3−3 上町断層帯中部(上町断層主部・桜川撓曲・住之江撓曲付近)
中部における上町断層主部は、最も古くより、断層の通過が解明されていた地域であり、地形的にも上町断層主部東側に沿って台地が発達している。OD−1やOD−2ボーリングの対比によって、地層の食い違いが確認されるのと同時に(図3−8)、Ikebe et. al(1970)により、近鉄難波駅地下鉄乗り入れ工事の際のボーリング調査と構内観察から上町断層の通過部分が詳細に観察され、断面が示されている(図3−9)。さらに、中之島の堂島川沿いに実施された反射法地震探査(吉川他,1987)(図3−10)や淀川長柄橋付近の反射法地震探査の結果から、基盤部において約500m西落ちの変位が確認されている。さらに南部では、大阪市が活断層調査の一環で天王寺北にて東西に反射法地震探査を実施した。しかし、この結果では上町断層延長上に明瞭な基盤の上下変位が確認されず、北から連続する上町断層の基盤の上下変位は天王寺北付近で消滅することが明らかになった(図3−11、図3−12)。しかし、さらに南側に続く大和川付近に至ると、地質調査所が実施した大和川測線の結果より、再び断層による撓曲構造が現れる(図3−13)。これに対し桜川撓曲では、大阪市がなにわ筋沿いの南北測線にて反射法地震探査を実施した(図3−11、図3−14)。この結果、基盤部で500m程度の変位を持つ南上がりの逆断層がとらえられた。さらに、地質調査所実施の大和川測線(図3−14上記)の西側に見られる撓曲構造は、上町断層帯の一つである住之江撓曲と考えられる。この住之江撓曲については、1998年に地質調査所が群列ボーリングを実施して更なる履歴調査を行ったが、最新活動時期の特定をすることはできなかった(図3−15、図3−16)。
関西地層分布図(1998)では、これらの基盤や大阪層群中の構造に対して、表層の地質構造について土木工事用ボーリングを用いて空間的な分布についての考察を行った。その結果、上町断層主部および桜川撓曲・住之江撓曲の表層付近には地層が連続しない部分が確認され(図3−17)、上町主部では、天王寺付近で一旦、この表層構造も不明瞭になる事がわかった。さらに、桜川撓曲に沿って見られる表層構造は上町断層から分岐してNE−SW方向へ連続するが、なにわ筋の西側よりNW−SE方向に向きを変えることが明らかになった(図3−18)。