には、活断層研究会(1991):「新編日本の活断層」及び杉山ほか(1994):「柳ヶ瀬−養老断層系ストリップマップ」の記載事項も併せて示した。以下に各地点の断層変位地形の概要を記す。
図2−2−2−2−1 断層変位地形分布図(1/2)
図2−2−2−2−2 断層変位地形分布図(2/2)
表2−2−2−4−1 断層変位地形一覧(1/3)
表2−2−2−4−2 断層変位地形一覧(2/3)
表2−2−2−4−3 断層変位地形一覧(3/3)