種子植物やシダ、コケ植物は一般に多量の花粉あるいは胞子を生産する。これら花粉、胞子は植物体と離れて空中に放出され、広範囲の路面や水中に落下し、時には雨水や河川により湖沼や海域に運搬され堆積する。花粉、胞子の外膜はスポロポレニンと呼ばれる物理、化学的に強靱な物質で構成されているため、化石として保存される。花粉、胞子の形態は個々の植物群により特異的であるため、それぞれの花粉、胞子の特性から母植物群を知ることが出来る。これら植物群の質的、量的構成を知ることにより、過去の植生を復元したり、当時の気候や古環境を推定することが可能になる。
b)分析方法
陸上の“植生”は気候変化と時代変化の両面で変化するので、これが地層内の花粉化石の組成変化に反映する。したがって、地層中の花粉化石の定量的特徴を明らかにすれば、既知の層序に沿った花粉化石の組成の特徴と比較することによって、地層の識別や層序・年代を推定することが出来る。
分析の手順は以下の通りである。
・試料10〜200gを湿潤状態のまま分散剤で泥化。分散処理。
・大型ビーカーで傾斜法により細粒物除去。
・さらに、5ミクロン以下の細粒物を振動マイクロフィルターで除去。
・粗粒物をフルイ(125ミクロン以下)で除去。
・花粉化石の濃縮処理後、フッ化水素酸により脱珪酸塩処理。
・重液により比重分散処理。
・脱水処理
・抽出した花粉化石濃縮液を封入剤でプレパラートを作る。
・顕微鏡で帯分析し、検出される花粉化石の種類と数を計数する。
調査結果は次のように利用する。
・結果をグラフ表示し、各試料(層準)の花粉化石組成を示すとともに、地層内の変遷や地層毎の特徴をもとに「花粉化石帯」を区分・設定する。
・地点間の花粉化石帯の比較・対比を行い、地域的地層区分・対比を行う。
・標準的花粉化石帯をもとに花粉化石帯の比較・対比と層序対比を行い、地層の層序を判定する。