処理の結果、有孔虫化石(個体)の産出を下表に示す。
表3−5−6に、主要な底生および浮遊性有孔虫種の産出頻度を、以下(VA〜R)の5段階に区分して示す。ただし、1試料の産出個体数が100個体に充たない試料については[ ]で示すように、個体数に応じた4段階の頻度で示す。
VA(very abundant) 40.5%以上
A(abundant) 13.5%以上,40.5%未満[27個体以上]
C(common) 4.5%以上,13.5%未満[9〜26個体]
F(few) 1.5%以上,4.5%未満[3〜8個体]
R(rare) 1.5未満[1〜2個体]
有孔虫殻の保存状態は、「G(good),M(moderate),P(poor)」で示す。
さらに Shannon関数(Shannon, 1949)およびPielouの均等性要素多様度(Pielou, 1966)を用いて、種多様度(H')、均衡度(J')を算出した。産出式は以下の通りである。
ただし、
S:サンプルにおける総種数、
pi:第i番目の種に含まれる個体数の全体における割合
である。
浮遊性有孔虫化石の産出試料を以下に示す。ただし産出頻度は低い。
b`−1孔:7試料,b`−3孔:1試料,b`−4孔:2試料
以下に、底生有孔虫群集が最も多産したb`−1孔における層位的変化区分を示す。
1)b`−1孔における化石層序
@無化石帯a(深度15.25−24.15mの3試料)
有孔虫は産出しない。
A化石帯T(深度26.75−26.85m)
Buccella frigida が優勢で、Ammonia japonica、 Elphidium excavatum forma excavata, Fissurina spp.等を伴う。種多様度は中程度。
B無化石帯b(深度30.05−55.15mの11試料)
有孔虫はほとんど産出しない。
例外的に、深度53.40−53.50mから Cibicides refulgens が1個体産出した。
C化石帯U(深度62.50−66.80m)
Murrayinella takayanagii がとくに卓越する群集で、種多様度が著しく低い。浮遊性有孔虫をわずかに含む。
なお、64.05−64.15mからは有孔虫化石が産出しないが、後述する他孔との対比により、67.03mまでを化石帯Uに含める。
D無化石帯c(深度66.80−96.95mの2試料)
有孔虫は産出しない。
E化石帯V(深度92.85−95.55mの2試料)
Buccella frigidaが卓越し、Ammonia japonica, Pseudononion japonicumおよび Pseudorotalia compressius−cula などからなり、Elphidium advenaを伴う群集。種多様度は中程度。浮遊性有孔虫を比較的多く含む。
F無化石帯d(深度100.85−107.30mの3試料)
有孔虫は産出しない。
G化石帯W(深度120.25−126.45mの5試料)
Pseudorotalia compressiuscula が卓越するほか、Pseudononion japoni−cum, Ammonia japonica, Nonion manpukuziensisが多産し、Buccella tene−rrima, Elphidium advena, Nonionella stella などを随伴する。種多様度は比較的高い。中・上部では浮遊性有孔虫が比較的多く含まれる。
H無化石帯e(深度135.15m以深の23試料)および化石帯X
有孔虫は産出しないが、例外的に、183.60−183.70mの1層準に底生有孔虫の群集が認められた。これは Ammonia beccarii, Haynesina sp.からなり、種多様度は低い。この層準を化石帯Xとする。したがって、無化石帯eは化石帯Xによって、上・下部に二分される。
2)その他の孔との対比
b`−1孔で認められた底生有孔虫群集の特徴をもとに、各化石帯と無化石帯について、各孔間の対比を試みる。
@化石帯T・無化石帯a
化石帯Tと同様の Buccella frigida が卓越する試料は、ba−3孔:14.10〜14.20mである。しかし、この試料では化石の保存状態が悪く、産出量が不十分で、随伴種は不明である。
化石帯Tの上位に位置する無化石帯aは、b`−1孔においてはB層上部に相当する。同様の層準に相当するb`−2孔の4試料,b`−4孔の3試料,ba−1孔の2試料,ba−3孔の1試料,およびba−4孔の2試料においても有孔虫化石は産出せず、無化石帯aに相当すると考えられる。また、b`−4孔ではB層上位のL3層の3試料からも有孔虫化石は産出しない。
A化石帯U・無化石帯b(深度62.50−62.60m)
化石帯Uと同様に Murrayinella takayanagii の多産で特徴づけられる試料がb`−3孔のC層上部(53.50−53.60m)、およびb`−4孔のC層(59.60−59.70mと63.60−63.70m)に認められる。なお、 b`−2孔のC層上部(55.70−55.80m)の試料についても、同種が比較的多く含まれるものの、産出個体数が小さいため、明確な対比には至らなかった。
化石帯T・Uに挟まれる無化石帯bはb`−1孔ではB層中・下部に相当する。同様に、B層中・下部からは、以下に示すいずれの試料からも有孔虫は産出しない。
b`−2孔(7試料)、b`−3孔(3試料)、b`−4孔(12試料)、ba−1孔(3試料)、ba−2孔(2試料)、ba−3孔の2試料)、ba−4孔(3試料)、ba−5孔(3試料)
なお、b`−1孔ではB層下部の1層準より1個体の有孔虫が産出したが、他の孔において、これに近い層準のからも化石は得られなかった。
b`−4孔では、深度62.00〜62.10mの層準からは、化石が得られないものの、59.60〜59.70mと63.60〜63.70mの2層準より化石帯Uを示す同質の群集が得られた。このことから、前節で述べたようにb`−1孔の64.05〜64.15mにおける無化石層準はb`−4孔の62.00〜62.10mと同様に化石帯Uに含まれる、薄い無化石帯と見なす。
B化石帯V・無化石帯c
化石帯Vに特徴的な、Ammonia japonica, Buccella frigida, Pseudononion japonicumを主とする群集は、b`−1孔と同様にb`−2孔(83.90−84.00m)、ba−1孔(79.70−79. 80m)、ba−5孔(79.60−79.70m)より得られた。
b`−1孔において化石帯U・化石帯Vに挟まれる無化石帯cはC層の中部に位置する。この層準より試料の採られている孔井はb`−1孔およびba−1孔〜4孔であるが、いずれの試料からも有孔虫化石は産出しておらず、無化石帯cに相当すると考えられる。
C化石帯W・無化石帯d
化石帯Wはb`−1孔のD層上部に相当する。D層の上部以深まで達した孔井は、 ba−1孔およびba−5孔のみであるが、いずれも該当する層準からは試料を採取していないので、b`−1孔と対比することはできない。
無化石帯dはC層下部に相当する。b`−2孔およびb`−3孔の最下部はC層下部に達している。ここから得られた試料には化石がまったく含まれていないことから、これらは無化石帯dに相当すると考えられる。
D化石帯X・無化石帯e
化石帯Xおよび無化石帯eについては、D層中部およびそれ以深に達した孔がないため、b`−1孔と対比できるものはない。