1−1 まえがき

上町断層は、大阪平野において南北に伸びる、上町台地の西縁に存在する。新編「日本の活断層」(東京大学出版会)によると、第四紀(約200万年前〜現在)以降に活動したとみなされる活断層と位置づけられており、確実度T、活動度B、断層の長さは6.5kmと記載されている。

しかし、阪神・淡路大震災以降の通産省工業技術院地質調査所・科学技術庁・建設省国土地理院および各大学の研究者による活断層調査により、上町断層は北部の仏念寺山断層(確実度T、活動度B、長さ11km)から南部の坂本断層(確実度T、活動度C、長さ3.5km)付近に及ぶ約40kmを一連の上町断層系とすることが検討されている(図1−1)。

上町断層系は、大阪の中心部や人口密集地域の直下を通過する見込みではあるが、いまだに断層の正確な通過位置や活動履歴については解明されていないのが実情であるため、それらを解明するべく、平成8年には科学技術庁地震調査研究交付金を受け、上町断層系を対象とした調査を実施した。

その結果、上町断層の最南端であると考えられていた坂本断層よりも更に南側に、久米田池断層(新称)が存在することが明らかになり、上町断層系の長さは更に長くなる可能性が指摘されている。本年度の調査は、平成8年度に得られた結果をもとに、上町断層系久米田池断層の性状を把握するために実施されたものである。

今後の地震被害を念頭に置いた防災対策策定の上において、また、上町断層系の構造解明のためにも、個々の断層の情報を把握する事は重要である。