(2)花粉分析

1) 原 理

種子植物やシダ、コケ植物は一般に多量の花粉あるいは胞子を生産する。これら花粉、胞子は植物体と離れて空中に放出され、広範囲の路面や水中に落下し、時には雨水や河川により湖沼や海域に運搬され堆積する。花粉、胞子の外膜はスポロポレニンと呼ばれる物理、化学的に強靱な物質で構成されているため、化石として保存される。花粉、胞子の形態は個々の植物群により特異的であるため、それぞれの花粉、胞子の特性から母植物群を知ることが出来る。これら植物群の質的、量的構成を知ることにより、過去の植生を復元したり、当時の気候や古環境を推定することが可能になる。

2) 分析方法

花粉・胞子化石の抽出方法は、以下の手順で行った。

試料を約10〜20g秤量し、塩酸処理により炭酸塩鉱物の除去を行い、遠心分離法で水洗する。フッ化水素酸処理により珪酸質の溶解と試料の泥化を行い、遠心分離法で水洗する。次に重液(ZnBr2比重 2.2)を用いて遠心分離法で鉱物質と有機物を分離させ、有機物を濃集し、水洗する。この有機物残渣について、アセトリシス処理を行い植物遺体中のセルロースを加水分解し、遠心分離法で水洗する。最後にKOH液処理により腐植酸の溶解を行ない、遠心分離法で十分に水洗する。処理後の残渣は、よく攪拌しマイクロピペットで適量をとり、グリセリンで封人し、検鏡した。検鏡は、プレパラートの2/3以上を走査し、その間に出現した全ての種類(Taxa)について

同定・計数することを原則とした。ただし花粉化石の産出が非常に少ない試料に関してはこの限りでない。