東側丘陵と西側沖積低地の境界に久米田池断層が想定されている(図3−3)。
本調査は、久米田池断層の全体構造−撓曲構造と断層−の把握を目的として、ボーリング調査を実施した。
なお、ボーリングA−2孔付近の地表面傾斜が急となる部分に久米田池断層が想定されている。
ボーリング調査の結果、地質断面図で示される下部には大阪層群相当の海成粘土がその上位に砂礫を主体とする地層が広く分布し、更に、上面には段丘層が不整合に覆う。
ボーリングコア観察から西側A−1・A−2、東側のA−4・A−5は、それぞれ概ね10°程度の傾斜構造でほぼ対比される。各ボーリング試料の観察・分析の結果より、この地域はMa4前後の海成粘土および淡水粘土が分布し、その上に段丘層が覆っているものと考えられる(図3−12)。図に示すように、段丘層の直下に大阪層群海成粘土層のMa4が分布する。Ma4は途中、砂などの粗粒堆積物を挟む。A−5の最下部ではMa3が確認されている。それぞれの地層傾斜は同程度であるが、A−2付近で段丘層や海成粘土層に不連続が生じ、大阪層群V層基底部において約10m程度の落差が生じる。同様に大阪層群海成粘土についても数10mの落差が考えられる。A−2付近は現地踏査で低断層崖と考えられる直線状に配列する段差が連続した場所であり、都市圏活断層図でも断層の通過位置であり、これらのボーリング調査の結果から、A−2付近で断層や撓曲の構造が示唆される。またこの付近を境に、西側では大阪層群の砂礫優勢部の層厚が著しく厚くなり、構造的変化が認められる。
大阪層群の海成粘土がMa3〜4程度ということは、およそ70−80万年前の地層が、現在までになんらかの活動によって数10m程度の落差が生じたことになる。
大阪層群V層基底部の対比より、約10m程度の変位が確認されるが、これを断層運動に一義的に結びつけることは難しい。しかしながら文献等をもちいて検討すると断層の可能性もある。
解釈として、ここでの構造変化があったとすると、再来期間の長いものであるか活動度の低いもの、あるいは最近の活動のないものが想定される。しかしいずれも現時点では地質学的証拠に欠ける。
B)岡山地区(南)
久米田池断層によって地表面上に僅かな東側上がりの変位が存在する可能性のある箇所の東側と西側で10mと短い深度のボーリングを実施した。結果は図3−13の地質断面図に示している。
図では下部に大阪層群、上部に段丘層が分布していることが明らかとなった。推定断層を挟む東西のボーリング孔で認められた大阪層群V層基底部深度および段丘層の層相の連続性から、この区間に段丘層を大きく変位させた活断層が存在するとは考えにくい。活断層の活動が、段丘層堆積以前であったのか、この場所に活断層が存在しないのかについては、今後の調査が必要である。