岡山地区(南)でのボーリング調査は、久米田池断層による地表面上の段差を対象にその東側(B−3孔、掘削深度12.00m)と西側(B−2孔、掘削深度10.00m)で各1孔実施した。
以下に各ボーリングコアの地質観察結果を記載する。地層区分は、層相と既往文献および挟在する火山灰層を考慮し、行った。下部から上部にT層、U層、V層およびW層と大別した。
なお、各ボーリングの地層観察結果は、一覧表(表3−6、表3−7、表3−8、表3−9、表3−10、表3−11)に示す。また、巻末に詳細な地質記載を盛り込んだ柱状図とコア写真を載せている。
A)岡山地区(北)
1)A−1ボーリングの地層区分と層相
@W層 (深度0.00m〜5.28m)
W層は、耕作土を含む主としてシルト〜粘土の泥質堆積物からなる。下部の深度4.27m〜4.68mには粗砂あるいは礫混じりシルトを挟む。軟弱である。
AV層 (深度5.28m〜15.56m)
V層は、主として砂礫層からなる地層である。礫径は0.5〜4cmまで変化するが、主として細〜中礫が多い。礫種は和泉層群起源の砂岩が多く、酸性火成岩類は少ない。基質は中砂〜細砂である。
礫分はかなり変化し、下部では礫分が多くなり、上部で少なくなる傾向が認められる。深度9.00m、11.00m、14.00mおよび15.20m付近に数10cmの厚さの泥質物を含む。下部の泥質堆積物中には腐植を含み、不整合の関係でU層と接する。
BU層 (深度15.56m〜56.74m)
U層は、主として礫質堆積物からなる。上部の深度約15.00m〜19.00m付近には泥質堆積物がある。一部に砂を含む。やや締まっており、大阪層群に属する淡水成堆積物と判断した。深度約19.00m〜57.00mまでは礫層が主体である。礫径は3〜4cm以下の細〜中礫で、全体に淘汰はそれほどよくない。礫形は亜角〜亜円礫で、全体に下部より礫質となる。1mを越す泥質堆積物を含み、全体として層相の安定した堆積環境が想定される。深度32.00m、39.00m、48.00m〜53.00mの泥質堆積物中には腐植物を含む。指標的な火山灰を含まず、礫質であることから大阪層群上部との類似が推定される。
CT層 (深度56.74m〜80.00)
T層は、主として海成粘土層からなる。砂や礫を混入する海成粘土層で、単層の層厚は数mを越え、全体に変化の少ない、均質な堆積物である。挟在する砂層は、微砂あるいは細砂で、点在する礫径も小さい。
コア肉眼観察では明瞭に急斜する大阪層群の層理面は認められない。多くは5〜10゜以下で、段丘層の層理面の傾斜と区別できない。
2)A−2ボーリングの地層区分と層相
@W層 (深度0.00m〜2.15m)
W層は、耕作土を含む主として微砂〜シルト〜粘土の細粒〜泥質堆積物からなる。深度1.00m付近の微砂中には、細礫が混じる。下部の粘土中には縞状の腐植を含む。軟弱である。
AV層 (深度2.15m〜13.00m)
V層は、上部、深度約2.00m〜8.00mの比較的厚い砂礫とそれ以深の12.00mまでの砂〜シルトの下部に分けられる。上部の砂礫層では、礫径は主として中礫が多く、礫種は和泉層群起源の砂岩が多く、酸性火成岩類は少ない。基質は中砂が多い。礫分はかなり変化し、下部では礫分が多くなり、上部で少なくなる傾向が認められる。深度3.00m付近に20cm程度のシルトを挟む他、顕著な挟在物はない。砂〜シルトからなる下部の各層は、層厚0.5m程度の層相の安定した堆積物である。深度9.00m〜10.00m、12.00mのシルトは腐植を含む。深度12.00m〜13.00m付近には、亜角礫を含む砂礫があり、不整合の関係でU層と接する。
BU層 (深度13.00m〜31.00m)
U層は、主として礫質堆積物からなる。上部の深度約13.00m〜19.00m付近には中礫が混じる中砂で、礫分は多い。深度19.00m〜26.00mまでは、1m程度内の層厚を示すシルトを挟む礫混じり砂〜砂礫層である。下部になるほど、細粒となる。深度26.00m以深では微砂を含むシルトで示される泥質堆積物である。シルト中には腐植を含む。比較的厚い単位で層相の変化を示すことから、大阪層群の淡水成堆積物と判断した。
このような砂や礫の卓越する層相の特徴から、大阪層群上部と推定している。
3)A−4ボーリングの地層区分と層相
@W層 (深度0.00m〜3.90m)
W層は、耕作土を含む主としてシルト〜粘土の泥質堆積物からなる。深度1.00m〜4.00m付近には、微砂〜細砂や細礫〜中礫が混じる。軟弱である。
AV層 (深度3.90m〜5.78m)
V層は、全体に細砂からなる。下部に細礫〜中礫が混じる。層相として、深度4.00m付近に基底があるとも考えられるが、後述するB−2、B−3ボーリングの段丘層基底深度8.00mと大きく異ならないことも判断材料の一つである。一方、深度約6.00m以深では深度12.00mまで砂礫層が続き、ここに不整合も想定されるが、それを示唆する地層がないため、深度5.78mとした。
BU層 (深度 5.78m〜18.67m)
U層は、主として礫質堆積物からなる。深度6.50m付近から深度12.00mまでは均質な中礫主体の砂礫〜礫層である。また深度13.00m〜16.00mもほぼ同様である。それ砂礫層に挟まれ、礫混じり砂が数mの厚さで分布している。固結度は弱い。比較的厚い単位で層相の変化を示すことから、大阪層群の淡水成堆積物と判断した。このような砂や礫の卓越する層相の特徴から、大阪層群上部と推定している。
CT層(深度 18.67m〜31.00m)
T層は、主として海成粘土層からなる。深度24.00m、27.00m、29.00mの前後に数10cmの厚さの砂や礫が混じる海成粘土層で、粘土単層の層厚は1mを越えないのが特徴である。全体に変化の少ない、均質な堆積物である。挟在する砂層は、微砂あるいは細砂で、点在する礫径も小さい。
このような層相の特徴から大阪層群下部の海成粘土主体の部分と判断した。特徴となる火山灰は確認していない。
コア肉眼観察では明瞭に急斜する大阪層群の層理面は認められない。多くは5〜10゜以下で、段丘層の層理面傾斜と区別できない。
4)A−5ボーリングの地層区分と層相
@W層 (深度0.00m〜2.00m)
W層は、耕作土を含む主として砂礫混じり粘土からなる。下部の深度1.20m〜2.00mには砂礫、砂が混じる。軟弱である。
AV層 (深度2.00m〜2.85m)
V層は、粘土混じり細砂からなる。下部に礫質な部分があり、不整合の関係でU層と接する。
BU層
この箇所で、U層は浸食され、見あたらない。
CT層 (深度2.85m〜42.32m)
T層は、0.5〜2m程度の砂層を挟む主として海成の粘土である。粘土層は数m〜10m以上の厚さで分布し、緑色を示す色調等と層厚から海成と判断した。全体に変化の少ない、均質な堆積物である。挟在する砂層は、微砂〜細砂〜中砂で、点在する礫径も小さい。深度36.00m付近は中礫が混じる砂礫でこの部分のみ粗粒である。
コア肉眼観察では明瞭に急斜する大阪層群の層理面は認められない。多くは5〜10゜以下で、段丘層の層理面傾斜と区別できない。
B) 岡山地区(南)
1)B−2ボーリングの地層区分と層相
@W層 (深度0.00m〜3.20m)
W層は、耕作土を含む主として細砂〜シルトの細粒泥堆積物からなる。下部の深度2.36m〜3.20mには腐植質粘土がある。軟弱である。
AV層 (深度3.20m〜8.00m)
V層は、主としてシルトと砂〜砂礫層との互層で、それぞれの単層の厚さは薄い。砂〜砂礫は未固結で、細〜中礫程度の礫を混え、亜円礫が多い。礫種は和泉層群起源の砂岩が多く、酸性火成岩類は少ない。基質は中砂〜細砂である。下部の深度7.00m〜8.00mには中礫混じりの細砂があり、不整合の関係でU層と接する。
BU層 (深度8.00m〜10.00m)
U層は、均質な砂層からなる。均質であること、層厚が2m以上ありそうなので、大阪層群に属するものと判断した。
コア肉眼観察では明瞭に急斜する大阪層群の層理面は認められない。多くは5〜10゜以下で、段丘層の層理面の傾斜と区別できない。
2)B−3ボーリングの地層区分と層相
@W層 (深度0.00m〜3.59m)
W層は、耕作土を含む主として微砂〜シルト〜粘土の細粒〜泥質堆積物からなる。深度2.00m付近の粘土には、細礫が混じる。軟弱である。
AV層 (深度3.59m〜7.13m)
V層は、下部が礫混じり砂で、中部に粘土質腐植、上部は細礫混じりの砂〜細砂である。不整合の関係でU層と接する。
BU層 (深度7.13m〜12.10m)
U層は、主として上部のシルトと下部の礫混じり中砂からなる。V層の粘土層に比し、いずれもやや固結し、大阪層群に属するものと判断した。
コア肉眼観察では明瞭に急斜する大阪層群の層理面は認められない。多くは5〜10゜以下で、段丘層の層理面の傾斜と区別できない。