@台 地
T面は、調査地の南西縁を画して南東流する芝川および調査地の北東縁を画して南東流する元荒川、綾瀬川沿いに帯状に分布する(巻末の写真参照)。分布高度は約27〜10mを示し、調査地北西部で高度が高く、東方あるいは南西方に向かって徐々に高度を減ずる。
U面は、調査地のほぼ中央部を南東流する綾瀬川に沿って分布する(写真7、写真9)。特に、調査地中央部の蓮田市蓮田から調査地南部の浦和市北原にかけて広く分布する。分布高度は8〜17mを示す。
T面およびU面は、上記の主要河川およびその支流によって開析されているが、いずれも平坦面が良く保存されている。
T面とU面との境界部は、鴻巣市天神から伊奈町小針新宿、伊奈町新田から別所、蓮田市野久保から馬込および大宮市深作にかけては遷急点をもって接するが、その外のほとんどの所では不明瞭(漸移)である。
T面は大宮台地の主部を構成する。北西端の鴻巣付近を扇頂とし、南東に拡がり、川口市安行・鳩ヶ谷・川口市東本郷〜浦和市南部にかけて、ほぼ東西に延びる線を境にして、荒川低地と呼ばれる沖積地に接する。分布高度は30〜10mを示し、扇頂にあたる北西部で高く、南下するにつれ、徐々に高度を減じるが、南東端にあたる東川口〜川口市安行〜東本郷にかけては標高15〜17m前後の盛り上がりを見せ、北西に傾斜した台地面を見せている。このため、東の綾瀬川の作る沖積低地ならびに南の荒川低地との間に10m前後の明瞭な崖線が作られている。この南東端部を除けば、大宮台地は西側に高く東〜北西に緩やかに傾斜することが多く、西側の荒川左岸および大宮台地を開析して流下する芝川左岸、綾瀬川左岸で比較的急な高さ10m前後の崖線をもっているが、東側では一般に沖積面との比高差が小さく、特に北部の伊奈町、桶川市東部などでは緩やかに沖積地に沈み込んでゆく所も少なくない。
A沖積地
V面は元荒川、綾瀬川、芝川およびそれらの支流沿いに広がる谷底平野の縁辺部に平坦面として小規模に分布する(写真1、写真9参照)。分布高度は8〜15mを示し、上記の主要河川の上流域で高度が高く、下流に向かって高度を減ずる。台地のT面およびU面とは明瞭な崖(崖高1〜5m)をもって接する。
氾濫原は、その性状から谷底平野に相当するW面、旧河道に相当するX面および自然堤防に相当するY面に細分できる。
W面は元荒川、綾瀬川、芝川、赤掘川およびその支流沿いに分布する。T面およびU面とは明瞭な崖(崖高1〜10m)をもって接し(写真10参照)、特に調査地南東端の川口市安行から大門にかけては、高さ5〜7mの崖が北西−南東方にほぼ直線的に連続している。V面とは1m前後の崖をもって接するが、一部で漸移するところも認められる。
X面は元荒川および綾瀬川沿いに部分的に分布する(写真1、写真7、写真8、写真9参照)。周囲のW面に比して高度が1〜2m程度低い。(旧河道に相当する)
Y面は元荒川、赤堀川および綾瀬川沿いに断続して狭長に分布する。周囲のW面に比して高度が1〜2m程度高い。(自然堤防に相当する)
Bリニアメント
空中写真判読の結果からリニアメントは認められないが、地表踏査の結果から、T面とU面との境界部に位置する遷急点および地形の変換点が認められ、この点がほぼ直線状に配列している区間をリニアメントとして認定することができる。すなわち、伊奈町小針領家から小針新宿に至る約2q区間(写真2、写真3参照)、伊奈町別所付近(写真4参照)の約1q区間および大宮市深作付近の約1q区間(写真5参照)に認められ、北西〜北北西−南東〜南南東の方向を有する。いずれもリニアメントを境にして東側の台地面が西側の台地面に比較してその分布高度が低い。
なお、本調査地域には、地すべり地形および顕著な崩壊地形は認められない。
C地 質
台地には、褐色風化火山灰層の露頭(写真6参照)が点在するにすぎず、台地を構成する地質およびその地質構造並びに上記したリニアメントの成因を解明する上での詳細な地質学的情報を地表踏査により得ることはできなかった。