(1)本調査結果と既存データによる大阪平野の堆積構造

大阪平野地下部の堆積層の層序区分については,これまでに行われた深層学術ボーリング結果が重要な情報となっている.これらの主な学術ボーリングの掘削地点と今回のボーリング調査位置を図1−9に示す.図1−10に西大阪地域の主要なボーリングと北津守ボーリングの柱状図を示す.ここでは,海成粘土層に着目して対比をおこなう.粘土層の層厚は堆積後の削剥等の影響による変化も考えられるので,対比は粘土層基底部の深度に重点を置いて考察した.西大阪北部の学術ボーリングと北津守ボーリングにおける各海成粘土層はほぼ同深度で確認されていることから,ほとんど水平に大阪層群が堆積しており,これらのボーリング地点の間に大きな地層の食い違いが存在しないと考えられる.これについては,既存の淀川や中之島における弾性波地震探査の解析図を見ても同様の結果を示しており,ほとんど水平で連続した地層の反射面が観察されている.

しかしながら,このような水平に堆積した大阪層群は大阪南部には連続しない.図1−11に示すように,西大阪域のボーリングと大和川南の堺市臨海地域のボーリングとは,明らかに水平に地層が連続しないことがわかる.この結果より,西大阪域と南部の堺市地域の間になんらかの構造が存在することが示唆される.

西大阪〜上町台地にかけてのボーリング対比図を図1−12に示す.図のように,北津守〜中之島へかけて地層はやや西へ傾斜している.西側の上町台地上ではこれらの傾斜した上部の海成粘土層は観察されず,下部の海成粘土層が観察される.この結果は図1−3とほぼ同じ構造を示しており,海成粘土層の分布深度が大きく食い違う中之島ボーリングと大手前ボーリングの間に上町断層が存在すると考えられている.

東大阪地域のボーリング対比図を図1−13に示す.Ma6以下の海成粘土層の深度は,右側へ深くなっていることがわかる.実際の位置図から見ると,この4つのボーリングからは東大阪地域に向かって各海成粘土層の深度が深くなる傾向がある.図1−14に重力測定による基盤深度図を示す.この図より,基盤深度が深くなるのと調和的に海成粘土層の深度が深くなっている傾向がわかる.