5−4−2 南部地域
南部地域の坂本断層は比較的リニアメントの明瞭な断層ではあるが、実際にその表層の堆積状態には明瞭な撓曲構造および食違いは発見されなかった。トレンチ調査結果からは、緩やかな傾斜が断層の上盤側より下盤側へと連続する状況が観察された。これは、断層運動による地層の食違い量が少ないせいか、あるいは断層活動による変位が下位の大阪層群堆積層中で吸収され、地表面での撓曲構造が小さかったことが考えられる。しかし、これらを断定する証拠は存在しない。反射法地震探査の結果からも、坂本断層が最近大きく活動した事を裏付ける事実はなく、むしろ、その前面に見られる断層による食違いの方が明瞭である。これは、地形判読結果とあわせて考えると、本探査測線が坂本断層の南端部にあたる場所であるため、断層の末端部の変位量の小さい部分を捉えた可能性もある。反射波探査による結果断面で見られる、坂本断層の前面(海側)の断層は、坂本断層の南西側に同じセンスで延びている。この断層の食違い量は300m近くあり、破砕帯の幅も坂本断層に比べると非常に大きい。この結果は坂本断層南端部では、断層活動がより南西方向にスイッチしている可能性を示すといえる。この断層は国土地理院の都市圏活断層図にも明記されているが、名称はつけられていないため、本報告ではこの断層を「久米田池断層(新称)」と名づける。