1−4−1 ボーリング調査による結果

本調査では、北部調査地域の天竺川においてオールコアで40mを3本、20mを1本行った(図1−11)。

下盤側のNo.2・No.3からは、大阪層群中の海成粘土層が確認された。また、No.2の深度13.65m・29.40m(標高15.56m・−0.19m)ならびにNo.3の8.47m・13.81m(標高21.13m・15.79m)より火山灰層が確認された。火山灰分析の結果、No.2孔下位のものおよびNo.3孔下位の火山灰が、層相および火山ガラスの屈折率・鉱物組成がほぼ一致する事により対比され、それらは八町池TないしU火山灰に相当すると推定される。八丁池T・U火山灰層はMa5層中に挟在され、調査地域周辺に広く分布する。従ってボーリングNo.2孔およびNo.3孔中で、この火山灰層を挟在する粘土層はMa5層に対比されると推定される。また、各ボーリング孔における地層の観察及び火山灰の挟在深度から、この付近の大阪層群は大きく西に傾斜していることが予想される。

上盤側で掘削されたNo.4孔およびNo.5孔の大阪層群中には、火山灰などの鍵層が挟在されず、層相からも層序を判断する事はできない。従って上盤側と下盤側の粘土層で花粉分析を行なって、その特徴を調べたところ下盤側のNo.2孔、深度13.00−17.00m、No.3孔深度4.00−9.5m・35.95−40.00mの粘土にはメタセコイアが含まれず、上盤側の No.4孔、深度5.35−8.30mの粘土にはメタセコイアが含まれていた。メタセコイアは大阪層群Ma3層以下に含まれるため、No.4孔の大阪層群は大阪層群下部に属すると推定される。更に周辺のこれまでの調査から、この上盤側の地層も大きく西に傾斜していることが観察されている。

以上の結果より、No.3孔とNo.4孔の間には地層の断絶があり、断層あるいは撓曲頂部が存在する可能性が高い。これらの結果は地上で観察される大阪層群の分布とも整合的である。以上の結果から推定される地質断面を図1−12に示した。

1万年以降の断層活動については、沖積層について細かい観察を行ったが、地層の連続性が悪くボーリングの対比は行えなかった。また、堆積年代を明らかにする事を目的として放射性炭素同位体を用いた年代測定を行なった。 その結果No.4孔の深度1.5m(標高30.12m)で500±80yBP、深度2.63m(標高28.99m)で1000±50yBPの値を得た。しかし、その他のコアからは試料が採取できなかったため、層相からは断層の活動を推定することはできない。上盤相当地域と下盤相当地域での層厚の変化も認められず、堆積後の変位を見積もる際の鍵層となる火山灰なども挟在されていないため、 この結果から1万年以降の断層の活動について推定を行なう事は困難である。