採取した全306試料について帯磁率を測定した(表3−5−23、表3−5−24、表3−5−25、表3−5−26、表3−5−27、表3−5−28、表3−5−29)。測定はBartington社製帯磁率計MS−2を用いた。
A残留磁化の測定
残留磁化の測定は任意に選んだ14試料と、その結果から求められた正帯磁帯と逆帯磁帯の境界付近の35試料、合計49試料で行った。測定には、メトバ社製全自動スピナー磁力計を用いた。
安定磁化成分を抽出するため、測定試料全てに0〜50mTまで5mTおきに段階交流消磁を施し、各消磁レベルにおける磁化ベクトルを求めた。磁化強度は各試料の体積を10ccとして計算した。
B段階交流消磁
一般に、消磁前の試料の磁化(自然残留磁化)は初生的な一次磁化と後生的な二次磁化の合成ベクトルからなっている。
段階交流消磁は、消磁レベルを段階的(今回は5mT毎)に上げ、試料の二次磁化を消磁する。消磁と測定を繰り返すことで一次磁化による安定磁化ベクトルを求める。
安定磁化ベクトルを求めるには、消磁レベルおける消磁経路図を使用する。消磁経路図には、偏角を水平面、伏角をN−S方向に伸びる鉛直面として、それぞれ投影する。消磁経路図は原点を0とし、原点からの距離が磁化強度を表す。測定した磁化は、消磁レベルを上げるにつれて磁化強度が小さくなるため、投影された偏角と伏角の点は消磁経路図上で原点に近づく。試料が安定な磁化ベクトルのみからなる場合、偏角と伏角は変化せず磁化強度のみが小さくなり、消磁経路は原点に向かう直線にプロットされる。
前述のように試料の磁化は、一次磁化と二次磁化の合成ベクトルからなるが、段階交流消磁を行うと、二次磁化は比較的低い消磁レベルで消磁され、安定な一次磁化だけが残る。この場合、消磁経路図はある消磁レベルの点より原点に向かう直線状にプロットされる。この直線的なデータから、最小自乗法により安定磁化ベクトルを求める。
また、各消磁レベルでの偏角と伏角をシュミット・ネットに下半球投影すると、消磁経路図の直線部の磁化は、ほぼ同じ所に集中する。