本バイブロサイス地震波探査の東西測線(図1−15、(D))からは,この付近における上町断層は非常に不明瞭である.しかしながら,全体的に見ると,断層通過位置付近を中心にゆるやかな背斜構造が見られ,断層が存在していることを示唆している.図1−14の重力測定による基盤深度図から,本調査の東西測線は上町台地が東西に区切れた部分であること,さらに,北に行くにつれて上町台地の基盤深度が浅くなることが分かる.また南部では,南に行くにしたがって基盤深度が浅くなり,大和川で断層が確認されている.これより,上町台地および上町断層は,北ほど変位が大きく南に傾動したブロックである.また,南部は南に変位が大きく北に傾動したブロックであることが推定される.さらに,西大阪は基盤がもっとも深く(1400m〜1500m),傾動の見られない水平なブロックであることが分かる.
もう一方の南西方向にのびる断層はかつての地質図にその存在を示唆されていた「汐見橋撓曲」に相当すると考えられる.この断層については今回のバイブロサイス地震探査の南北測線(図1−15、(B))において,既存のデータの中で最も西側で明瞭に観察されたものである.東西測線および南北測線を比較すると,東西測線よりも南北測線の方が明瞭な堆積層の「たわみ」が観察され,天満橋付近から南の上町断層の活動変位量は本撓曲の方が大きく,断層活動は,本撓曲の方に移行している可能性も示唆される.この撓曲が,大阪湾へと西進すると仮定した場合,今回の北津守ボーリングとOD−1ボーリングとの間に大きな食い違いが生じると考えられるが,実際には食い違いが確認されていないことから,西へは連続しないと考えられる.図1−17に示したMa12上面標高分布図をみると,汐見橋撓曲に沿ってMa12の標高が急激に変化していることがわかる.この部分は本バイブロサイス地震波探査の東西測線の西側に,南北に続いており,ここに何らかの構造が存在する可能性がある.これを考慮すると,汐見橋撓曲は本調査測線以西では南に連続する可能性がある.
以上より,現存するすべてのデータを考慮して現時点で考えられる上町断層の詳細通過位置を図1−18に示す.