両ボーリング調査で確認された、Ma3〜Ma7の海成粘土層の上盤と下盤の標高と比高差を表1−2にまとめる。変位量を述べるにあたっては、地層の上面は浸食・削剥などの影響を受けている可能性が高く、海成粘土層の真の上面標高でない恐れがあるため、下面標高値を用いる。各下面標高の比高は、Ma7層:176.75m、Ma6層:168.80m、Ma5層:189.22m、Ma4層:208.55mである。
Ma4〜Ma6の各粘土層間の比高差は約20m程度である。つまり、久米田池断層はこれらの各地層が堆積する間に累積性を持って活動していたことが示唆される。今回の調査で得られた情報をもとに、久米田池断層の平均上下変位量を算出すると、0.243m/千年である(1.5.2参照)。この変位速度は「新編 日本の活断層」(活断層研究会,1991)における活動度区分で表すと、B級の活断層である。Ma6とMa7の比高差がマイナスになる原因としては、No.1孔においてはMa5層〜Ma6層間の粗粒層がNo.2孔よりも厚く堆積した結果、No.1孔のMa6層の下面標高が高くなったと考えられる。
火山灰層については、八町池T火山灰(Ma5中)の比高188.73mという値が得られている。その他の火山灰については、下盤のアズキ火山灰は、狭山火山灰の約9.5m下位に位置すると仮定すると(大阪層群最下部団体研究グループ,1992)、その比高は212.3mという値が得られる。
八町池T火山灰の降灰年代を70万年前とすると、平均上下変位速度は0.270m/千年という値が得られる。また、アズキ火山灰の降灰年代を約85万年として平均上下変位速度を求めると、0.250m/千年が得られる。各火山灰で求めた値からも、久米田池断層はB級の断層である。
<坂本断層>
坂本断層についても海成粘土層の比高と堆積年代についての相関図を作成し、活動性について考察を試みた(図1−10)。用いたデータは、No.2孔と大阪層群最下部団体研究グループ(1992)である。
先述の通り、この地域における坂本断層の上盤と下盤のMa4〜Ma7層の比高は約50mあるが、Ma4〜Ma7層については活動の累積性は認められない。また、図1−10から平均上下変位速度を求めると0.071m/千年となり、C級の断層である。ただし、本地域は坂本断層の南端部にあたるため、活動性が低かったと考えられており、これは今回得られた計算値とも矛盾しない。