ここでは北の綾瀬川の谷を挟んで標高−20mにおいて約9mの段差を生じているとの報告があり、むしろ南部の大宮地区より断層(撓曲)による変位が明瞭である。
当地区では、地下の地質層序に関する資料に乏しいため、活動度等に関する評価は困難であるが、上総層群基底標高を反射面のパターンが変化する深度800〜1000m(鈴木(1996)では、1000〜500m間を推定している)とすると、約150mの段差を生じていることから、前記の大宮地区と同様に機械的に活動度を算出すると、約5cm(1000年当たり)となる。
活動度としてはC級であるが、大宮地区に比べ、大きな活動度を示している。
以上綾瀬川断層についてとりまとめると、次の通りである。
1.断層の性状
本断層は、少なくとも第四紀層中においては緩やかな撓曲として表現されているものと考えられる。
2.断層の位置
撓曲の中央は、ほぼこれまでに推定されるリニアメントと一致する。しかし、断層崖とした明瞭な変化地形は現れていない。
また、反射法弾性波探査の結果、大宮市膝子では、撓曲崖の西側に尾根状の高まりが見られ、その西側にも西に傾く反射面が認められる。中央の隆起部の連続性に関する資料は得られていない。
3.断層の活動度と活動年代
大宮地区の深度100m以浅の更新統・完新統には断層運動に伴う明瞭な変位は認められない。深度150m以深では下部に向かってわずかに累積する変位がある。年代を確定する資料に乏しいが、大宮地区における綾瀬川断層の最近の活動は20〜30万年前以前と推定される。これを含む活動度は1000年当たり5cm以下と推定され、”C”級の活断層に相当する。
複数の活動時期は本調査では特定できず、再来周期については不明である。