No.1孔:深度 53.20m
No.1孔:深度 57.00〜57.10m
No.2孔:深度 28.20m
No.5孔:深度 4.20m
No.5孔:深度 39.10m
プレパラート中の花粉化石は、No.2とNo.5(39.1)の2点で同定可能な花粉化石の量が少ない.特にNo.5(39.1)は、木本花粉が200個に満たない。これは花粉膜の腐食したものが多いためである。このことは花粉の堆積時に紫外線や軽い土壌化を受けた可能性を示唆し、陸成層と推定される。
<花粉化石の出現率について>
各分類群の木本花粉が200個以上になるまで計数し、その間に存在した、草本花粉や胞子についても計数している。出現率は木本花粉の総数を基数として、木本、草本花粉の分類群ごとに出現率を示した。なお、No.5(39.1)の試料に関しては木本花粉が200個以上に満たなかったために、統計的な出現率として示すことができない。そこで相対的な「多い」、「少ない」だけを示した。
<各試料の花粉組成>
分析結果のダイヤグラムを図3−8に、花粉化石出現率を図3−9に示す。
No.1(57.0):針葉樹が約90%の高率で、特にツガ属が50%未満の高率を示し、マツ属、コウヤマキ属、モミ属、スギ属の順に高率である。広葉樹ではブナ属が約6%である。
No.1(53.2):マツ属が30%強の高率で、さらに針葉樹トウヒ属が約27%で続く。広葉樹では、ブナ属、コナラ亜属、ニレ属―ケヤキ属を伴う。
No.2(28.2):スギ属が約35%の高率で、落葉広葉樹のハンノキ属が約25%の高率を示す。さらにブナ属、コナラ亜属、をともなう。草本ではキク亜科、ヨモギ属が多い。
No.5(39.1):花粉化石が少ないため、統計的には議論できないが、クマシデ属、ブナ属、アカガシ属、さらに草本ではヨモギ属、イネ科が多い。
<花粉化石群集から推定される年代について>
大阪層群における花粉生層序について、Tai(1973)、田井(1993)に示されている(図3−10)。それによると、大阪層群アズキ火山灰を含むMa3層直下を境界として、下部をメタセコイア帯、上部をブナ帯としている。さらにメタセコイア帯を下位よりA亜帯−D亜帯に、ブナ帯をE亜帯よりH亜帯に分帯している。ブナ亜帯では、メタセコイア花粉化石が出現しない。またブナ属の花粉が安定的に出現するという。
今回の分析結果をもとに推定すると、メタセコイア帯が出現しないことと、ブナ属が安定的に出現することからブナ帯に属する。また、亜帯については、G亜帯、H亜帯では、Podocarpus(マキ属)、Fagus−L(L型ブナ属)が出現する。しかし、今回の結果では、出現していない。さらにE亜帯の特徴として、ブナ属、コナラ属、コウヤマキ属、ツガ属を主要な花粉として含む。F亜帯になるとトウヒ属、ブナ属、ゴヨウマツ類を含み、淡水成層部では、カラマツ属、ミツガシワ属が検出されるという。これを考慮すると、 No.1(57.0)、No.5(4.2)はMa3層からMa4層までのE亜帯に属すると推定されることから、Ma4層直上の淡水成層からMa7層直下の淡水成層までのF亜帯に属すると推定される。No.5(39.1)の試料の層準については、メタセコイア属の花粉が産出しなく、ブナ属が相対的に多いことから、E亜帯の可能性があり、Ma4層直下の淡水成層の可能性がある。