既存資料調査では、活断層研究会（１９９１）：「新編日本の活断層」−分布図と資料−，杉山ほか（１９９４）：柳ヶ瀬−養老断層系ストリップマップに、左横ずれ断層としての分布が示されている。

「柳ヶ瀬−養老断層系ストリップマップ」では、その根拠として、河川の屈曲５０〜１００ｍ，河谷の屈曲が１５０〜２００ｍを示している。活動性に関する記載は認められない。

活動性に関しては、「新編日本の活断層」で活動度Ａ〜Ｂと示してある。平均変位速度の記載はない。

地形地質調査の内、地形調査の結果では、関ヶ原断層は、関ヶ原断層帯を構成する４つの断層（鍛冶屋断層，醍醐断層，関ヶ原断層，宮代断層）の中で最も変位地形が明瞭であり、閉塞丘の連続や河川・尾根の屈曲の断層変位地形の連続として、左横ずれ断層の存在が推定された。関ヶ原断層に伴う断層変位地形の連続は、１条ではなく部分的に２・３条の雁行状に６条（Ｆ−１〜Ｆ−６断層）分布することが明らかになった。

地質調査の結果、第四紀の地層が切られる露頭は、県境（岐阜県と滋賀県）から玉地区にかけての３箇所のみであった。断層の分布は、東海層群と美濃帯の近接，断層変位地形の連続周辺の中・古生層（美濃帯）中の小断層や破砕帯の分布により、第四紀層（東海層群）を変位させている断層としてその分布が確認された。

活断層研究会（１９９１）で宮代断層の南側に示されている関ヶ原断層については、逆断層露頭が発見された。この逆断層露頭では、断層面が南傾斜を示す逆断層であり、北傾斜の逆断層である関ヶ原断層とは断層のセンスが異なり、宮代断層のセンスと同一のため宮代断層と考えることとした。

反射法弾性波探査の結果では、関ヶ原市街地の位置する低地部に東海層群基底面と推定される反射面に変位が認められた。変位が認められた箇所に断層が推定でき、伏在する断層の存在が明らかになった。山地前縁に推定される断層は、垂直変位量が最も大きい。その垂直変位量は、東海層群の基底と考えられる反射面で９０〜１５０ｍである。

今回の調査結果からは、関ヶ原断層は「新編日本の活断層」や「柳ヶ瀬−養老断層系ストリップマップ」に示されている、１条の断層ではなく、部分的に２・３条の雁行状し連続していることが明らかになった。また、反射法探査により第三紀鮮新世〜第四紀更新世の東海層群基底面と考えられる反射面に変位が認められ、この位置に断層が推定された。しかし、この推定伏在断層の平面的な連続性や他の推定断層との関係は不明である。

伊吹町弥高から関ヶ原町秋葉では、断層変位地形が連続する。この部分を関ヶ原断層と考えれば断層の長さは８ｋｍとなる。

この東側では、反射法Ｒ−３測線により東海層群基底面と考えられる反射面にずれが認められ、北傾斜の逆断層が推定された。これも関ヶ原断層と考えれば断層の長さは最大９ｋｍとなる。

また、西側では、醍醐断層によると考えられる三角末端面が連続し、断層の存在が推定されるが、関ヶ原断層との境界部では扇状地面及び山腹斜面に変位地形は認められていない。したがって、関ヶ原断層と醍醐断層は連続しない。

�A　断層の構造

地形地質調査の結果、関ヶ原断層として判読された断層変位により形成されたと考えられる地形の連続線上及び近傍で、第三紀鮮新世〜第四紀更新世の東海層群を変位させている断層露頭３箇所（Ｓｋ３，Ｓｋ５，Ｓｋ１９）と確実に変位させていると考えられる近接露頭１箇所（Ｓｋ７）の合計４箇所の露頭が確認された。

Ｓｋ１９については、断層のセンスから判断し、宮代断層と考えた。

これらのうち、Ｓｋ３とＳｋ７は、断層変位地形の連続として追跡可能な関ヶ原断層（Ｆ−３）であると考えられ、北傾斜の逆断層であり、断層線以北には東海層群が分布せず境界断層となる。

Ｓｋ５も北傾斜の断層であり、これより南側にも東海層群の分布が認められることから、関ヶ原断層の派生断層であると考えられる。

反射法では、山地前縁の低地部に、東海層群の基底と考えられる反射面にずれが認められ、伏在断層が推定された。伏在断層のセンスは東海層群基底と考えられる反射面のずれ、及び東海層群中の反射面のずれにより、北傾斜の逆断層であると推定される。

ボーリング調査では、Ｂ−２（掘削深度３２ｍ）により、深度９ｍ以深から孔底まで、２３ｍ以上の破砕帯を確認しており北傾斜の逆断層が推定される。

以上のことをまとめると、関ヶ原断層の地下構造は北傾斜の逆断層である。地形調査では、谷・尾根の屈曲が何れも左横ずれを示すことから、左横ずれ成分を伴っていることが推定される。