地質調査では、地形面構成層の確認及び関ヶ原断層の分布・形態把握を目的とした概査を行った。
地形面構成層の確認では、関ヶ原断層帯を構成する断層毎に構造に直交したルートで踏査を行い、1/25,000地質平面図を作成した。
関ヶ原断層の分布・形態把握では、関ヶ原断層を中心とした44km2の範囲について面的に踏査を行い、1/10,000地質平面図を作成した。
1/25,000及び1/10,000地質平面図の地質区分(地質層序)を表1−3−2−4に示す。
調査地に分布する地層は,古い時代から概ね、以下のように大別される。
@中・古生層(二畳〜ジュラ系)(美濃帯に属する)
A鮮新世−更新世(?)の東海層群
B岩屑流堆積物
C段丘堆積物(中位段丘堆積物,低位T・U段丘堆積物)
D扇状地堆積物
E沖積層
F沖積錘
G崖錐
(地質各論)
@中・古生層(美濃帯)
本調査地に分布する中・古生層は、砂岩・泥岩・頁岩・チャート・石灰岩などからなるが、今回の調査では中・古生層(美濃帯)として一括して扱った。
中・古生層中のチャート・石灰岩・緑色岩は異地性岩体と考えられている。
A鮮新世−更新世(?)の東海層群
関ヶ原地域の東海層群の時代については、研究事例が全くない。調査地東部牧田に分布する牧田層(東海層群)と層相が類似しており、本地域の湖成〜河成の泥(シルト)、砂、礫を東海層群とよぶこととした。
調査地の東部では垂井町宮代付近に分布する。淡褐色のシルト、細〜粗粒砂、礫混じりシルトの不規則互層からなる。全体に水平もしくは緩やかな北〜東傾斜を示すが、朝倉運動公園付近では東落ちの急傾斜と東海層群を切る小断層が見られた。
関ヶ原町では東町東部の山地の一部、秋葉山付近と松尾−小関より西に東海層群の分布が見られる。秋葉山付近では確認箇所は少ないが、秋葉山の南西で北落ちの急傾斜(47°N)が確認された。この北西150mでは、東海層群と中・古生層(美濃帯)が断層によって接している可能性をうかがわせる露頭が確認された。この地域では、東海層群の層厚は数m〜20m程度の可能性が高く中・古生層(美濃帯)を不整合に覆うものと思われる。
松尾山ではシルトと角礫混じりシルトの互層となっており、層理面はほぼ水平となっている。玉付近では東海層群の露出がよく、角〜亜円礫を含むシルト優勢の礫・砂・シルトの不規則互層となっている。南部では緩やかな北傾斜、北部ではほぼ水平な層理面が観察される。藤古川沿いでは東海層群と中・古生層(美濃帯)が断層によって接していることが観察されたが、より南部にも東海層群の分布がみられ、この地域では東海層群は中・古生層(美濃帯)をほぼ水平な不整合で覆う。また、岩倉山の南では中・古生層(美濃帯)と東海層群の不整合が露頭で確認されている。
滋賀県内では伊吹町藤川の左岸に東海層群が認められる。この露頭では、東海層群はほぼ水平に堆積しているが、岩倉山の北東では層理面の傾斜が南落ち約40°となっている。伊吹町大清水の東の土取り場(処分場)では、炭化物を多量に含む角礫混じりシルト〜砂層が30mを超す厚さで観察された。上位は中位段丘堆積物により削り込まれている。浅井町小野寺付近にも断片的に分布が認められたが、地層の対比など詳細は不明である。
B岩屑流堆積物
伊吹山南西麓に分布する。石灰岩、チャートなどが角礫状〜ブロック状となっている。中・古生層(美濃帯)の組織・構造は残されるが全体に破砕されている。姉川沿いの地域では、この岩屑流の堆積物が流れ山を形成している。岩屑流の発生年代については研究されたものはなく、不明である。平図的な分布から、中位段丘形成時期よりも古いと考えられる。
C段丘堆積物
段丘堆積物は、更新世中期に堆積したと考えられる中位段丘堆積物と更新世後期に堆積した低位段丘T,U堆積物に区分し、低位段丘V堆積物は分布位置が谷底平野内に限定されることから、完新世の堆積物であると判断し沖積層とした。
中位段丘堆積物は、伊吹町大清水の東の土取り場(処分場)で東海層群を削り込んで分布しているのが観察された。この露頭の中位段丘堆積物は角礫や亜円礫多量に含むシルト〜砂層からなり、最上部にはやや赤色化したローム質シルトが約1mの厚さで覆っている。
低位段丘堆積物は低位段丘Tと低位段丘Uに区分した。堆積物の確認は極一部に限られ、構成層の岩種は地域による差が大きいと考えられる。
低位段丘Tは、藤古川の上流部と関ヶ原町緑が丘と野上付近から垂井町宮代付近に分布する。東部地域では堆積物が確認されないが藤川の上流部では、巨礫を伴う砂礫層が5m以上の層厚をもっていることが確認された。
低位段丘Uは関ヶ原町市街地の位置する平坦部から垂井町にかけての地域に連続している。この地域では関ヶ原町玉地区や相川沿いの地域で層厚5m以下の円礫層が確認されている。滋賀県側では伊吹町弥高地区、伊吹地区や姉川沿いに分布し、浅井町鍛冶屋地区などにも断片的に分布している。
D扇状地堆積物
伊吹山の南麓に広い範囲で分布し、七尾山の南麓〜西麓にも分布する。沖積低地および低位段丘Uとの関係から完新世の堆積物と判断される。伊吹町伊吹では岩屑流を覆う砂礫層が確認され、最上位には50cm〜1mの黒色土壌が見られる。また、浅井町小野寺付近ではシルトや粗粒砂の薄層を挟む亜角〜亜円礫層が見られた。
E沖積層
沖積層は、地域全体の河川や支線の小河川の谷底部に分布する現河床堆積物及び低位段丘V堆積物である。秋葉付近では、秋葉閉塞丘の北側の小河川内には、分布標高が高い沖積層が分布している。河川規模により礫径は異なるが中・古生層(美濃帯)起源の砂岩,泥岩,チャート,石灰岩の亜角〜円礫やシルト・粗粒砂で構成される。
F沖積錘
沖積錘は県境付近から西側の山地と低地の境界部に分布する。沖積を覆って分布する。淘汰の悪い礫及び砂から構成される。
G崖錐
崖錐は地域全体の山地と平地の境界部に分布する。秋葉付近では中・古生層(美濃帯)の中に刻まれた谷内に分布する。また、松尾山の東では推定断層線付近にやや厚い崖錐堆積物が分布している。淘汰の悪い礫混じりシルトで構成される。
(断層露頭)
地形調査では、断層変位地地形の分布が情報として得られ、地質概査により断層露頭及び断層の存在を示唆する情報が得られた場合に断層を記載した。
1/25,000及び1/10,000地質平面図に記載した断層線は、「活断層」(更新世後期の堆積物を変位させている、もしくは更新世後期の地形面上に断層変位地形が存在するもの)及びその伏在部,「第四紀断層」(存在が確実で東海層群を確実に変位させているもの)及びその伏在部,「推定断層」(露頭により確認がなされなかったもの)に3区分し図示した。
また、地形調査では情報が得られなかったが、地質概査により第四紀層を変位させていると考えられる地質情報が得られた場合には、推定可能な範囲で、断層線を図示した。
結果として、関ヶ原断層帯を構成する4断層により形成されたと考えられる断層断層露頭や断層の存在を示唆する(破砕帯や時代の異なる地層の近接)露頭が26箇所確認できた。図1−3−2−2−1、図1−3−2−2−2に断層露頭及び断層の分布を示唆すると考えられる露頭位置を、表1−3−2−5に断層露頭の概要を示す。
図1−3−2−2−1 断層露頭及び断層の存在を示唆する露頭位置図(1/2)
図1−3−2−2−2 断層露頭及び断層の存在を示唆する露頭位置図(2/2)
2) 地質精査
関ヶ原断層における地質精査の成果として1/2,500の地質平面図4地区(6葉)を作成した。作成した1/2,500地質平面図を図1−3−2−3−1〜図1−3−2−3−6に示す。
@秋葉・丸山地区(2葉)
A笹尾山地区(2葉)
B玉地区(1葉)
C県境地区(1葉)
地質区分は、前項の地質概査に準じた。断層を「活断層」(更新世後期の堆積物を変位させている、もしくは更新世後期の地形面上に断層変位地形が存在するもの)及びその伏在部,「第四紀断層」(存在が確実で東海層群を確実に変位させているもの)及びその伏在部,「推定断層」(露頭により確認がなされなかったもの)に3区分し図示した。
結果的に、第四紀更新世後期以降の地層(段丘堆積物や扇状地堆積物等)を変位・変形させている「活断層」は地質精査の範囲内では発見・推定できなかった。
推定断層については1本の破線で示しているが、断層露頭が存在しておらず分布位置の特定ができないため、分布位置に幅(実際の位置とのズレ)を含んでいることをことわっておく。
精査地区の地質概要を下記に示す。
また、地質精査結果より関ヶ原断層の分布位置や活動性評価のための具体的な調査(物理探査,ボーリング調査,トレンチ調査)を決定したので、決定に至る経緯も合わせて示した。
図1−3−2−3−1 秋葉・丸山地区(1/2)地質平面図(1/2,500)
図1−3−2−3−2 秋葉・丸山地区(2/2)地質平面図(1/2,500)
図1−3−2−3−3 笹尾山地区(1/2)地質平面図(1/2,500)
図1−3−2−3−4 笹尾山地区(2/2)地質平面図(1/2,500)
図1−3−2−3−5 玉地区地質平面図(1/2,500)
図1−3−2−3−6 県境地区地質平面図(1/2,500)
@ 秋葉・丸山地区(図1−3−2−3−1及び図1−3−2−3−2参照)
・本地区では、北側の山地及び閉塞丘に中・古生層(美濃帯)の砂岩・泥岩が広く分布し、南側には低位段丘堆積物(低位段丘T堆積物及びU堆積物)が広く分布する。東海層群は、秋葉神社の位置する閉塞丘の西端及び東端に露頭する。既存ボーリングの記載から、低位段丘U堆積物の下位にも東海層群が伏在することが推定できる。
・秋葉神社の位置する閉塞丘(以下「秋葉閉塞丘」と呼ぶ),北野神社の位置する閉塞丘(以下「北野閉塞丘」),丸山のろし場の位置する閉塞丘(以下「丸山閉塞丘」)の3箇所が断層変位地形と考えられる。
・北野閉塞丘の北側,丸山閉塞丘の東の大栗毛川河床付近の3箇所,の合計4箇所で断層露頭・破砕帯が確認された。また、大栗毛川河床付近の東側延長部では中・古生層(美濃帯)と東海層群の近接露頭を確認し、秋葉閉塞丘南西端の東海層群では北傾斜(N45W,47N)を確認している。
・以上の事実から、秋葉閉塞丘の北側と北野閉塞丘の北側もしくは南側を結ぶ断層(以下「F−1」と呼ぶ)が推定できる。F−1は、北野閉塞丘の北側に伸びるF−1−1と北野閉塞丘の南側に伸びるF−1−2の2条に分岐しているものと推定できる。F−1断層北側の山地斜面には鞍部の連続や破砕帯等は認められない。
秋葉閉塞丘南側と丸山閉塞丘南側にも中・古生層(美濃帯)と東海層群の地質境界となる断層が存在する可能性があり、この位置が中・古生層(美濃帯)露出の南限であることから両者を結んだ断層(以下「F−2」と呼ぶ)を推定する。
このほかにも、秋葉閉塞丘の北側と丸山閉塞丘の南側を結んだ断層線,秋葉閉塞丘の南側と丸山閉塞丘の北側を結んだ断層線,が存在する可能性がある(根拠に乏しいので図示はしない)。
・推定されたF−1・F−2断層線を覆い低位段丘T堆積物及び沖積層が分布するが、段丘面上には低断層崖等の断層変位地形は認められない。
・具体的な調査としては優先順位の高い順に下記の調査が考えられるが、他地区との比較検討を行った結果、a)b)及びc)を実施することとした。
優先順位T
a) F−1断層線の通過が確実な秋葉閉塞丘北側の沖積層分布域でのトレンチ調査
b) F−1・F−2断層の存在・分布を把握する物理探査(浅層反射法,高密度電気探査)とボーリング調査によるF−2断層の確認,その結果による活動性評価手法の検討
優先順位U
c) 低地部の伏在断層の有無確認のための物理探査(浅層反射法)及び反 射面対比のためのボーリング調査
d) a)の結果、断層イベントが出現しなかった場合の他地点でのF−1断 層のボーリング調査やトレンチ調査の検討
e) b)の結果によるボーリング調査やトレンチ調査の検討
A 笹尾山地区(図1−3−2−3−3及び図1−3−2−3−4参照)
・本地区では、北側の山地に中・古生層(美濃帯)が広く露出し、南側には低位段丘堆積物が広く分布する。笹尾山トンネルの北西−南東に伸びる尾根の南端及び南西端の山麓部には東海層群が分布する。既存ボーリングの記載から、低位段丘の下位に東海層群の分布が推定できる。
・笹尾山尾根線の屈曲と笹尾山光成陣跡北側の鞍部の2箇所が断層変位地形と考えられる。
・踏査と北小学校の工事記録からは、断層露頭や破砕帯の確認できなかった。笹尾山トンネルの工事記録は入手できなかったが、笹尾山トンネル坑口の2孔の既存ボーリングの記載では、高有機質土が99m,67.5mまで記載されており、地質分布から解釈される地質構造とは異なる地層が、地下深部まで分布している。
・以上の事実から、笹尾山光成陣跡北側に鞍部と中・古生層(美濃帯)/東海層群境界が存在し東西方向の断層(以下「F−3」と呼ぶ)が推定できる。F−3は、中・古生層(美濃帯)/東海層群地質境界断層であると考えられ、トンネル坑口付近を屈曲点とし北西方向に伸びると推定される。F−3上の既存ボーリングで深度67.5mまでの高有機質土の記載は、断層破砕帯をみている可能性がある。
F−3と秋葉・丸山地区のF−2との関係は不明である。
・北小学校北部の既存ボーリングの記載では深度20.01mまで礫・粘土が記載されており東海層群の分布が推定される。北側の山地は中・古生層(美濃帯)であることから、道路法面付近に断層が存在すると推定される。笹尾山尾根線の屈曲延長部にこの断層線は連続する。また、図1−3−2−5−4の東端には、中・古生層(美濃帯)と東海層群の近接露頭があり両者の間に断層が推定される。この断層線は、広域的に判断すると秋葉・丸山地区で推定されたF−1に連続する。
・推定されたF−3・F−1断層線を覆い低位段丘T堆積物が分布する(北小学校西部及びその北東部)が、段丘面上には低断層崖等の変位地形は認められない。
・具体的な調査としては優先順位の高い順に下記の調査が考えられ、他地区との比較検討を行った結果a)を実施することとした。
優先順位T
a) F−1・F−3断層把握のための物理探査(浅層反射法,高密度電気 探査)
優先順位U
b) a)の結果によるボーリング調査やトレンチ調査の検討
c) 低地部の伏在断層の有無確認のための物理探査(浅層反射法)及び反射面対比のためのボーリング調査
B 玉地区(図1−3−2−3−5参照)
・本地区では、北東側の山地に中・古生層(美濃帯)が広く分布し、南側には東海層群が広く露出する。玉集落には低位段丘堆積物,集落北東部には中位段丘堆積物が東海層群を覆って分布する。
・本地区中央部の北東−南西方向の渓流部で露出が良く、渓流の(北側)上流川の地層境界付近で中・古生層(美濃帯)左岸・頁岩の破砕部や中・古生層(美濃帯)中断層粘土を確認した。 また、藤古川との合流部付近で、(南側)中・古生層(美濃帯)/(北側)東海層群の境界断層(以下「F−4」と呼ぶ)を確認した。断層面はほぼ南北走向,60°東傾斜を示し、断層面を段丘堆積物が覆い、段丘堆積物はこの断層により切られていない。
・本地区北東側の北西−南東方向に連続する鞍部が断層変位地形と考えられる。
・以上の事実から、本地区北東側の中・古生層(美濃帯)/東海層群の境界が断層であると推定され、北東−南西方向の断層線が推定できる。この断層線は、広域的に判断すると笹尾山地区で推定されたF−3に連続する。
F−4の連続性は、断層が低位段丘U堆積物に覆われており、低位段丘U堆積物を切っていないため不明である。しかも、F−4はF−1・F−2・F−3と逆のセンス(相対的に南側隆起)の断層である。
・推定されたF−3断層線上に、低位段丘T面と推定される平坦面が分布するが、堆積物の確認ができなかった。この低位段丘面上には、低断層崖等の変位地形は認められない。
・具体的な調査としては優先順位の高い順に下記の調査が考えられるが、他地区との比較検討を行った結果c)を実施することとした。
優先順位T
a) F−3断層線上の段丘堆積物の確認及びトレンチ調査
(段丘堆積物の露頭がなく、現在植林地であり人工改変された平坦地の可能性もある。また、杉の植林地であるため施工が困難)
b) F−4断層線の連続性確認のための物理探査
(極浅層反射法が望ましいが適した測線が存在しない)
優先順位U
c) F−4と同じセンスの断層が関ヶ原市街地にも伏在している可能性が あり、関ヶ原市街地での物理探査(浅層反射法もしくは極浅層反射法)
C 県境地区(図1−3−2−3−6参照)
・本地区では、北東側の山地及び調査地南部の藤古川右岸山地に中・古生層(美濃帯)が広く分布し、両者の間には東海層群が分布する。低位段丘堆積物が東海層群を覆って分布する。
・本地区には、三角末端面や尾根・谷の屈曲が断層変位地形としては存在する。
・本地区東側中央部の地層境界部に杉山ほか(1994)で報告されている逆断層露頭が確認できた。断層面の走向・傾斜はN60W,74Nであり、南側の東海層群の上位に中・古生層(美濃帯)頁岩が衝上している。断層面付近7〜8cmの東海層群は粘土化しており、衝上した中・古生層(美濃帯)は広範囲にわたり原岩組織が認められないほど破砕され全体に粘土化している。
また、藤古川右岸の2箇所及び境界断層露頭の西側の1箇所で中・古生層(美濃帯)中の断層及び破砕帯を確認した。このほかに、ややもまれた中・古生層(美濃帯)露1箇所を確認した。
・確認できた地質境界を形成する断層は広域的にみて玉地区のF−3断層と連続する。断層露頭の西側200mの地点には中・古生層(美濃帯)中の断層露頭,更に120m西側には、ややもまれた中・古生層(美濃帯)露頭が存在する。この分布位置は境界断層の走向方向と調和的であり、地層境界にF−3断層を推定する。
・藤古川右岸の断層面の走向方向は、藤古川支流の両岸に分布する低位段丘面南西側段丘崖方向と調和的であり、段丘崖が断層崖の可能性がある。以下「F−5」と呼ぶ。
本地区西端の藤古川左岸にも中・古生層(美濃帯)が分布し、東海層群との間に境界断層が推定される。この推定断層は玉地区のF−4断層とセンスが同じ(相対的に南側隆起と考えられるため仮にF−4’と呼ぶ。この北西延長上には低位段丘面が存在し、段丘面上には数段の段差が存在する。段差の高さが最大のものは断層の延長方向と整合的である。仮にこれが低断層崖であるとした場合には、相対的に北側隆起断層であり、センスが異なる。この段丘面は、針葉樹の植林地であり、人工的な段差か断層変位地形か判断が難しい。
また、F−3に収斂するか否かは不明である。
・具体的な調査としては優先順位の高い順に下記の調査が考えられるが、他地区との比較検討を行った結果、実施しないこととした。
優先順位T
a) 段丘堆積物下位でのF−3・F−4’の分布確認のための調査(物理探査(高密度電気探査)・ボーリング調査)及びトレンチ調査
(現在植林地であり人工改変の可能性もある。また、施工性が極めて悪い)
b) F−5断層線の連続性確認のための調査及びトレンチ調査の検討
(中・古生層(美濃帯)中の断層のため東海層群や段丘堆積物分布域での連続性把握)
優先順位U
c) b)の結果によるトレンチ調査