3−1−3 既存ボーリング資料の収集・解析

(収集データ)

・国道298号線沿い (建設省北首都国道事務所)

・荒川河川敷(建設省荒川上流工事事務所)

・武蔵野線沿い(日本鉄道建設公団東京支社)

・その他(埼玉県環境部による平成元年度大規模地震被害想定調査で収集されたボーリング資料)

以上のデータは、道路、橋、鉄道等の建設にともなう地盤調査ボーリングで、地質の確認及び標準貫入試験が行われており、地表から30〜40mの深度までのボーリングが主体である。ボーリング地点の標高はTP(東京湾平均海水面)を用い、標高値の不明のものは1/25,000の地形図から読みとった。

これらのデータをもとに、国道298号線沿い(LINE−A)、JR武蔵野線沿い(LINE−B)、富士見市と与野市を結ぶ測線(LINE−C)、荒川沿い(LINE−D)の4測線(図3−1−13−1図3−1−13−2)を設定し、それぞれ地質断面図を作成した。地層区分は表3−1−1表3−1−2表3−1−3を参考にするとともに、以下を前提として凡例のように区分し、層相、N値等から断面図を作成した。入手データにおいては、詳細な坑井地質の記載の無いものもあるが、N値は全坑井で得られているため、層相とN値を主体として地層の連続性を検討した。

・いわゆる沖積層を有楽町層と七号地層に区分した。

・有楽町層は、最下部の礫質土(Yg)、主体をなす粘性土(Yc)、最上部の砂質土(Ys)からなる。粘性土のN値は0〜1と極めて軟質で、砂質土も概ね20以下である。砂質土は全ての地質断面図の0m付近で非常に連続性が良く、層厚5m程度で水平に連続している。

・七号地層は、下位より、礫質土(Ng)、砂質土(Ns)、粘性土(Nc)の層相を示し、有楽町層に比べ硬質で、粘性土のN値は2〜4前後、砂質土及び礫質土のN値は30以上を示している。七号地層の上部は有楽町層基底の砂礫層に侵食されていることが多く、不整合で覆われている。

・断面図を作成した周辺の台地は、武蔵野面に相当するものと考えられ、断面図に示されるローム層(Lm)は立川ローム層及び武蔵野ローム層に相当するものと解釈した。

・立川ローム層及び武蔵野ローム層の直下の砂礫層(Mg)は武蔵野礫層(成増礫層)に相当するものとした。

・武蔵野礫層の下位の堆積物は東京層に相当したものと考え、ここでは更新統と表記した。完新統に比べてN値が大きく硬質である。

それぞれの測線の地質断面図を図3−1−14−1図3−1−14−2図3−1−14−3図3−1−14−4に示し、これらから読み取れる特徴について以下にまとめる。

(LINE−A(国道298号線沿い))

60028〜93001間の埋没谷の東側に埋没段丘と考えられる砂礫層(Tg,Ts)が見られ、これは立川面に相当すると考えられる。この礫層は、谷底に存在する七号地層の基底礫層(Ng)に比べて層中でN値が変動すること、層厚が小さいこと等を特徴としている。断面図中央では、有楽町層の基底が−20〜−25m付近、七号地層の基底が−40m付近に分布する。七号地層の粘性土と基底である砂礫質土はほぼ水平に東西に連続して分布する。

(LINE−B(武蔵野線沿い))

荒川、新河岸川の西方で、武蔵野ローム層、武蔵野礫層、更新統が堆積する。荒川周辺で、有楽町層の基底が−20〜−25m付近、七号地層の基底が−35〜−40m付近に分布し、比較的水平に連続する。七号地層の砂質土、粘性土の層厚は薄く、有楽町層の基底の砂礫層に侵食されていると考えられる。この断面の東端は大宮台地の南端に至るが、西方の武蔵野面に比べ標高が低く、武蔵野礫層も見られない。

(LINE−C(富士見市−与野市))

富士見−川越道路の西方で武蔵野面から立川ローム層及び武蔵野ローム層、武蔵野礫層、更新統が堆積する。新河岸川周辺は埋没段丘(立川面)が分布し、七号地層は見られない。荒川周辺では、有楽町層の基底が−15〜−20m付近、七号地層の基底が−30〜−35m付近に分布している。この付近の有楽町層は砂質土と粘性土が主体で、基底をなす砂礫層も比較的連続している。東端では、いわゆる沖積層の基底は標高を上げ、更新統が分布する。

(LINE−D(荒川沿い))

ほぼ水平に地層が分布し、有楽町層の基底が−20〜−25m付近、七号地層の基底が−40m付近に分布している。この周辺の有楽町層は粘性土主体である。南端は、LINE−Aの西端で見られた埋没谷の西側に相当する。

武蔵野礫層や更新統(東京層相当)は、武蔵野台地の部分(各東西測線の西端部)を除き、大きな侵食を受けており、これらの地層の連続性や傾斜変化を議論するのは困難である。しかし、少なくとも七号地層や有楽町層は比較的水平方向に連続しており、積極的に断層の存在を示す事象は認められない。

なお、図3−1−9に示した貝塚ほか(1977)の地質断面(A−A')とLINE−Bとはほぼ同じ測線上に位置している。貝塚ほかは、JR埼京線と国道17号バイパス間を断層の存在を否定できない区間としている。これは、−5m〜−15m付近の粘土・シルト層中の貝化石や腐植土の状況が#25と#26の坑井間で変化することに着目した結果である。LINE−Bの埼京線のやや西でも、有楽町層中の砂層の下に位置する粘性土には水平変化が見られる。ここでは、N値の違いから西側は有楽町層、東側は更新統に属するものと解釈した。この変化は更新統中の埋没谷による可能性が高い。

この地質断面では、武蔵野台地側の地形面と大宮台地側の地形面の傾斜の違いはよく分からないが、少なくともLINE−A、LINE−Bともに測線西端部では、更新統は東傾斜を示している。