分析結果表を巻末に、結果図を図3−5−13、図3−5−14、図3−5−15、図3−5−16、図3−5−17、図3−5−18、図3−5−19、図3−5−20、図3−5−21、図3−5−22、図3−5−23に示す。
出現率は、@木本花粉については木本花粉の総数、A草本花粉およびシダ類の胞子については木本および草本の花粉およびシダ類胞子の総数を、それぞれ基数とした百分率である。
処理の結果、花粉の産出しなかった試料は以下の通りである。
「A−1−2,A−1−50,A−2−1,A−2−10,A−4−1,A−4−2,B−1−1,B−1−3,B−5−3」
また、以下に示す試料では、含有花粉化石の絶対量が少なく、百分率は求められなかった。この場合、表中には産出したタクサを「+」の記号で示す。
「b`−1孔:24試料,b`−2孔:7試料,b`−3孔:2試料,b`−4孔:8試料,
ba−1孔:2試料,ba−2孔:2試料,ba−3孔:1試料,ba−4孔:1試料,ba−5孔:2試料」
以上の分析結果と、各孔の層序と花粉組成の特徴をもとにして、上位よりT帯〜]V帯の13局地花粉帯を設定した。
以下にそれぞれの孔について分析結果とともに各花粉帯の特徴を述べる。
@b`−1孔(図3−5−15)
l.A−1−T帯(Nos.A−1−4,5,6:深度14.70〜17.10m)
Cryptomeria,Alnusの高率での出現が特徴づけられる。Picea, Pinus, Tsugaなどの針葉樹タクサも比較的高率で出現する。
k.A−1−U帯(Nos.A−1−7,8:深度24.05〜26.85m)
Cryptomeriaが高率、Pinus, Picea, Ulmus−Zelkovaも比較的高率で出現する。Fagus,Quercusをはじめ、その他の落葉広葉樹タクサもそれぞれ数%弱ながら安定して出現する。
Cyclobalanopsis,Lagerstroemiaもそれぞれ1〜2%含まれる。
j.A−1−W帯(Nos.A−1−12,13,15,20:深度36.70〜55.15m)
Cryptomeriaが最高率、Pinus, Picea, Ulmus−Zelkovaも比較的高率で出現する。Fagus,Quercusも下位の帯に比べて高率となる。上部でAlnusの出現率が急増し,70%前後となる。下部で草本の占有率が高い。
i.A−1−X帯(Nos.A−1−21,22:深度62.50〜64.15m)
Picea, Pinus, Cryptomeriaの高率出現で特徴づけられる。Fagusをはじめとする落葉広葉樹タクサも安定して出現するが,低率である。
h.A−1−Y帯(Nos.A−1−25,26:深度92.85〜95.55m)
Cryptomeriaが最高率で,Picea, Pinus, Fagus, Ulmus−Zelkovaがそれぞれ10%前後を占める。
g.A−1−Z帯(Nos.A−1−27,28:深度100.85〜104.25m)
Fagus,Quercus,Ulmus−Zelkovaなどの落葉広葉樹タクサの高率で特徴づけられる。Cyperaceaeを主とする草本の占有率が高い。
f.A−1−[帯(Nos.A−1−30,31,32,34:深度120.25〜124.95m)
Fagus,Quercus,Cyclobalanopsisが高率で出現し、Cryptomeriaは下部で低率、上部へ次第に高率になる。Liquidambarも2層準で2%前後の出現率を示す。
なお、Liquidambarは春日部90KK孔のFagus−Cyclobalanoposis帯にも高率で産出し(関東平野中央花粉グループ,1994)、横浜の山王台ローム層層準のFagus−Cyclobalanoposis帯(西村,1980)に対比されている。
e.A−1−\帯(Nos.A−1−42,44,45:深度155.45〜162.55m)
Cryptomeriaが最高率で出現し、Ulmus−Zelkova,Fagusも高率である。Cryptomeriaの出現率はは下部で低率、上部へ次第に高率になる。Ulmus−Zelkova,Fagusのそれは逆に上部へ低下する。Tsuga, Piceaなどの針葉樹タクサも下位の帯に比べて高率で出現する。
d.A−1−]帯(Nos.A−1−48,49:深度183.60〜187.15m)
Fagus,Quercus,Ulmus−Zelkova等の落葉広葉樹タクサが高率で出現する。
Pinusも10%以上産出する。Gramineaeを主とする草本の占有率が高い。
c.A−1−]T帯(No.A−1−51:深度244.20〜244.30m)
Fagus,Quercusの高率で特徴づけられる。
b.A−1−]U帯(No.A−1−52:深度260.30〜260.40m)
Quercus, Ulmus−Zelkovaが高率でFagus,Juglansもそれぞれ数%をしめる。Pinus,Piceaをはじめとする針葉樹タクサも低率ながら出現する。
a.A−1−]V帯(No.A−1−53:深度290.80〜290.90m)
Quercus, Ulmus−Zelkova, Fagusの高率で特徴づけられるが、Alnusが最高率である。針葉樹タクサがほとんど出現しない。 Ab`−2孔(図3−5−16)
a.A−2−X帯(No.A−2−11:深度55.70〜55.80m)
Picea, Pinusが高率で、Cryptomeriaは10%弱である。Fagusをはじめとする落葉広葉樹タクサも低率ながら安定して出現する。
b.A−2−W帯(No.A−2−7:深度32.10〜32.20m)
Cryptomeriaが高率で、Picea,Pinus,Tsugaなどの針葉樹タクサは下位の帯に比べて低率となる。Cyperaceaeを主体とする草本の占有率が高い。
c.A−2−U帯(Nos.A−2−3,4:深度15.60〜17.10m)
Cryptomeriaが高率で、Pinus, Piceaも比較的高率である。Fagusなどの落葉広葉樹タクサも安定して出現する。Cyclobalanopsis,Lagerstroemiaもごく低率ながら安定した出現する。
Bb`−3孔(図3−5−17)
a.A−3−X帯(No.A−3−4:深度53.50〜53.60m)
Picea,Pinus,Tsugaが高率で、Cryptomeriaも比較的高率である。落葉樹タクサでは Fagusが19.5%をしめる。
b.A−3−W帯(Nos.A−3−2,3:深度26.80〜34.30m)
Picea,Pinusなどの針葉樹タクサが高率である。Ulmus,Fagus,Quercusはそれぞれ10%前後で、その他の落葉広葉樹タクサも低率ながら安定して出現する。
Cb`−4孔(図3−5−18)
a.A−4−W帯(Nos.A−4−20,21,22:深度62.00〜66.40m)
試料番号A−4−22ではCryptomeria,Ulmus−Zelkovaが高率である。草本の占有率も高い上部ではPicea,Pinus,Fagusが高率となり、Cryptomeria,Tsugaも比較的安定している。
b.A−4−X帯(Nos.A−4−18,19:深度55.70〜59.70m)
Cryptomeria,Picea,Pinusの高率で特徴づけられる。
c.A−4−W帯(Nos.A−4−9,10,11,13,14,16:深度34.40〜50.90m)
Ulmus−Zelkova,Fagus,Quercus,Juglansなど落葉広葉樹タクサはそれぞれ下位の帯に比べて高率である。上部でAlnusの割合が急増し,Cryptomeriaも高率となる。下部で草本の占有率が高い。
d.A−4−U帯(No.A−4−6:深度22.60〜22.70m)
Cryptomeria,Pinusが多く、Picea,Tsuga,Pinusも比較的高率である。
Cyclobalanopsisが低率ながら2.2%の出現率を示す。
Dba−1孔(図3−5−19)
a.B−1−Y帯(No.B−1−7:深度79.70〜79.80m)
Cryptomeria,Picea,Pinusの高率で特徴づけられる。
b.B−1−W帯(No.B−1−4:深度27.80〜27.90m)
Cryptomeriaの高率で特徴づけられる。
c.B−1−U帯(No.B−1−2:深度13.70〜13.80m)
Cryptomeriaが多く,Picea,Pinusも比較的高率である。Tsugaは下位の帯に比べ少ない。Ulmus−Zelkovaをはじめとする落葉広葉樹タクサも低率ながら安定して出現する。Cyclobalanopsis,Lagerstroemiaを産出する。
Eba−2孔(図3−5−20)
a.B−2−W帯(Nos.B−2−2,3:深度28.70〜37.30m)
Cryptomeria,Piceaが高率で、Pinus,Tsuga,Ulmus−Zelkova,Fagus, Quercusも比較的多い。上記以外の落葉広葉樹タクサも、低率ながら安定して出現する。草本の占有率が高い。
Fba−3孔(図3−5−21)
a.B−3−Y帯(No.B−3−2:深度14.10〜14.20m)
Cryptomeria,Ulmus−Zelkovaの高率で特徴づけられるが、Picea,Pinus,Tsugaも比較的高率である。草本の占有率が高い。
b.B−3−W帯(Nos.B−3−3,4:深度29.50〜40.00m)
下部はQuercus,Fagus,Ulmus−Zelkovaを主とする落葉広葉樹タクサが高率である。上部は下部に比べてCryptomeria,Piceaが高率となり、逆に落葉広葉樹タクサの出現率が低下する。
c.B−3−U帯(No.B−3−2:深度14.10〜14.20m)
Cryptomeria,Picea,Pinusが高率で、Abies,Tsugaはそれぞれ数%である。Fagus,Quercus,Ulmus−Zelkovaをはじめとする落葉広葉樹タクサもそれぞれ数%づつ出現する。Cyclobalanopsis,Lagerstroemiaもごく低率で産出する。
Gba−4孔(図3−5−22)
a.B−4−Y帯(No.B−4−6:深度55.10〜55.20m)
Alnusの割合が多いが、Picea,Pinus,Cryptomeriaの高率で特徴づけられる。
b.B−4−W帯(No.B−4−4:深度29.50〜29.60m)
Cryptomeriaが高率で、Picea,Abies,Pinus,Fagusなども比較的多い。
c.B−4−V帯(No.B−4−3:深度19.10〜19.20m)
Picea,Pinusが高率であるが、Fagus,Ulmus−Zelkova,Carpinusもそれぞれ10〜15%の出現率を示す。
d.B−4−U帯(Nos.B−4−1,2:深度10.80〜12.40m)
Cryptomeriaが高率で、Picea,Pinusも比較的高率である。Ulmus−Zelkova,Fagusをはじめとする落葉広葉樹タクサも低率ながら安定して産出する。Cyclobalanopsis, Lagerstroemia 出現する。
Hba−5孔(図3−5−23)
a.B−5−Y帯(No.B−5−5:深度79.60〜79.70m)
Piceaが最高率である。その他,Pinus,Tsuga,Cryptomeriaなど針葉樹タクサで特徴づけられる。
b.B−5−W帯(No.B−5−2:深度29.81〜29.91m)
Cryptomeria,Picea,Pinusが高率である。Ulmus−Zelkova,Fagus,Quercusなども5〜10%産出する。